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女が四人もいて、その内の一人が新たな話題を運んできたのだからおしゃべりは止まらない。


「それにしても、陛下は公妾って制度をよく思い出したものね。興味なさそうなのに。」

「あれって元々は既婚者の夫人に惚れた当時の国王陛下が短期間だけでも抱きたくて始まったんでしょ?」

「そうそう。言わば堂々とした浮気よね。でも短期間だからこそ盛り上がるんじゃない?」

「当時は国王陛下に望まれるなんて誉れでもあったんでしょ?
 務めを果たしたってことで婚家に戻っても蔑ろにはされなかったって。」

「印象操作よね~単なる女好きなだけじゃない?」

「夫人を奪って愛妾にしてたら管理が大変だから公妾ができたのかも。飽きたから返すよって。」

「当時と違って今の制度では相思相愛の夫婦には認められてないものね。」

「夫に愛人がいれば、自分が陛下に望まれるなんて嬉しかった人もいるんじゃないかしら。」

「当てつけみたいに?でもそうかも。私もまだ女よって。」

「今は妻が公妾になるってことは夫との仲が悪いってことだものね。」

「でも慰労金目当てのために泣く泣く公妾になった例もあるらしいわよ。
 何度も国王が望んだから金額が跳ね上がったって。」 

「愛してる夫のためにお金で他の男に抱かれるってことね。」

「……じゃあ、私は子供目当ての公妾ってことですかね?」

「あら。別にいいじゃない。三年の年月って女性にとっては貴重よ?」

「悪いのは陛下と公爵なんだから。誰も口出しできないわ。」

「そうよ。それにルクレツィアは跡継ぎなんだから。種が誰のでもあなたの血縁であればいいのよ。」

「そうは言っても、陛下以外の男の種なら不貞になってしまうけどね。」

「そこが王命のややこしいところなのよ。普通の結婚後の不貞ならすぐに離婚できるのに。
 男と違って印象は最悪になるけど。」

「王命は三年離婚できないからね。」

「でも、ひょっとしてルクレツィアって側妃になる資格もあるんじゃない?」

「そうだわ。純潔でしょ?公爵との白い結婚は確実だもの。」

「公爵家にいたのは一日だけだものね。陛下に証拠をお願いすれば白い結婚の証明は確実よ。」

「この三年の間に産まれた子供は伯爵家の跡継ぎにできるわ。その後は望めば側妃になれるわよ?」

「今までの公妾は純潔の女性なんていないものね。絶対に側妃の資格はなかったもの。」


王妃と側妃になるには、純潔は必須。
純潔だからといって側妃になるなんてとんでもないわ。早く帰りたいのに。
それに四人の女に一人の男でしょ。
定期的に閨の順番が回ってくるって感じ?………うん、無理。
それこそ公妾って期間限定で妻たちに許可された愛人みたいなものだからいいんだし。


「いえいえ。三年で帰ります。伯爵領が好きですから。」

「そうよねぇ。自由があるわ。ここは……気軽に出られないから。」


なるほど。だからこそ、いがみ合うより仲良く話せる相手が必要なのね。

それに、王子様を産んでいるのは王妃様だけ。側妃様はどちらも王女様。

対立する関係も後ろ盾もないのなら、本心はどうあれ、平穏が一番だものね。

 



 
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