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両親とは手紙のやり取りをしていたので、私のこの3年間の状況は伝えてある。

だけど王宮から出ることはできなかったので、フォードとアミーリアに会わせるのは初めて。


「おかえりなさい。まぁ、なんて可愛いの。天使が2人いるわ。」

「おかえり。ああ、本当に天使のようだ。おいで。」


母はアミーリアを、父はフォードを抱っこした。

フォードはもう2歳を過ぎた。アミーリアは10か月。
二人とも両親に抱っこされてもニコニコしている。


「ただいま帰りました。お父様もお母様もお元気そうですね。」

「一時は孫に継がせるまでは、くたばれないとあと20年くらい覚悟してたからな。
 陛下も無茶を言ってくれたよ。
 だが、結果的にこの天使2人を授けてくれたからいいとするか。」
 
「あなたも大人っぽく綺麗になったわね。
 手紙では楽しく過ごしている感じだったけど、嫌な思いをしていないか心配だったの。」

「大丈夫。お妃様たちも侍女たちも親切だったわ。
 嫌がらせも嫌味も何もなかったわ。物語とは違うわね。」


側妃の二人が実家から見放されて助けられたっていうのが大きいでしょうね。
子供は王女様だし、実家の後ろ盾もないし。
それに、国王陛下が誰かを贔屓にしているわけじゃないから。強いて言えば王妃様って感じ。
波風立てないように国王陛下は上手に妃たちを相手していると思った。
そこに加わりたいなんて、一度も思わなかったけど。


フォードとアミーリアの部屋も既に用意してくれていて、専属の侍女も育児経験者にお願いしているらしい。


また新たな生活が始まった。








それから2年後、国王陛下はグリーフ公爵を呼び出した。


「ユーグ、久しぶりだね。相変わらず辛気臭い顔をして。」

「……何の御用でしょうか。」

「キミ、まだあのオリアナを探してるのかい?」

「当たり前です。彼女は辛い思いをしているはずなんだ。無理やり結婚させられたんだから。」

「う~ん。無理やり、というのは間違いではないけど正確でもない。」

「だけど、父親が……」

「うん。それはオリアナが仕出かしたことの慰謝料のためだね。」

「だからその慰謝料が間違いで……」

「ユーグ。いい加減に理解しろ。オリアナは3人の令嬢の婚約者を寝取って婚約破棄に至った。
 オリアナがその原因であると認められたから慰謝料を請求されたんだ。
 男爵家には多額だった。
 それを隣国の商人が肩代わりして、代わりにオリアナを連れて行ったんだ。顔が良かったからね。
 オリアナは多額の借金を娼婦として体を売り、女王様として特殊性癖の男たちの相手をした。
 15年経って、ようやく借金を返し終えたよ。」

「……え?娼婦?女王様って?特殊…?」

「女王様ってのは、痛みを快感に思う性癖の男に鞭振ったり踏んだりして喜ばせる女のこと。
 途中までは人気があったけど、年と共に若い子に客を取られてね。
 結局、15年かかったらしい。それでも会いたいか?」

「あ……え……?」

「オリアナの人生を支える覚悟があるなら、会わせてやる。
 会って、やっぱり無理だというのは期待した彼女は納得しないだろう。
 昔の恋人が呼んだのに捨てられたと言いふらしそうだな。
 ちなみに、オリアナは男がいないと耐えられない女だ。
 例えば、お前が抱かない日は、使用人でも誘うだろう。
 毎日男に抱かれる日常だったからな。
 それに、妊娠もできない体だ。どうする?引き取るか?」

「……それは本当にオリアナなのか?」

「間違いなくね。ちなみにオリアナは13歳で男を知ったらしいよ。
 そんなにあの女の体が忘れられないのか?ずっと探すほどに。」
 
「違う!抱いたことはない。キ、キスしただけだ。それが初めてでオリアナも初めてって……」

「……は?お前、騙されすぎ。
 婚約破棄された3人の男だけでなく、他にも何人もの男と遊んでいた女だ。
 前にも言っただろ?
 一番爵位の高かったお前も狙われたけど、本命ではなかった。
 本気になったのはお前だけだよ。で、どうするんだ?
 引き取るならお前のところに行かせる。但し、問題を起こしたらお前も連帯責任だよ。」


連帯責任と言われ、なぜか躊躇した。
あんなに会いたかったのに、オリアナが問題を起こすであろうと心のどこかで理解したのだ。

結局、ユーグンドはオリアナに会うことはやめた。

長い初恋に終止符を打つことにしたのだった。


 

 
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