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話が纏まり、退席しようという頃に公爵様が聞いてきた。


「さっき、少し気になった言葉があるのだが、シャイニーは妊娠中なのか?
 それとも今後産まれるであろう子供の話だったのか?」

「あ……実は妊娠がわかったばかりなのです。」

「そうか。おめでとう。クレール家の白銀髪の子を楽しみにしているよ。」

「ありがとうございます。」


国王陛下や叔父の子爵にもお祝いを言われ、王城から侯爵邸に戻った。


「シャイニー、疲れただろう?」

「ええ、まあ。ですが、大丈夫です。
 それより、クレール家の子供は白銀髪になるのですか?」


それが当然のように思われていることが不思議だった。


「対外的には、『ほぼ』白銀髪になると思われている。
 だが、実際は白銀髪しか産まれない。
 シャイニーのこの綺麗な金髪を継いだ子供が産まれないのは残念だが。
 それに、ディアーチェが嫁に行って子を産んでも白銀髪の子は産まれない。
 白銀髪は何故か男子のみ継承されていくんだ。」

「そうなのですね。」


クレール家の証として白銀髪を受け継ぐために男子継承なのだろう。
でもいつかは見直される日が来るかもしれない。


「先祖に、白銀髪を持って産まれなかった子がいた。
 誰もが今までになかったことに驚いたが、何事にも例外があるのだと思われた。
 だが、母親の不貞が発覚したんだ。つまり子供はその相手の子だった。
 今更クレール家の子ではないと否定するには遅く、そのまま育てられることになった。
 だから、『ほぼ』となっているが、その子以外にはいない。」


なるほどね。不貞しましたって証拠みたいね。
 

「実は、前妻もそうだった。
 ディアーチェを妊娠中から行動が怪しかった。
 ディアーチェは白銀髪だったから、私の子で間違いなかった。
 だけど、ディアーチェが産まれてから閨を共にしていないにも関わらず前妻は妊娠した。
 それを前妻は、ザイルの子だと言ったんだ。
 酔っ払ったザイルの様子を見に行って襲われたのだと。
 ザイルが酔っ払った日を利用されたんだ。記憶が飛んでいるんだと。
 もちろん、事実はない。だから、ザイルをここから逃がした。
 そして、産まれた子は赤毛だった。前妻は赤茶色だ。
 『ほぼ』白銀髪と言われていることを理由に、ザイルの子で押し切ろうとした。
 しかし『ほぼ』の実情を説明し、前妻が連れてきた赤毛の護衛が不貞を認めたために離婚した。
 子供は前妻の実家に引き取られ、前妻は修道院に入れられたんだ。」


あらー。本当に証拠として採用されるのね。


「だが、万が一、シャイニーのお腹の子が白銀髪でなかったとしても私の子だと信じられる。
 全く君を疑っていない。
 だから、安心して産んでくれ。」


そっか。夫婦として信頼し合えていれば、万が一の例外があったとしても疑うことなんてないものね。
アルフ様が私を愛してくれていて信頼してくれているからこそ、断言してくれている。


「ありがとうございます。でもきっと、白銀髪だわ。」


確信を持って、まだ平らな下腹を撫でる。
そして、この子も魔力が多い子になるのだろう。
だとしても、何も心配する必要はない。
リオル同様、アルフ様が救ってくれるから。

アルフ様に抱きしめられてキスをされる。
すごく幸せを感じた。

ザック、あなたが望んでくれた私の幸せはここにあったわ。
リオルを授けてくれたおかげで、アルフ様と出会うことができた。
ありがとう、ザック。



シャイニーは、白銀髪の男の子を産んだ。その2年後にも白銀髪の男の子を。
 

侯爵家の子供の中で一番魔力の多いリオルは、侯爵家の跡継ぎになるよりも魔法騎士団に入ることを望んだ。
実父と同じように、魔力を活かせる仕事に就きたいと。


複雑な思いを抱いたが、唯一アルフ様の実子ではないことが理由の一つではあるだろう。
でも逆に、侯爵など堅苦しい立場に向かないリオルの性格にはその方がいいのかもしれないと思った。





ねぇ、ザック。
あなたは私がおばあちゃんになって死ぬときに、自分のことを思い出してくれたらって手紙に書いてあったけど、もちろん、嘘つきなあなたも思い出したわよ?
だけど、4人の子供と9人の孫ともちろんアルフ様も思い浮かんでくるから、大変なのよ。

この幸せな人生の始まりのきっかけはあなたと出会えたことだったわ。

ザックに恋をして、アルフ様を愛した。


もうこの世に思い残すことはないわ。あの世であなたたち二人に会えるのを楽しみにしてるから。
 



<終わり>
 


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