15 / 27
15.
しおりを挟む………疲れた。
何に?って、再婚相手探しに。
触れずに波長を探ることには、繊細な魔力の操作が必要になることもあって。
私の再婚相手探しは意外と知れ渡っているらしい。
あんな勘違い令嬢を目の当たりにしてしまっては、ダンスを誘えなくなってしまう。
ダンスを誘う以外にどうやって知り合うんだ?
紹介してもらっても波長が合わなければ、即終了だ。
未婚の令嬢を集めてお茶会でも開いて、握手して回るのか?
同年代か少し上の年代には波長が合う夫人が割といる。
婚約者だった前妻も早くに決まったから、他の令嬢を探す必要もなかった。
単に気分が悪くならないというだけで選んだのは失敗だったが。
しかし、今の未婚の令嬢はどうしてこんなに波長が合わないのか。
ザイルが亡くなり、クレール家の跡取りが必要であることを強く感じてからようやく再婚を考え始めた。
心のどこかで、ザイルが結婚するかもしれないと甘く考えていた。
結婚する気がないと言っていても、波長の合う女性と出会うと気が変わるだろうと。
もう再婚は難しいかもしれない。
リオルに継いでもらいたい。
……そんな気持ちだから見つからないのかもしれない。
ため息をつきながら、窓の外、庭園を眺めた。
そこにいたのは、リオルを抱いたシャイニー、そしてディアーチェ。
リオルは生後半年ほどになり、初めて会った頃よりも随分と大きくなった。
ディアーチェは毎日のようにリオルに会いに行っているらしい。この散歩も日課だろう。
シャイニー。君を見ると、心が温かくなり苦しくもなる。
ふと自分が考えたことに、一瞬喜び、一瞬にして落ち込んだ。
それは、シャイニーに自分の子供を産んでもらおうというもの。つまり、愛人扱いだ。
下衆な考えだ。要は子供とシャイニーの体が目当てだというようなものだ。
リオルの魔力放出を盾に脅すようなものだ。
それも、私ではなく父を頼ることもできる。
………ダメだと思えば思うほど、惹かれていくものなんだ。体だけでなく心もほしい。
朝食を食べていた時、母が思い出したように言った。
「シャイニーさん、今週のレッスンは先生の都合でお休みになったわ。」
「そうですか。わかりました。」
「母上、レッスンとは何の?」
「あら、アルフには言っていなかったかしら?礼儀作法のレッスンよ。
お茶会のお手伝いをしてもらおうと思って。
お客様へのご挨拶や応対は知っていた方が今後のためにもなると思って。」
「シャイニー、忙しいんじゃないか?」
「いえ、大丈夫です。まだリオルは動けませんから、使用人の方々も見てくれますし。」
「シャイニーさんは飲み込みが早くて予定よりも早く終了するらしいわ。」
「そうですか。シャイニー、仕事の方は師長が中断も再開も可能だと言っていた。
無理しないようにな。」
「ありがとうございます。」
お茶会の手伝い、か。
リオルの母だと知らしめ、次男と結婚するはずだった義娘だと好意的に広めるのだろう。
リオルの認知はされている。貴族のザイルの息子であり平民のシャイニーの息子。
シャイニーの息子というだけでは跡継ぎにはなれない。
両親かアルフの養子になる必要がある。
しかし、ザイルの子だと認知されていれば、養子にならなくてもアルフから甥のリオルに継がせるということは可能になった。
アルフとしては、自分の養子にしたいと思っているが。
その方が、シャイニーが注目を浴びることが少なくなるから。
しかし、母も先を読んで、リオルがアルフの甥のまま継ぐことになった時にシャイニーが悪く言われないように鍛えようとしているのかもしれない。
107
お気に入りに追加
1,865
あなたにおすすめの小説
不妊を理由に離縁されて、うっかり妊娠して幸せになる話
七辻ゆゆ
恋愛
「妊娠できない」ではなく「妊娠しづらい」と診断されたのですが、王太子である夫にとってその違いは意味がなかったようです。
離縁されてのんびりしたり、お菓子づくりに協力したりしていたのですが、年下の彼とどうしてこんなことに!?
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!
さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」
「はい、愛しています」
「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「さようなら、どうかお元気で」
愛しているから身を引きます。
*全22話【執筆済み】です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/09/12
※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください!
2021/09/20
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる