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しおりを挟むローザリンデが夜、寝所で待っている。
その伝言を聞いた王太子は呆気に取られた。
顔合わせが寝所なのか?さすが、側妃に立候補した公爵令嬢だ。
自分の務めをしっかりと理解しているということだな。
愛する正妃の体を守るための、性欲処理のためだけに用意された側妃。
たんなる器だ。
それしか用がないんだ。ご希望通り、今日から役立ってもらおう。
準備万端で待ち構えているローザリンデ。
いくら王子を産むことを望まれているにしても顔合わせが寝所なのは、はしたなかったかと今更ながら後悔したが、大事なのはまず妊娠すること。
王太子妃殿下より若い自分に夢中になるに違いないのだから。
そんな思いを抱いたローザリンデは、このあと王太子と対面した。
挨拶もそこそこに、ベッドに寝かされて愛撫を受け、戸惑うローザリンデを気にすることなく潤滑剤を使われて、一方的な行為が続いた。
初めてのローザリンデにも優しくないとわかった。
一人、満足したように去って行こうとする王太子殿下に、ローザリンデは声をかけた。
「殿下、妻となった私にもう少し優しくして下さい。初めてだったのに…」
「初めては痛いものだ。そのうち慣れる。お前はそのために来たのだから。」
王太子殿下はそのまま去って行った。
歓迎されているのかされていないのか……よくわからなかったが、これからもローザリンデを抱く気でいることだけはわかった。
目的は王子を産むこと。
そうなのだが、もっと良好な関係を築けると思っていたローザリンデは、やはり初手を誤ったかと後悔していた。
本来ならば、側妃を打診される令嬢には王太子の求める側妃の条件を内々に提示され、それを了承すれば側妃にするはずだった。
しかし、ローザリンデは立候補したため、その条件を知らないままであった。
側妃を迎える王族側の希望は、だいたい3つに分けられる。
1つ目は、正妃に子ができない、もしくは王子がいない場合に代わりに産む存在
2つ目は、正妃に閨事を拒否されたため、愛妾代わりの存在
3つ目は、正妃が病気、もしくは能力不足でそれを補う存在
今回の場合は、主に愛妾代わりの存在であった。
王子を産むというのは、側妃という言葉から連想された勝手な噂が回っただけ。
王太子は性欲が強く、それを一身に受けてきた王太子妃の公務に支障が出始めたためだ。
夫に愛されていることをわかっている妻が、側妃の提案を受け入れた。
ただの性欲処理として受け入れる令嬢がいれば許可する、と。
金で引き受ける令嬢はいると思ったが、来たのは公爵令嬢。
条件の擦り合わせが行われなかったため、ローザリンデ側は王子を産むつもりで、王族側は性欲処理として、という食い違いが発覚するのは随分経ってからだった。
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