婚約者は…やはり愚かであった

5.

　
　
男爵夫妻は慰謝料額を了承し、青い顔のまま帰っていった。…キーラを置いて。
次に、放心状態のキーラを騎士二人が両腕を拘束して出て行った。…娼館行きね。
そして…

「ジョシュア、お前は何ができるだろうな。
　お前を目の届かない所へは置けない。また騙されるだろうからな。
　お前は何が好きだ？」

ジョシュアはまだ混乱中のようだ。

「ジョシュ？何がわからないか言って？」

「…僕はアリーちゃんの婚約者じゃなくなった？愛人も違った？キーラと結婚もない？」

「そうよ。全部なくなった。この公爵家の後継でもなくなった。
　あなたはこれから仕事を見つけて働くの。馬は好きよね？お世話もできる？」

「うん。馬も犬も猫もお世話してるよ。ジョンがいろいろ教えてくれた。」

「じゃあ、ジョンと毎日動物のお世話をする仕事をする？使用人のお仕事だけど。」

「うん。いいよ。書類の仕事は嫌い。掃除も侍従に怒られた。動物は好き。」

アリーシャがアモン公爵の様子を伺うと、穏やかに、しかし泣きそうに頷いていた。
ようやくジョシュアを受け入れることができたようだった。
そんな公爵を見て、ロイスが代わりに言った。

「ジョシュア、部屋に戻っていていいよ。仕事の話はまた後でしよう。
　あ、それから種付けはもう誰にもしてはいけないよ？
　内緒も禁止だ。黙って屋敷から出てもいけないからね。」

「わかった。部屋にいるね。」　


ジョシュアが部屋を出ていき、残ったのは５人。アリーシャと両親、公爵とロイスだった。
アモン公爵が重い口を開いた。

「レップル公爵、夫人、そしてアリーシャ嬢。申し訳なかった。
　もっと早く現実を見るべきだった。
　アリーシャ嬢とロイスがいれば何とかなる。そう思いたかった。」

公爵の顔色が悪い。

「兄上、あとは私に任せて部屋で休んでください。公爵、申し訳ありませんが…」

「ああ。謝罪は受け取る。体を休めてくれ。ひどい顔色だ。」

侍従を呼び、アモン公爵が部屋を出た。

「今から言うことは、兄とは事前に話をつけています。　
　私が兄から公爵位を継ぐことになりました。
　そして、アリーシャ嬢を娶りたい。
　お許しくださいますか？」

…これがロイスに頼んだ二番目のお願いである。
まず、ロイスに今付き合っている令嬢が確認をしたところ、いなかった。
では、ジョシュアと婚約破棄した後のアリーシャを婚約者にしてほしいとお願いした。
ロイスは了承した。

「…３か月前、アリーシャからジョシュア君の素行調査を依頼された時に聞いていました。
　あなたにお願いした二つの事、避妊薬と婚約者の変更。
　あとの公爵の説得と公爵位の譲渡といったことはあなたにお任せだったようですね。
　あなたとアリーシャが納得しているのであれば、私に異論はありません。
　ただ、こんな年下の小娘で大丈夫ですか？」

「逆ですよ。18歳のアリーシャ嬢から見れば30歳なんておじさんですからね。
　飽きられないように頑張ります。」

「10回腰を振って出す。それが普通ではないと教えてやってくださいよ。」


…ここに私と母がいるのに、なんて会話をするのだ。この男共は。