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言いたいことをひとまず言ったセラフィーネは部屋に戻って行った。

「フィリーナだからフィー…か。」

「…はい。ずっとセラフィーネ様のお名前で呼ばれるのはちょっと困るので…
 フィーならこれからもクロード様も咄嗟に誤魔化せるかと思いまして。」

「ならフィーと呼ぶ。
 フィーは何故こんなことを?金か?弱みか?何で強要されてるんだ?
 セラフィーネの代わりに子を産むって…純潔を奪った私が言うことじゃないが君の人生は?」

「…詮索は禁止です。
 でも、あえて言うなら私は私の願いごとを叶えるためにここにいます。
 5年で最低一人、できれば二人子供を産みたいです。」

「5年で出ていくような言い方だな。」

「いえ、そういうわけではありません。単に願いごとの目安でしょうか。」

「はぁー。国王も公爵も君が子供を産むと認めてるのなら産んでもらうしかない。
 二人に睨まれてまで愛人をつくる気もないしな。
 病気のとき以外は昨日の夫婦の寝室で寝てくれ。
 君を抱く日も抱かない日もあるだろうが、一緒に寝る。いいか?」

「はい。問題ありません。」

「君は…一応侍女って言われてたな。普段はセラフィーネのもとで仕えるのか?」

「いえ、セラフィーネ様の代わりに次期公爵夫人のお仕事を教わるように言われています。
 最低限、出席が必要な夜会や式典にはセラフィーネ様が行かれますが、内では私に任せると。
 セラフィーネ様はおそらくこの公爵邸でお茶会もされませんし他家に出席もされません。
 公爵ご夫妻にはセラフィーネ様と私のことを本日にはお話になるかと思います。
 初夜が済みましたので…」

「…セラフィーネは何をしてここで過ごすんだ?何故結婚したんだ?」

「ご実家におられた時と同様にお部屋で過ごされるかと。
 結婚は王弟であられる公爵様のご令嬢ですのでしないわけにもいかず…といったとこです。」

「身分のつり合う私の婚約者に納まったってとこだな。他国の王族に嫁がすのもあれじゃ無理だな。」



昼食後、クロードの両親の公爵夫妻に三人の今後の関係を話した。
父は、何かあるのはわかっていたようだった。
そりゃそうだ。
セラフィーネと5年も会えなかったし誓いの言葉も口づけもないような結婚式だった。
フィリーナが産んだ子がセラフィーネの子になる。いや、公爵家の子だ。
ここは王家ではないのから誰が産もうが別に構わないという結論だ。
だが、父が確認した。『フィリーナと王弟殿下に血のつながりは?』
セラフィーネは『ない』と答えた。…つまり異母姉妹ではないということだ。


セラフィーネには実家からの専属侍女がついている。
お世話は彼女たちに任せられるし、食事もほとんど部屋でとるとのことだ。
用がなければ会う必要もない。…妻が居候のようだ。


母はさっそくフィリーナをフィーちゃんと呼び、公爵夫人としての仕事を教え始めた。
社交も茶会もできないが、母の茶会にフィリーナを侍女として参加させて学ばせるようだ。
いつ何があるかわからない。万が一の替え玉のようなものか?

父も母も思いのほか受け入れている。何か知っているのか、勘づいているのか?
…セラフィーネの方かフィリーナの方か。
気にはなるが、ひとまず詮索禁止だ。二人がこの公爵邸に馴染むのを待とう。


 
 
 
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