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しおりを挟む国王陛下が公爵ユーグンドを夜会に出席させたのは、再婚したルクレツィアを見せるためだった。
オリアナを探し求めた15年が終わった今、ユーグンドに現実を見せて前を向かせたかった。
おそらく、奴に結婚はもう無理だと思った。
まさかオリアナとのキスだけで結婚するために婚約解消をしただなんて。
あれから他の女に見向きもしなかったということは……童貞のまま33歳になったということだ。
性技に長けた女性に閨の指南を受けた後、結婚して子を設けるという手もあったが、王女を嫁がせるのに家格と年頃の合う令息は何人もいるわけではない。
一人を公爵家、もう一人が伯爵家というわけにはいかないのだ。本人が望まない限り。
なので2人の王女のうちのモニカの子を公爵家に入れようと思いついた。
あの子は男だったら王太子にしたいくらいだ。夫の横でニコニコしているだけでは勿体ない。
モニカと婚約解消しなければ、ユーグンドとの間に産まれたはずの子だ。
今でも怒っているモニカへの贖罪に相応しいだろう?
相手は伯爵家以上の令息なら問題ない。次男の婿入りを願う者は多くいる。
元々、昔の王弟が興した公爵家だ。
血筋は王家なのだから、王女に継がせても問題はない。
2年ぶりにあったルクレツィア。
公妾になった頃はまだ若さが全面で、妃たちのような色気はなかった。
3年間、ルクレツィアから抱いてほしいと言われることもなかった。
初めての男である国王に対しても、子種を貰った子供たちの父親。そんな風だった。
別に好意を持ってほしい、愛してほしいと思っていたわけではない。
ルクレツィアに構いすぎると、そうなる恐れもあるので特別扱いもしなかった。
3年だけの関係と決まっていたから。
妃たちは平等に接する必要がある。
それは正妃だけでなく、側妃を娶る時に自分が決めたこと。
閨の回数で妃たちの機嫌も争いも変化する。
特別扱いは、長く共に暮らす女たちの不和の原因だと代々伝わっているから。
しかし、妃たちは何かを危惧したのだろうか。
子作り以外、ルクレツィアと閨を共にする予定を組まなかった。
ルクレツィアが言わないから。
それだけではなかったように思う。
私がルクレツィアの美貌と若さに夢中にならないように図ったのだろう。
無事に3年で去れるように。
それと、10歳以上若いルクレツィアに対する妃たちの軽い嫉妬。
私もそれを受け止めた。
ただ、あっさりと去ろうとするルクレツィアに最後に少し自分を刻み付けたかった。
だから、最後のひと月で、自分の公妾として相応しい女だったのだと教え込んだ。
元婚約者との婚約破棄、王命での結婚にも見向きもされない女。
そのような雑音に惑わされたり、落ち込んだりすることのないように。
まだ若いルクレツィアに群がるであろう男たちを自分で蹴散らし、選別できるように。
公妾に選ばれるようないい女だと自信をつけて帰れるように。
妃たちも、それを許してくれて、最後のひと月はルクレツィアと過ごしたのだった。
再婚を伝える手紙を受け取ったことで、夜会で言葉を交わす手配を整えた。
再婚相手を自分の目で見定めるため。
私の子の父として相応しいかどうか。
ルクレツィアを愛しているかどうか。
ユーグンドに現実を見せること以外にも、そういう目的があった。
再会したルクレツィアは、とても輝いていた。
夫を愛し、夫に愛されて、次期伯爵として自信に満ちていた。
再婚した夫は、浮ついたところのない実直そうな男だった。
この男なら子供たちのいい父親になるだろう、そう思えた。
ルクレツィアの幸せそうな姿は、少しの寂しさと大きな喜びを与えてくれた。
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