10 / 19
10.
しおりを挟む臨月になり、産まれたのは女の子。
名前はアミーリア。また国王陛下が名づけてくれた。
「女の子を狙ったのですか?」
「うん。そうだよ。男3人、女3人の6人の子の父親だ。」
国王陛下はとても嬉しそうにそう言った。
陛下は忙しい中でも、自分の子供たちに接する時間をちゃんと取っているいい父親らしい。
12歳になった一番上の王太子はとても聡明でいい子に育っている。
……よく考えたら次期国王と私の子供たちは兄弟なのよね。
今更ながら畏れ多くなったけど、恥じないように育てていこうと改めて思った。
フォードの時と同じく、アミーリアも自分で世話をした。
夜中の授乳が必要なくなって朝まで寝てくれたら随分と楽になる。
そして気がつけば、3年が経つまで残り1か月となっていた。
毎週のように行われたお妃様たちとのお茶会も、王子様や王女様たちとの交流も、子育てのアレコレを教えてくれて手伝ってくれた侍女たちも、毎日がとても充実していた3年だった。
「ルクレツィア。残りの1か月、陛下があなたと閨を共にしたいって言うから予定に入れたわ。」
「へ?」
「子作りじゃなく抱きたいんですって。
今のままじゃ、あなたは実家に帰っても結婚しなさそうだし、恋人も作らなさそうだからって。」
「そうそう。まだ21歳なのにせっかくの美貌とその体を無駄にしそうだからって言ってたわ。」
「ルクレツィア。いい女でいるためには男に抱かれるのが一番よ。色気が出るわ。」
「仕事と子育てだけでなく、女を忘れないで。陛下はそう言いたいのよ。」
「陛下の公妾だった女が疲れ果てた女だって言われては困るのよ。」
「残りの1か月、陛下にたっぷりと抱かれて、男に抱きたいって思われる女になりなさい。」
「だけど、あなたが男を選ぶ側になるの。誰にでも簡単に抱かせてはダメよ?」
「……わかりました。頑張ります…?」
………そう言えば、陛下との初めての時にも色気たっぷりで家に帰れるとか言ってた気が。
面倒事になりたくないから、アミーリアを出産した後も陛下との閨の予定を入れてもらわなかったのになぁ。
結局、1か月のうち月のもの以外のほとんどの日を陛下に抱かれた。
何度も快感を教え込まれ、強請るように仕向けられ、自分で動く体位や男が喜ぶ行為などを仕込まれた。
ここまで必要なのかは疑問に思ったけれど、陛下とお妃様たちの善意?を有難く受け取った。
そして、3年が経ち、王命による結婚は離婚という形で手続きを終えた。
ルクレツィア・アグリードに戻った。
「白い結婚が認められた離婚って変な形になるけれど、そうじゃないと公爵のサインが要るからね。」
公爵は、まだ私が公妾になっていたことを知らないらしい。
「この離婚の手紙も、ルクレツィアのことを聞かれたら渡すように言うから。」
陛下はやっぱり面白がっている気がするわ。
公爵は、妻が公妾になっていたことや自分が離婚したことをいつ知るのかしら。
夜会にも出ず、社交もしないから誰も教えてくれないのね。
唯一、気に掛けてくれた国王陛下の王命にも従わなかったんだから、どうしようもないわ。
そして私は、みんなに別れを告げて、フォードとアミーリアを連れて3年過ごした王宮を去った。
238
お気に入りに追加
3,366
あなたにおすすめの小説
【完結】私の婚約者は妹のおさがりです
葉桜鹿乃
恋愛
「もう要らないわ、お姉様にあげる」
サリバン辺境伯領の領主代行として領地に籠もりがちな私リリーに対し、王都の社交界で華々しく活動……悪く言えば男をとっかえひっかえ……していた妹ローズが、そう言って寄越したのは、それまで送ってきていたドレスでも宝飾品でもなく、私の初恋の方でした。
ローズのせいで広まっていたサリバン辺境伯家の悪評を止めるために、彼は敢えてローズに近付き一切身体を許さず私を待っていてくれていた。
そして彼の初恋も私で、私はクールな彼にいつのまにか溺愛されて……?
妹のおさがりばかりを貰っていた私は、初めて本でも家庭教師でも実権でもないものを、両親にねだる。
「お父様、お母様、私この方と婚約したいです」
リリーの大事なものを守る為に奮闘する侯爵家次男レイノルズと、領地を大事に思うリリー。そしてリリーと自分を比べ、態と奔放に振る舞い続けた妹ローズがハッピーエンドを目指す物語。
小説家になろう様でも別名義にて連載しています。
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)
大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました
柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」
結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。
「……ああ、お前の好きにしろ」
婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。
ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。
いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。
そのはず、だったのだが……?
離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
愛なんてどこにもないと知っている
紫楼
恋愛
私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。
相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。
白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。
結局は追い出されて、家に帰された。
両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。
一年もしないうちに再婚を命じられた。
彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。
私は何も期待できないことを知っている。
彼は私を愛さない。
主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。
作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。
誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。
他サイトにも載せています。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
あなたの仰ってる事は全くわかりません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。
しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。
だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。
全三話
幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる