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翌日、学園でメイベルがクレージュに言った。


「お兄様、クレージュのことを私と同い年なのに聡明で大人っぽい美人だって言ってたわ。
 良ければ今度はクレージュがうちに来ない?
 両親も会ってみたいって言ってるの。 
 うちは婚約にすっかり乗り気よ。」

「ありがとう。嬉しいわ。
 父もワンダー様が気に入ったみたいで。侯爵令息に気に入っただなんて失礼だけど。」

「いいのいいの。兄が嬉しそうで家族みんなも嬉しいの。」

「あら。上手く纏まりそうなのね。良かったじゃない。」

「カッシーナのお陰よ。クレージュの婚約者を決めた方がいいって言葉で思いついたから。」

「クレージュのために言ったつもりだけど、メイベルのお兄様の方が喜ばれたみたいね。」

「3歳年上なら、私の婚約者と同い年ね。」


ユナの婚約者と同い年ということは、知り合いだった可能性もあるわね。
ユナは隣の領地の幼馴染と何年も前に婚約しているのだ。


「なんだか、意外なところで繋がりができて面白いわ。
 それぞれの婚約者を連れて交流するのも楽しそうね。」


まだワンダー様と婚約したわけではないけれどね?
それにカッシーナの婚約者は第三王子。
公爵令嬢のカッシーナと対等に話していることさえ本来は恐れ多いことなのに、友人なんだからと敬称もなく呼んでいる。
さすがに王子様には軽口は叩けないわ。



次の週末、メイベルの誘いに乗り侯爵家に行くことになったけど、いつの間にかうちの両親まで一緒に行くことになった。  
父が言うには、侯爵家はおそらく婚約を早く纏めてしまうつもりでいるのではないかということだった。

ワンダー様の元には、まだ婚約者の決まっていない学園を卒業した令嬢からの縁談が持ち込まれていると思われ、断りを入れるのも面倒になる。
しかし、クレージュとの婚約が纏まらなければ、その中から顔合わせをする必要も出てくる。
ワンダー様は男なので結婚を焦る必要もないが、婚約者がいないままでは問題のある令息と見做されることもあり、侯爵家を継ぐ長男にも迷惑がかかるため、20歳までに婚約を決めたいところ。
19歳になったばかりのワンダー様にまだ時間はあるけれど、早く決まるに越したことはない。というのが父の見解だった。
 

「クレージュが婚約前にもっと交流したいと言うなら、『婚約を前提に』と周知させることもできる。
 だが、そうするとロメオ君と同じような位置にワンダー君を置くような気がしてな。
 ブラック家には断りを入れたが、ロメオ君が何か勘違いしたままのように思えてな。」

「婚約している方が安心できるということですね。
 確かに、もう少し交流して判断したいところですが、侯爵様やワンダー様が望まれるのであれば。」


なんせ、相手は侯爵家。うちは格下の伯爵家。
私が嫁ぐわけではないので、侯爵夫妻との関わりは多くはならないけれど義両親になる。
短時間で本心まで読めるとは思わないけれど、ワンダー様の相手として嫌われたくはない。
まぁ、メイベルのご両親でもあるから、陰険な方たちとは思いたくないけれど。



そんなことを考えて侯爵家を訪れたのに、私と両親は想像以上に歓待された。 

誰にって?侯爵家全員に。長男や長男の嫁にも。
クレージュは一人で来なくてよかったと思った。両親がいれば視線も会話も分散されるから。 


「ワンダーとメイベルが言っていた通り、綺麗なお嬢さんね。
 ワンダーの体格にも問題ないって聞いてるけれど、本当かしら?」

「え、はい。私はがっしりしていて頼もしく感じます。」

「まあ、嬉しいわ。」


ワンダー様のお母様、侯爵夫人はワンダー様の体格が好みじゃないと婚約破棄となったことが気にかかっているみたい。
それにしても、前の婚約者は顔じゃなくて体格が嫌だったのね。
なら好きな人ができてからじゃなくて、もっと早く婚約解消すればよかったのに。と思ってしまう。

みんなで話したり、個々で話したりと楽しい時間を過ごし、侯爵様とワンダー様から正式に婚約を望まれたことから、その日のうちに婚約が結ばれることになった。
 
 


 



 
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