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ショコルテ公爵の話は、そのままセラフィーネの結婚のことに移った。

「兄の国王から、セラフィーネと婚約を望む国があると言われた。
 王家は男系なんだ。なかなか王女は生まれない。
 だから王弟である私の娘は本来は王女のような立場なんだ。
 だが、セラフィーネは結婚する気がない。…あの子は神に仕えたいんだ。
 身分がそれを許さない。思わずフィリーナの前で愚痴を言ったんだ。
 すると、この子は自分がセラフィーネの代わりに子供を産む。それを認めてくれる貴族はいないか?
 そう言ったんだ。とんでもないと思ったよ。そんなことはできないと。

 だが、今の自分ではどこでも働けないし、アリシアもいる。
 10年後まで伯爵家があるかはわからないが、取り戻せるとしても10年後になる。
 ここ以外で働けないから役に立ちたい。無理なら出ていく。
 そう言われたら折れるしかなかった。
 
 そして、国王はすぐこの公爵家に目を付けた。公爵夫妻の人柄に目を付けた…かな?
 令息の婚約者か家に婚約解消に繋がる汚点を探したら、令嬢の不貞が見つかった。 
 そして不貞を露見させて、婚約破棄させた。…気づいてたか?

 本当は、結婚前にフィリーナが子を産んでセラフィーネの子にすると説明するはずだった。
 だが、初夜で既成事実を作った後のほうがつけ込めると言うから…
 二人が少し似ていることで騙すような真似をしてしまった。
 すまなかったな。でもフィリーナを受け入れてくれて良かった。」

「結婚の経緯は理解しました。
 しかし、何故10年後の21歳なのですか?18歳で相続できますよね?」

「確かに18歳でフィリーナは相続できる。だが、アリシアが守れないんだ。
 アリシアは今まだ13歳だ。あと2年は現カシュー伯爵の養育下に置かれる。
 アリシアが15歳になれば、フィリーナの歳でも養育下に置けるようになるんだ。」

「6歳年下なのか…」

母が疑問を口にした。

「昨日、伯爵は二人を連れ戻すつもりのようでした。
 フィリーナが相続すると伯爵は困るのでは?」

「アリシアが人質のようになるだろう。
 アリシアを売られたくなければ相続権を放棄させる。フィリーナも売られるかもしれない。
 売られると言っても結婚させるだろうから文句を言えなくなる。相手が非道でも。
 だから、完全に養育下を離れなければならない。
 伯爵には今のところ不審な点がないんだ。だから養育者を降ろすこともできない。」 

「逆に言えば、あと2年以内に二人を連れ戻せば売るか殺すかできる。
 2年過ぎると伯爵の地位を失うことになる。
 だから、二人が生きてると知った伯爵は必死になるのでは?」

「セラフィーネをフィリーナだと疑っているんだよな。
 それをうまく利用できればいいのだが…不敬罪とか?」

ニヤッと笑いながら王弟公爵が言った。

「なるほど。伯爵に『自分の姪が王弟の娘にすり替わっている』と言わせればいいと。
 王弟公爵と次期公爵夫人に対する不敬罪ですね。
 でも『姪を思うあまりに思い込んだ』と言われるのでは?」

「アラモンド公爵夫人はセラフィーネだと言ったんですよね?
 上位者の言うことを信じずに公の場で姪であると主張するなら、心神喪失で入院させる。」

「次の養育者は誰になるのでしょうか?フィリーナではまだ認めてもらえないのですよね?」

「それは私がなる。義理だが伯父だ。権利を主張する。伯爵家の親族には任せられない。」




 
 

 
 
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