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しおりを挟むローゼマリーへの誕生日プレゼントと一緒に選んでくれたマチルダへのお礼の贈り物が同じもの。
確かにそれは変である。
ロベルトにとって、二人が友人で二人へのお祝いならわかる。
でも、ローゼマリーはロベルトの婚約者である。
婚約者へのお祝いの贈り物と友人へのお礼が同じでは、ローゼマリーが軽んじられているようだ。
「気づいたか?あの場には大勢の貴族がいた。それなのに、マチルダ嬢はわざわざ周りにも聞こえるように、ロベルトと一緒に選んだお揃いだと主張していた。しかも、ロベルトから贈られたということも。」
「……周りが見えていなかったわ。」
ローゼマリーは、マチルダとお揃いが嬉しくて喜んでいたために、周りがどういう目で見ていたかということまで気が回らなかった。
「お前がとても喜んでいたから、ある意味、変な勘繰りを受けることはなかった。」
「変な勘繰り?」
「ロベルトの本命はどっちだ?とか、ローゼマリーと仲が悪いのか?とか。」
そう思われても仕方がなかったということね。
「お前がマチルダ嬢とお揃いにしたくて、あのプレゼントを強請ったと思われたようだ。」
「……そうだったのね。」
父と母はもちろん、ロベルトのご両親もローゼマリーの言動に眉をひそめたかもしれない。
贈ってくれたロベルトに対してよりも、マチルダとお揃いということを喜んだから。
「……あの後、ロベルトがこっそり、もう一つプレゼントを贈ってくれたの。マチルダには内緒にしてくれって言われたわ。」
「そうか。ロベルトは自分で選んだんだな。」
内緒と言われた意味がわからなかった。
マチルダとお揃いのネックレスはマチルダが選んだもの。
もう一つのプレゼントはロベルトが自分で選んで贈ってくれたもの。
ローゼマリーは、ロベルトが自分で選んでくれた方が本当の贈り物なのだと今更気づいた。
「ロベルトに申し訳ないことをしたわ。」
「そうだな。どうしてマチルダ嬢と買いに行くことになったのかも含めて、一度ちゃんと話し合った方がいいだろう。」
「そうね。そうするわ。」
ロベルトは毎年、ちゃんと自分で選んでくれていた。
それなのに今年に限って、マチルダに相談するとも考えにくい。
となると、やはりマチルダがロベルトを誘ったように思える。
そもそも、ロベルトからマチルダに話しかけることってあったかしら?
「お揃いが悪いわけではないよ?でも、お揃いを望むのであれば彼女が自分で贈れば問題なかったんだ。」
そっか。あのネックレスがマチルダからのプレゼントで、『私もお揃いなの』とマチルダが言うのであれば問題にはならない。
だけど、マチルダは自分の分までロベルトに買わせた。
あ……買わせたんだ。ロベルトが買ってあげると自分から言い出すとは思えないもの。
ローゼマリーは兄や両親が何を言いたいのかが、だんだんとわかってきた。
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