上 下
2 / 8

2.

しおりを挟む
 
 
僕、エルネストは12歳の時、隣の領地の2歳下のオリビアと婚約した。

オリビアは読書や刺繍が好きな大人しい女の子で、優しく微笑む姿がとても可愛かった。
いつもニコニコと僕の話を聞いて相槌をうってくれて、話している僕も聞いてもらうのが楽しかった。
そんな穏やかな時間は、僕の学園入学と共になくなってしまった。




学園1年目は、王都と学園の雰囲気、上級生たちに圧倒されていた。
王都で暮らしている貴族も多く、流行や話題に敏感なのだ。取り残されないように努力した。
そのため長期休暇は少ししか領地に帰らなかったので、オリビアと時間が合わなかった。
手紙が届いても、疲れて返信する回数が減っていった。
しかし勉強は頑張り、5クラスあるうちの上位クラスは無理だが次のクラスで進級できた。




学園2年目は、後輩も出来た余裕か少し周りを見る余裕もできた。
仲の良い友人キースとは1年から一緒で課題をしたり遊んだりした。
ある時、令嬢にぶつかってしまい手首に怪我をさせてしまった。それがイザベルだった。
ノートを代わりに書いたり、食べやすく切ってやったりと世話を焼いてると仲良くなる。
それをキースは注意してきた。『そこまで君が面倒を見るべきではない』と。 
距離が近すぎることも批判された。婚約者がいるのだから節度を保てと。
僕はそんな無責任なことはできないと言ったが、実際はイザベルといると楽しかったのだ。
ひと月後、包帯が取れた時には友人というには触れ合いが多かった。

キースは、イザベルにはよくない噂があると言ってきた。
僕は『噂なんて人の悪意でいくらでも捏造できる。自分が見ているイザベルを信じる』と言った。
何度もイザベルとの付き合いを考えるように言うキースが鬱陶しく感じた。
領地にも帰らず、オリビアの手紙を読みもしなくなっていた。
成績は下がり、最低クラス一つ上で進級した。…貴族では最低クラスだった。




学園3年目は、イザベルと同じクラスでキースとは別だった。
オリビアが入学してきた。
オリビアはたまに遠くから僕を見ていた。僕はイザベルと一緒だった。
一度、声をかけられたが、軽くあしらった。イザベルがいたから…
この頃の僕は、オリビアが陰気な令嬢に思えたのだ。明るいイザベルと比較して。
キースがオリビアに話しかけていた。僕の婚約者だと気づいたか?
イザベルのことを悪く言うんだろうなと思ったが、いい機会では?とも思った。
オリビアとの婚約を解消してイザベルと婚約する。いいと思った。

イザベルにそれとなく現在の婚約を解消するかもしれないと言ってみた。
イザベルは『私のためかしら?』と顔を赤くして期待していた。
よし。婚約解消をオリビアに言おう。

オリビアとオリビアの両親は婚約解消を了承してくれた。
しかし、両親には反対された。
しばらく意見が平行線で悩んでいた時にイザベルに婚約解消はどうなったか聞かれた。
オリビアの方は了承してくれたが両親の説得がうまくいってないと言うと、僕との将来を夢に見てしまったから辛いと泣いた。
胸に飛び込んで来て『捨てないで』と。
柔らかい胸を当てられて、口づけ出来そうな距離で言われると我慢出来ずに口づけてしまった。
僕が押し倒した記憶はない。いつの間にか覆い被さる体勢だったけど。
ソファで最後まで…なんてあり得ないよな、普通の令嬢だと。
でも、これがきっかけで両親を説得できたんだよな。












 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

貴方は何も知らない

富士山のぼり
恋愛
「アイラ、君との婚約は破棄させて欲しい。」 「破棄、ですか?」 「ああ。君も薄々気が付いていただろう。私に君以外の愛する女性が居るという事に。」 「はい。」 「そんな気持ちのまま君と偽りの関係を続けていく事に耐えられないんだ。」 「偽り……?」

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

誰でもよいのであれば、私でなくてもよろしいですよね?

miyumeri
恋愛
「まぁ、婚約者なんてそれなりの家格と財産があればだれでもよかったんだよ。」 2か月前に婚約した彼は、そう友人たちと談笑していた。 そうですか、誰でもいいんですね。だったら、私でなくてもよいですよね? 最初、この馬鹿子息を主人公に書いていたのですが なんだか、先にこのお嬢様のお話を書いたほうが 彼の心象を表現しやすいような気がして、急遽こちらを先に 投稿いたしました。来週お馬鹿君のストーリーを投稿させていただきます。 お読みいただければ幸いです。

[完結]愛していたのは過去の事

シマ
恋愛
「婚約破棄ですか?もう、一年前に済んでおります」 私には婚約者がいました。政略的な親が決めた婚約でしたが、彼の事を愛していました。 そう、あの時までは 腐った心根の女の話は聞かないと言われて人を突き飛ばしておいて今更、結婚式の話とは 貴方、馬鹿ですか? 流行りの婚約破棄に乗ってみた。 短いです。

(完結)嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

〖完結〗もうあなたを愛する事はありません。

藍川みいな
恋愛
愛していた旦那様が、妹と口付けをしていました…。 「……旦那様、何をしているのですか?」 その光景を見ている事が出来ず、部屋の中へと入り問いかけていた。 そして妹は、 「あら、お姉様は何か勘違いをなさってますよ? 私とは口づけしかしていません。お義兄様は他の方とはもっと凄いことをなさっています。」と… 旦那様には愛人がいて、その愛人には子供が出来たようです。しかも、旦那様は愛人の子を私達2人の子として育てようとおっしゃいました。 信じていた旦那様に裏切られ、もう旦那様を信じる事が出来なくなった私は、離縁を決意し、実家に帰ります。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

処理中です...