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国王陛下は、もう既にシャイニーがノーラの娘であることを前提に話を進めていた。


「ノーラ嬢のことを見つけられず、不便な生活を強いることになってしまったな。」


いやいや、国民のほとんどは平民ですから。私は産まれた時から平民生活です。
そりゃ、両親は貴族から平民になったから不便に感じたかもしれないけどね。


「陛下、実は母は姉の失踪から4年目に居場所を知っていました。
 幸せそうなので、そのまま見守っていたようで……」

「そうなのか?……前公爵に知られたくなかったのだな。
 しかし、シャイニーは次期侯爵夫人になる。
 公爵が姉の子供を養女として公爵の籍に入れるということでいいか?」

「ええ。もちろんです。」

「クレール侯爵夫妻も、公爵令嬢シャイニーを嫁にもらったということでいいか?」

「はい。」


え?侯爵令嬢と子爵令息から産まれた平民でいいんじゃないの?
出自的にはそれが正しいのだけれど。
思わずアルフ様を見て目で訴えた。


「シャイニー、貴族ではわりとあるんだ。
 爵位を継げない令息令嬢の結婚で産まれた血縁の子供を兄弟の養子にすることは。
 例えば、私がリオルを養子に考えていたように。
 養子になれば、子供が貴族と縁を結ぶこともある。
 逆に貴族と結婚するために養子になることもある。
 シャイニー自身は平民でもいいと思っているとはわかっている。
 しかし、リオルや産まれてくる子供にとっては、母親が平民籍よりも貴族籍の方がいい。
 瑕疵を探したがる貴族も多いからな。」


子供たちのためだと言われれば、平民籍にこだわる理由もない。

私とアルフ様の会話を聞いていた子爵が、今ならばといった感じで声をかけた。
この中で爵位を継いでいない私たちが一番話しやすい存在であるから。
 

「失礼ですが、あなたが私の兄の娘という理解で間違いないのでしょうか。」


何も知らされず全く話についていけてない子爵は、公爵令嬢と駆け落ちしたとされた兄との間に娘がいて、それがこのシャイニーなのだろうと自分がここに呼ばれた理由をそう理解した。


「私の父が持っていた物です。」 


シャイニーは、家紋の入った遺品を見せた。

子爵はそれを見て、確かに自分の家の家紋で兄が持っていたものだとわかった。


「確かに兄のものです。兄は……」

「亡くなりました。」

「そうですか。あなたは姪なのですね。」

「はい。そうなります。」


ここで国王陛下がすまんと子爵に言った。


「気が急いてすっ飛ばした。子爵の兄と公爵の姉の娘がシャイニーと思っているが間違いないか?」


証拠の確認が先よね。
遺品と手紙に記されたシャイニーの名前、そして容貌からも間違いないと認められた。
その上で、二人の子であるシャイニーを公爵の養女にするという手続きも進められた。
子爵には申し訳ないが、子爵家よりも公爵家の養女の方がシャイニーに箔がつくからである。
これにより、シャイニーは公爵家から嫁いだことになる。


「これで心置きなく王太子に譲位できるよ。」


国王陛下は、最後にいい仕事したと晴れ晴れした顔で言った。


この国王陛下が真面だったおかげで、前国王陛下の命令に背いて逃げた母は罪人にならずに済んだ。
私も罪人の子供と思われることはないので、そこは感謝したい。 





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