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しおりを挟むローザリンデの部屋に呼び出されたソレーユは憂鬱な気持ちで向かった。
「ソレーユ、あなたまさか側妃になるつもりじゃないでしょうね。」
「いえ、そんな気は全くありませんが。」
「そうよ。たかが伯爵令嬢のあなたがなっていい地位じゃないわ。
それに、王宮侍女もよ。どうせ見込み違いだったって思われるんだからやめなさい。」
「いえ。やめません。ちゃんと試験を受けて採用されたのです。やめる理由はありません。」
「生意気なっ!採用担当者がおかしいのよ。
私の侍女になりなさいって言ってるでしょ?私が断っておいてあげるわ。」
「やめてください。そんなことになれば側妃に選ばれるかもしれません。」
「……確かにそうね。じゃあ側妃に選ばれなかった時にやめればいいわ。」
だから、どうして、あなたの侍女にならなきゃいけないの?
私がこの世で一番離れたいのはあなたなのに。
伯父様も喜んでくれていたのを見たでしょ?有望視されてるって言ってくれたでしょ?
それを蹴ってあなたの侍女?
有り得ない。
採用担当者に、誰から言われようが、手紙が届こうが、私本人以外の口から辞退すると言わない限り受け付けないようにお願いしておかないと。
いつの間にか、採用取り消しってことになっていそうで怖いわ。
「ソレーユが側妃になることだけは絶対に許せないわ。」
「側妃ですか?ソレーユ様が?ローザリンデ様の方が相応しいと思いますが。」
ソレーユと入れ替わりに部屋に入ってきた侍女がそう答える。
「そうよね。あの子よりも私の方が相応しいわ。だけど、婚約者がいるからなれないのよ。」
「ベネディクト様との結婚もあと8か月ですね。
公爵夫人と側妃では、側妃の方が立場は上ですよね?」
「それはもちろんそうよ。しかも、王子様を産むことを望まれるの。
その王子は国王になれなくても、王太子に王子が産まれなければ孫が国王になるかもしれない。
あるいは近隣国の王女と結婚することもあるかもしれない。
将来の国王陛下の子供なんですもの。側妃といっても重要なの。」
「それはすごいですね。
ローザリンデ様がもう少し王太子様と年齢が近ければ王太子妃様にもなれたでしょうね。」
「そうなのよ。10歳の差は大きかったわ。
だけど、王太子妃が王子を1人しか産めなかったから側妃が必要になったのよ。
悔しいわ。できることなら私が側妃になりたかった。
ソレーユが側妃になるかもしれないなんて。伯爵令嬢が私より上の立場になるのよ?
有り得ないわ。」
「でしたら、公爵様にお願いしてみてはいかがでしょうか。
ローザリンデ様がその立場を望んでおられるとお知りになれば、婚約が解消されるかもしれません。
そうなれば一番の側妃候補。というか、候補ではなく側妃決定ですね!」
「婚約を解消する……レジャード公爵家が認めてくれれば可能かもしれないわね。
お父様より、まずベネディクト様に言ってみようかしら。うん。そうね。そうするわ。」
ローザリンデは婚約解消など今まで一度も考えたこともなかった。
侍女のその言葉で、ローザリンデの今後の人生は大きく変わることになった。
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