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11.
しおりを挟む二人目も女の子。名前は『リディア』になった。
次女のリディアが生後6か月を迎えた頃、フィリーナは19歳になった。
翌月は長女リシェルが2歳になる。
結婚して約3年、フィリーナもセラフィーネも屋敷からほとんど出ていない。
ショコルテ公爵邸に数回行っただけだ。
王家主催の夜会も、妊娠中や出産直後で出席しなかった。
親の公爵夫妻が出席すればいいので俺も参加しなかった。
母が、リシェルの誕生日プレゼントを見に街へ行こうとフィリーナを誘った。
フィリーナは躊躇していたが、行ってみたいと思ったようだ。
セラフィーネとして行くか侍女として行くか、結局どちらでも誤魔化せるように貴族のお忍びの形になったようだ。
買い物は楽しかったようだ。
しかし帰る間際、ある男がフィリーナに声をかけたらしい。
* * *
「おい、お前フィルリナじゃないか?」
思わずビクッと反応してしまったフィリーナだが、無視をして馬車に乗ろうとした。
「おい!こっち向けよ。フィルリナだろ?ようやく見つけたぞ。生きてたんだな。逃げやがって。」
男が向かってくる気配がしたが、フィリーナは振り向かなかった。
様子を伺っていた護衛が好ましい人物ではないと判断し馬車の側に来た。
馬車には公爵家の印はない。お忍びだからだ。
一方でこちらに向かってきた相手は貴族だとわかる。
今の時点では護衛たちは手荒に男を押さえるわけにもいかなかった。
ただ、フィリーナと男の間で男を牽制するだけだ。
公爵夫人がフィリーナの腕を掴み馬車の中に入れ、外に向かって言った。
「あなた、人違いをなさってるわ。ここにいるのはうちの嫁よ?馬車から離れなさい。」
「いや、その髪色は俺の姪だ。返してくれ。おい、アリシアも生きてるんだろ?」
扉の窓から外を見た公爵夫人が気づいた。
「…あなた、カシュー伯爵でしたかしら?」
「あ…アラモンド公爵夫人でしたか。失礼を致しました。ですが、そこにいるのは私の姪でして。」
「ですから人違いと言っているのです。うちの嫁のセラフィーネです。王弟の娘ですよ?」
「そんなバカな。もう一度顔をはっきり見せてください。」
「必要ありません。馬車を出しなさい。」
護衛に伯爵を遠ざけさせ、馬車を出させた。
馬車の中ではフィリーナが顔色を悪くしていたが、公爵夫人はフィリーナの肩を抱いて何も聞かなかった。いや、今のフィリーナに聞いても話せるとは思えなかったからだ。
公爵邸に着き、フィリーナに部屋で休むように伝えた。
* * *
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