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………疲れた。
 
何に?って、再婚相手探しに。
触れずに波長を探ることには、繊細な魔力の操作が必要になることもあって。

私の再婚相手探しは意外と知れ渡っているらしい。
あんな勘違い令嬢を目の当たりにしてしまっては、ダンスを誘えなくなってしまう。
ダンスを誘う以外にどうやって知り合うんだ?

紹介してもらっても波長が合わなければ、即終了だ。
未婚の令嬢を集めてお茶会でも開いて、握手して回るのか?

同年代か少し上の年代には波長が合う夫人が割といる。
婚約者だった前妻も早くに決まったから、他の令嬢を探す必要もなかった。
単に気分が悪くならないというだけで選んだのは失敗だったが。

しかし、今の未婚の令嬢はどうしてこんなに波長が合わないのか。

ザイルが亡くなり、クレール家の跡取りが必要であることを強く感じてからようやく再婚を考え始めた。
心のどこかで、ザイルが結婚するかもしれないと甘く考えていた。
結婚する気がないと言っていても、波長の合う女性と出会うと気が変わるだろうと。 

もう再婚は難しいかもしれない。
リオルに継いでもらいたい。
……そんな気持ちだから見つからないのかもしれない。

ため息をつきながら、窓の外、庭園を眺めた。


そこにいたのは、リオルを抱いたシャイニー、そしてディアーチェ。

リオルは生後半年ほどになり、初めて会った頃よりも随分と大きくなった。
ディアーチェは毎日のようにリオルに会いに行っているらしい。この散歩も日課だろう。
シャイニー。君を見ると、心が温かくなり苦しくもなる。


ふと自分が考えたことに、一瞬喜び、一瞬にして落ち込んだ。

それは、シャイニーに自分の子供を産んでもらおうというもの。つまり、愛人扱いだ。

下衆な考えだ。要は子供とシャイニーの体が目当てだというようなものだ。

リオルの魔力放出を盾に脅すようなものだ。
それも、私ではなく父を頼ることもできる。

………ダメだと思えば思うほど、惹かれていくものなんだ。体だけでなく心もほしい。





朝食を食べていた時、母が思い出したように言った。


「シャイニーさん、今週のレッスンは先生の都合でお休みになったわ。」

「そうですか。わかりました。」

「母上、レッスンとは何の?」

「あら、アルフには言っていなかったかしら?礼儀作法のレッスンよ。
 お茶会のお手伝いをしてもらおうと思って。
 お客様へのご挨拶や応対は知っていた方が今後のためにもなると思って。」

「シャイニー、忙しいんじゃないか?」

「いえ、大丈夫です。まだリオルは動けませんから、使用人の方々も見てくれますし。」

「シャイニーさんは飲み込みが早くて予定よりも早く終了するらしいわ。」

「そうですか。シャイニー、仕事の方は師長が中断も再開も可能だと言っていた。
 無理しないようにな。」

「ありがとうございます。」
 

お茶会の手伝い、か。
リオルの母だと知らしめ、次男と結婚するはずだった義娘だと好意的に広めるのだろう。

リオルの認知はされている。貴族のザイルの息子であり平民のシャイニーの息子。

シャイニーの息子というだけでは跡継ぎにはなれない。
両親かアルフの養子になる必要がある。
しかし、ザイルの子だと認知されていれば、養子にならなくてもアルフから甥のリオルに継がせるということは可能になった。
アルフとしては、自分の養子にしたいと思っているが。
その方が、シャイニーが注目を浴びることが少なくなるから。

しかし、母も先を読んで、リオルがアルフの甥のまま継ぐことになった時にシャイニーが悪く言われないように鍛えようとしているのかもしれない。
 
 


 
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