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翌日、ハークライト侯爵家にやって来たロベルトを含めて、父はマチルダのことについて話を始めた。
 

「マチルダ嬢とグレッグ君……面倒だから後は呼び捨てにするが、彼らの婚約が結ばれたのは今から四年前のことだ。父親同士が友人らしくてね、その縁なのだが、婚約後、互いの伯爵家の状況は思わしくない。」

「代替わりした頃ですか?」


兄がそう聞いた。つまり、マチルダとグレッグの父親がそれぞれ伯爵になってからのことなのかということだろう。


「そうだ。両伯爵家共に先代から現伯爵になって以降、税収も業績も落ちている。」

「余計なものに手を出したか、馴染みの者を切り捨ててうまくいかなくなったといったとこでしょうか。」

「そうだろうな。その辺は関係ないので深く掘り下げていないが。」


やり方を変えたり、熟知した者を捨てて新たな人材を引き入れたことで、うまくいかなくなったりすることが代替わりの時には起こりやすいという。
むやみに張り切って、自分の思い通りにしようとした結果、騙されたり費用が嵩んだりするのだ。
 

「マチルダはグレッグに嫁いでも先があるのかと父親に婚約解消を言い出したらしい。だが、伯爵は援助してくれる貴族と結婚してくれるのであれば許すと言った。商人や後妻も検討すると。」


商人や後妻。
援助次第で平民に嫁ぐこともあるし、年の離れた貴族の後妻になれと伯爵は言ったのね。


「マチルダは、それならば学園で裕福な男を掴まえてくると言ったらしい。」

「年も近くだし騙しやすいと思ったのでしょうね。」

「そこでグレッグを引き入れて、婚約者の入れ替えを狙う計画を立てたんだ。」
 

そこでローゼマリーは疑問に思った。


「ねぇ、お父様。どうしてマチルダはグレッグと婚約したままにしたの?婚約者がいなければ、婚約者のいる相手を狙わなくても、婚約者がいない令息を狙えたと思うのだけど。」


父に聞いてもわからないかもしれないけれど、不思議に思った。
堂々と婚約者を探した方が、婚約者の交換などという変な醜聞にならなくて済むのに。 

 
「それはおそらく、狙いたい男にはほとんど婚約者がいるからだよ。」


兄がそう答えてくれた。
なるほど。兄にしてもロベルトにしても学園入学前には婚約していた。
 

「あるいは、学園で誰も掴まらなくてもグレッグをキープしておけば、将来の伯爵夫人には違いないからじゃないか?没落寸前というわけじゃないんだから。」
 

ロベルトはそう予想した。 
 

「でも、グレッグでは援助は見込めないからマチルダのお父様は結婚を許してくれないんじゃない?」


商人や後妻も検討していたのなら、結婚できるのかしら。


「婚約解消にできる正当な理由がなければ慰謝料を払わなければならない。双方とも慰謝料なんて払いたくないから次の相手頼みになる。だから、婚約解消は先延ばしになっているんだろうな。」
 

なるほど。婚約解消も理由がなければ簡単にはいかないのね。



 
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