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しおりを挟む卒業パーティーの途中で帰らされたアミディアの婚約者であったサミールは、屋敷で両親からアミディアとの婚約解消が成立したことを改めて報告され、しかも公爵家の跡継ぎをサミールの弟にすることを告げられた。
「お前がこの3年間、アミディア嬢に対して婚約者らしく接していなかったことはわかっている。
1年前からは何度も向こうから婚約解消を求められて、お前にもどうするか確認したよな?
お前は解消したくないと言った。
だが、それでもお前はあのメレディスという子爵令嬢と懇意にするのをやめなかった。
しかも、婚約解消を嫌がっているのはアミディア嬢だと責められる彼女をかばいもしない。
挙句の果てに、子爵令嬢と関係を持ってしまった。
子爵家からは責任を取れと手紙が来ている。
婚約者のいるお前に擦り寄ってくるような子爵令嬢を公爵夫人にするわけにはいかない。
お前には子爵位と領地をやる。
子爵令嬢を責任とって娶ってやっても相応しい爵位だろう?」
「……メレディスから誘ってきたんです。勝手に服を脱いで僕に触ってきて。
何か飲まされたのか、反応してしまって我慢できなかった。」
「証拠がないだろう?
まず、未婚の令嬢と部屋で2人きりになったお前が悪い。
体が反応しても無理やり部屋から出てしまわなかったお前が悪い。
その症状を医師に判断してもらえばよかったんだ。
そして、お前は令嬢が純潔だったか違ったか確認を怠っただろう?
子爵は娘が純潔だったと言っている。だから責任を取れと言ってきている。
せめて事後に令嬢が純潔ではなかったと証明されていれば責任を取る必要はなかったんだ。」
「別にメレディスとは恋人だったわけじゃないのに、どうしてこうなった?
思い出にって迫ってきた後も、パーティーで最後にダンスを踊ったら終わりだって……」
「大勢の前で、婚約者ではなく自分と離れがたいんだと見せつけたかっただけだろう。
純愛だなんだとお前たちの関係を持ち上げていた愚かな者どもに。
とにかく、アミディア嬢との婚約解消はすぐに知れ渡るだろう。
そうすれば、子爵は娘とお前との結婚を迫ってくる。
お前は侯爵令嬢との婚約解消の責任を取らされて公爵家の跡継ぎではなくなったことにする。
その原因となった子爵令嬢はお前が子爵になろうとも結婚せざるを得ない。
そのうち正式に婚約することになる。それまでは子爵領のことを学んでおけ。」
アミディアと婚約解消して、メレディスと結婚する。
こんなはずではなかった。
卒業したら、アミディアと結婚したら、雑音から解放されると思っていた。
アミディアのきれいな髪色を嫌う、周りの奴らの罵るような声から。
サミールがわかってあげていたらアミディアはそばにいてくれるはずだった。
今日、やっと卒業したのに?
明日からは昔のように一緒に過ごそうと思っていたのに?
アミディアを失い、公爵家の跡継ぎでもなくなった。
メレディスと結婚することになり、子爵になる。
わかっている。自業自得だ。
アミディアのそばを離れたのも、メレディスを隣に置いたのも、メレディスを抱いてしまったのもサミールが弱かったからだ。
だけど、まだアミディアが好きなのに。
後悔しても、時は戻らない。
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