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マチルダがグレッグと婚約したままだった理由は何となくわかった。
 

「あるいは、マチルダは実家が落ちぶれてもグレッグという逃げ込み先があれば、金目の物を実家から持ち出して自分だけ嫁ぎ先で楽をしようという魂胆もあるのかもしれないぞ?」 

「共倒れになる前に、グレッグを逃がさないようにと既成事実を作りそうですね。」


父と兄がとんでもない想像をしていて、マチルダはそんなに悪女に見えるのかとローゼマリーは驚いてしまった。
 
 
「話を戻すけど、マチルダがグレッグを巻き込んだのはグレッグにも利があるだろう?」


父にそう言われ、婚約者の交換が実際に行われた際にどうなるかを想像した。


「令嬢の実家の援助目当て?」

「そうだ。うまく行けば裕福な婚約者同士を別れさせて自分たちの相手に代えることができると考えたんだ。だから、お互いに婚約者同士で友人関係になろうと企んだのだろう。婚約者の目の前で誘惑するようなことはあるはずがないと油断するしな。」

「親しくなっていれば、新たな婚約者に選ばれるのに有利になるから?でも、お父様だったらグレッグで納得する?」

「しないな。」
 

即答だった。
それはそうでしょう。落ちぶれかけている伯爵家に援助をしてまで娘を嫁がせるよりもいい相手を探し出すか、未婚のままでもいいと言い出しそう。 

 
「だが、お前がどうしてもグレッグがいいと言ったり、二人の関係が噂になって収拾つかなくなれば、有り得ない話ではない。つまり、そこが狙いだっただろう。」


ローゼマリーがグレッグに慰められるほど親しくなっていたり、逃げられなくなってしまえば、父は援助してでもローゼマリーを嫁がせるということ。

昨日、兄と話したこととほぼ同じである。


その時、ロベルトが声をあげた。


「すみません、仮定話が重すぎます。
それって、僕がマチルダに落とされた前提で、ローゼマリーと婚約解消した後の話ですよね。
僕は落とされないし、ローゼマリーと別れる気もありませんから。」
 
「あぁ、すまない。マチルダとグレッグの狙いはまぁ、こんな感じだな。
今のターゲットはお前たちだが、ローゼマリー、お前はもうマチルダを信じないだろう?」

「はい。マチルダよりもグレッグの近くにいたくないので……」

 
マチルダがロベルトを狙わず、他の婚約者たちの関係も壊すようなことをしないと言うのであれば、クラスメイトとして接する気はある。
けれど、グレッグに関してはもう友人として受け入れられない。

マチルダとセットでグレッグがついてくるのであれば、マチルダとも話したくない。

 
「マチルダはグレッグと結婚すればいいのよ。借金があるわけではないのでしょう?」

「ああ。人を呼び戻せば少しは回復するだろうしな。」

「もう手口がバレたから、誰も相手しないさ。」


今はまだ未遂段階。
ニセモノの友情だったけど、楽しかったことは確か。

だから、マチルダ。

『男女の友人関係は成立しない』と主張させてもらうわ。

ロベルトと親しくなる女性の友人なんて、いらないって。
ロベルトが不安に思う男性の友人なんて、いらないって。
 


 
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