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公妾。

その意味を理解しているようで正確には把握できていない私に、国王陛下はこの国の制度を説明してくれた。
 

まず、国王陛下の正式な奥様は王妃陛下。王妃様は唯一人。
そして、側妃。これは三人まで認められている。子を産めて、その子は王位継承権もある。
基本的には王妃・側妃共に離婚はできない。

王位継承順位は、王妃様の子が年下であっても優先されると決まっている。
 
それから、愛妾。これは三人まで認められている。子は産めない。
愛妾を辞退したくなれば、国王陛下の許可が出ればいつでも辞められる。

滅多にいないのが公妾。
これは、結婚している女性が国王陛下の愛人になるようなもの。
公妾になっている間は、王宮内に部屋が準備される。
もし子供ができたとしても、王位継承権を持つことはできない。
それに、結婚している夫の籍に入れることもできない。
自分の実家の籍に入れることになる。
つまり、離婚して実家に戻るつもりがなければ、産んだ子は庶子として実家の養子に入る。
離婚すれば、自分の子として籍に戻すことは可能になる。


公妾になればいい。ということは、この国王陛下の子供を産んで実家の籍に入れるということ。
そして三年後、公爵様と離婚が成立すれば、実家に帰ることを認める。そういうことだ。


現在、30歳の国王陛下には王妃様と二人の側妃様がおられる。
それぞれ子供を産んでおり、王妃様は王子様二人。側妃様はそれぞれ王女様が一人。

………私が公妾になることで、王妃様や側妃様が怒ったりしないだろうか。

私の心を読んだのか、国王陛下が言った。


「私の妻たちは、みんな仲がいいよ。そこにルクレツィア夫人が入っても問題ない。
 しかも三年だけでしょ?三年で子供二人。相性が良ければ産めるよ。
 三年を無駄にしたくないのなら、この案が一番いいと思う。どう?」


どう?と言われても。
確かに三年を無駄にすることを思えば、いいのかもしれない。
三年後に焦って変な令息を掴まえて結婚してしまうと、伯爵領に害が及ぶ可能性もある。
別に今のままで伯爵領は十分収益がある。
入り婿の実家に頼る必要もないのだ。

それに……国王陛下は見目だけは麗しい。性格は微妙だけど。
子供の容姿にも期待できるかも。

うん。決めた。


「わかりました。公妾になります。よろしくお願いします。」

「思い切りがいいね。ユーグの頑なさを見誤った私のミスだ。責任持って子を授ける。」


その言い方に笑ってしまった。確かに、子供がいる陛下は実績があるってこと。
浮気性の元婚約者と何が違うのかと思ってしまうが、アレと一緒に暮らすことは無理だった。
いつ、婚外子ができるかと不安に思いながら暮らすのはまっぴらだった。
陛下とはたった三年。しかも、子供ができれば抱かれる必要もない。
理想的な子種をくれる相手に思えてきた。


「ユーグの公爵家には手紙で知らせておくよ。
 ルクレツィアは公妾になったと。
 だけど、ユーグがルクレツィアがいないことに気づいたら手紙を渡してくれ、とね。」

「……三年後の離婚まで気づかなかったりして。」

「ははっ!あり得るね。王家の血筋を汲む公爵家に跡継ぎを、と願ったけれど諦めた。
 アイツにルクレツィアは勿体なかったよ。
 いつまでもあの女の亡霊に付きまとわれたらいいんだ。そう思わない?」

「ええ。もう少し早くそれに気づいて下されば有難かったのですけどね。」

「ごめんごめん。じゃあ、これから三年間よろしくね。」


何とも軽く、国王陛下の公妾になった。
 

 


 
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