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メロディーナが『王族に不敬』だと言った理由。

それは、現国王陛下の母親が元男爵令嬢だからである。


メロディーナが元没落子爵令嬢から侯爵夫人になったのに対し、現国王陛下の母親は元没落男爵令嬢から王妃にまで登り詰めた女性なのだ。

メロディーナ以上に格差があったと言えよう。


前王妃サラエラ様はとても聡明な方だったという。
当時の王太子であった現国王の父サーディン様が惚れ込んで口説き落としたらしい。

サーディン様はサラエラ様が認められるように奔走し、ある公爵家に認められてサラエラ様は公爵家の養女になってサーディン様と結婚することになったのだ。
ちなみに、養女になる時に実家の男爵家は爵位を返上した。継げるのがサラエラ様だけだったのだ。なので没落とは違うのだが、そう思われている。

現国王陛下の母親の出自が男爵家であるということは周知の事実であることから、あまり格差結婚を非難できなくなっており、この夫人がメロディーナを蔑むことは王族への不敬と捉えることができるのだ。 


もう一人の夫人はそのことに気づいたのだろう。声を震わせながら言った。


「も、もう止めましょう?このことがバレたら夫に離縁されてしまうわ。」

「え?」


不敬な発言をした夫人はまだ気づかない。知らないのかもしれない。

ジェイドが腕を離してくれたので、ローレンスはメロディーナの元へと向かった。


「メロディーナ。」

「あら、探しに来てくれたの?」

「まあね。……こちらのご夫人方は私がまるで妻を捨てるみたいなことを言っていたが、捨てられることはあっても捨てることはないと言っておくよ。」

「まあ!私も捨てたりなんてしないわ。」

「それはよかった。愛してるよ。」

「私も愛してるわ。」


夫人方の前でイチャイチャしておいた。
新たな妻なんて迎える気は全くないからな!
 
メロディーナも辺境伯の養女になったんだ。
辺境伯に楯突いてまで娘を送り込める貴族がいるか?

そう思っていたのに、こんなに頭の悪い夫人がまだいるとはな!
どこの貴族夫人か知らないが、必ず抗議してやる。
 

夫人方はローレンスの後ろを見て、他にも話を聞いていた者がいたのだと知り、震えながら去って行った。
 

「君はやっぱり強かだな。」

「そうよ?勉強ができなかったことも事実だし、いつも一人でいたから根暗に思われても仕方がなかったけれど、私は本来こんな性格だもの。しかも、身分を盾にできるようになったのだから負ける気はないわ。」
 

自信満々にそう言ったメロディーナに、ローレンスは苦笑した。
 
確かに、貧乏子爵令嬢では歯向かえば返り討ちにされるだけだ。
だが、今は侯爵夫人。
同年代のほとんどの女性がメロディーナの身分には敵わない。

こうして蔑んでくる夫人とはもう二度と関わることはないだろう。

彼女が同格以上の貴族家とローレンスの友人の貴族家、領地と事業に関係のある貴族家以外の人物を覚えようとしなかった理由がわかった気がした。
 



 
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