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しおりを挟むまだ生後4か月のホープが跡継ぎで、成人するまではジュリアス様が中継ぎ。
お義父様がお元気でホープの成人まで侯爵でいられたら、ジュリアス様が中継ぎの代理をすることなくホープが侯爵になるという。
「コンラッドの喪に服している間は誘いもないだろうが、外出は控えてほしい。
必要なものは使用人に頼むか、欲しいものを言ってくれたら屋敷に持ってこさせるから。
まだ犯人が捕まっていない以上、気を付けてほしい。
部屋を本棟に移してもいいがどうする?」
「……しばらくは今のままでいたいと思います。
ホープの部屋や乳母のこともありますし、あちらでの生活に慣れてしまいましたので。」
「そうか。ではたまに夕食やお茶の時間を共にしよう。
屋敷内では侍女を、庭園に出る時は護衛を連れて出てくれ。
しかし、護衛と2人きりも避けてくれ。わかるな?」
「……はい。注意いたします。では失礼します。」
プリズムは監禁場所の範囲が広がり会える人物も増えたが、結局は自由がないと感じた。
それは自分のためだとわかっている。
12歳までのほとんどを領地で過ごしたのは王都のような人が多い場所では行方不明になるのは簡単だったから。
王都に来るたびに、人さらいにあいそうだったのだ。
領地の屋敷や街では、プリズムを見慣れている。
怪しい者がいても、誰かが気づく。
そうしてプリズムは守られてきた。
だが、ずっと一緒だった兄が王都で暮らすのに合わせてプリズムもやってきた。
王都の街で、既に何度か攫われそうになったが護衛に助けられていた。
お茶会に出たら、何故か挨拶をしていない貴族家から見合いの話や誘いの話がきて両親が断ることに頭を悩ませていた時に気分転換で訪れた人目の少ない郊外の公園で羽目を外しているところを、コンラッドに見られた。
父は、ケージ侯爵家が格上だったこともあるが、従兄の伯爵令息よりも侯爵令息のコンラッドの方がプリズムを守れるのではないかと思い、婚約を承諾したと言った。
確かに、コンラッドはプリズムを人目に晒さない監禁という方法で守ってくれていたのだとわかっている。
だが、プリズムは過剰防衛な気がしていた。
婚約中でも、横やりを入れられたくないと行動を制限し、結婚後はもっとひどかった。
他人の婚約者や妻に、そこまで興味を示す男性ばかりではないと思うのに。
だけど、王家や格上の公爵家に会わせてしまえばプリズムを奪われるとコンラッドは本気で思っていた。
プリズムは、幼児の頃から可愛さはもちろんのこと、なぜか人を惹きつける魅力に溢れているらしい。
自覚は全くない。
だけど、ジロジロ見られることはしょっちゅうだし攫われかけたことも何度もあり、用心するようになった。
目が合うと、自然に手を伸ばしたくなるとまで言われては怖くなるのも当然で。
でも人を紹介されれば目が合うことも当然で。
そんなプリズムを、この王都に留めても自由はない。
しかし、コンラッドという夫の枷がなくなり未亡人となった今、この侯爵家という檻から出たら帰って来れなくなる可能性があるのではないかと身震いしてしまう。
そうなってしまえば、ホープとは離れ離れになるだろう。それは嫌。
だから、この檻の中にいるしかない。
実家の伯爵領に帰りたかったな………
そうプリズムは思ったが、実際のところは領地を離れて5年が過ぎている。
プリズムを見慣れていた使用人や領民たちの免疫効果は薄れてしまっているのだ。
しかも、12歳だった子供が17歳の大人になって魅力が増している。
結局のところ、実家の伯爵領も最早プリズムにとっては安心できる場所ではなくなっているということに気づいてはいなかった。
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