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しおりを挟む父は母と結婚することになった経緯を話してくれるという。
『いつ婚約したの?』『どうしてお母様だったの?』と何度か聞いたことがあったけれど、いつも父は『私がフルールを愛したからだ』と言うだけだし、母は微笑んで何も語ることはなかった。
「私がバルスモンド公爵家の長男だったことは知ってるね?」
兄とロベルト、そしてローゼマリーは頷いた。
バルスモンド公爵家の長男だった父が、ハークライト侯爵家の跡継ぎで一人娘の母と結婚したことが不思議だった。跡継ぎ同士で婚約するほど、父は母に惚れ込んでいたということだとローゼマリーは思っている。
結局、バルスモンド公爵家は父の弟が継いでいるので許されたのだろう、と。
「私にはね、12歳の時に婚約者ができた。フルールではない。違う侯爵家のリンジーベルという令嬢だ。」
知らなかった。つまり、父は母に心変わりをしたということ?
「リンジーベルに会いに行くと、やがて一人の男を紹介された。彼女の従弟で伯爵家の次男スタッドを。
私たちは友人になり、侯爵家を訪れるたびに楽しい時間を過ごしていた。
ヴィクトルとロベルトはわかると思うが、12歳の男にとって女の子の話を聞くよりも男と話す方が話は合うし楽しかったんだ。」
兄とロベルトは苦笑していた。
確かに、ローゼマリーとロベルトが婚約者としての交流を始めた頃、兄もお茶会にやってきて話題を振ってくれたりしたことでロベルトと早く仲良くなることができたと思う。
「私は両親に、友人になったスタッドの話もよくしていた。両親も気の合う友人ができたことを喜んでくれた。だがスタッドは伯爵家の次男で将来がまだ決まっていなかった。
そこで両親は気を回してね、ハークライト侯爵家にスタッドはどうだと名を教えた。つまり、フルールの婚約者にスタッドを紹介したんだ。」
その縁で父と母にも交流ができるのね。
「フルールの両親は、バルスモンド公爵家の紹介ならば安心だろうと思ったのだろう。婿入りを希望する貴族家は多くあったが、スタッドをフルールの婚約者に選んだ。
そして、スタッドからフルールを紹介された私とリンジーベルは婚約者同士二組でよく会うようになり、とても仲の良い友人関係になった。」
まるで、昨日までのローゼマリーとロベルト、マチルダとグレッグのようね。
だから、ちょうどいい機会だからって言ったのね。
だけど、この話の結論は見えているわ。
父と母が結婚しているということは、二組の婚約は解消されたということなのだから。
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