3 / 50
3.
しおりを挟む結婚翌日、ローレンスはすでに成人し、結婚までしたのにオリオール侯爵家の爵位を継承することは認められなかったと父は言った。
「陛下はまだお前に不安があるし、執務も全てやっているわけではないから私に代理を続けてくれと仰せになられた。跡継ぎができて一人前だと認められるだろう。それまで侯爵と名乗るな!」
「……わかりました。」
「お前にはすべきことが山ほどある。今まで通り、食事も全てこの執務室で食べろ。」
「しかし、ジョスリンがいるのに彼女を一人にするのは失礼かと思うのですが。」
「心配ない。我々が面倒を見る。お前は陛下に認めていただけるように仕事だけしてろ!」
「……はい。」
父はさすがに学園を卒業したローレンスに暴力を振るうことはなくなった。
その代わり、全ての時間を執務に充てるようにローレンスを執務室から出さなくなった。
自室で食べていた食事も、執務室になった。
ジョスリンと結婚すれば、体面を気にして普通の暮らしができるかと期待したが、そうではないようだ。
ローレンスが侯爵位を継ぐ時が来ても、父や義母は出て行くことはないだろう。
義母はともかく父はローレンスの実父であるため、ここにいる権利はある。
弟レナウンは婚約者もいないが、半年後に学園を卒業すればどうする気なのか。
彼まで侯爵家に居座るつもりなら、オリオール家は赤の他人を養い続けることになる。
このままでいいはずがない。
一日も早く爵位を継ぎ、正しい姿に戻すべきである。
ローレンスは結婚したことで、自分が守るべきものは何なのかを少しずつ自覚していった。
しかし、数日後、執務室の窓から信じられないようなものを見た。
見間違い、ではない。
妻ジョスリンと弟レナウンが庭で抱き合い、口づけていたのだ。
ローレンスは出てはいけない執務室から飛び出した。
「ジョスリンと毎日過ごせるなんて、最高だな。」
「私もよ。早くレナウンの妻になりたいわ。」
「妊娠してたらいいな。してなかったら、またローレンスの奴と寝なきゃならなくなる。」
「ふふ。ただ添い寝しただけなのに、そんなに嫌がってくれるなんて嬉しいわ。」
「ローレンスはジョスリンを抱いたと思ってるんだろ?今度は本当に襲われるかもしれないぞ?」
「そうよねぇ。何度もお酒や睡眠薬で誤魔化せないだろうし。」
「あとどれくらいで妊娠しているかわかるんだ?俺の子種は強いから一発で妊娠してるだろ?」
「一発って……それどころじゃないくらい毎晩交わってるのに。」
「ダメ押しだよ。ジョスリンの中、毎晩すごいことになってるもんな。」
「もうっ!こんな外で恥ずかしいこと口にしないでよ。」
「それにしてもローレンスはマヌケだよな。あのシーツ、信じたんだろ?」
「それはいかにもっていうシーツなんだもの。あなたと私の初夜のね?」
そういうことか。ローレンスはジョスリンを抱いていなかったことを知った。
321
お気に入りに追加
883
あなたにおすすめの小説
花嫁は忘れたい
基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。
結婚を控えた身。
だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。
政略結婚なので夫となる人に愛情はない。
結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。
絶望しか見えない結婚生活だ。
愛した男を思えば逃げ出したくなる。
だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。
愛した彼を忘れさせてほしい。
レイアはそう願った。
完結済。
番外アップ済。
それについては冤罪ですが、私は確かに悪女です
基本二度寝
恋愛
貴族学園を卒業のその日。
卒業のパーティで主役の卒業生と在校生も参加し、楽しい宴となっていた。
そんな場を壊すように、王太子殿下が壇上で叫んだ。
「私は婚約を破棄する」と。
つらつらと論う、婚約者の悪事。
王太子の側でさめざめと泣くのは、どこぞの令嬢。
令嬢の言う悪事に覚えはない。
「お前は悪女だ!」
それは正解です。
※勢いだけ。
生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。
眠りから目覚めた王太子は
基本二度寝
恋愛
「う…うぅ」
ぐっと身体を伸ばして、身を起こしたのはこの国の第一王子。
「あぁ…頭が痛い。寝すぎたのか」
王子の目覚めに、侍女が慌てて部屋を飛び出した。
しばらくしてやってきたのは、国王陛下と王妃である両親と医師。
「…?揃いも揃ってどうしたのですか」
王子を抱きしめて母は泣き、父はホッとしていた。
永く眠りについていたのだと、聞かされ今度は王子が驚いたのだった。
やり直し令嬢は本当にやり直す
お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。
その言葉はそのまま返されたもの
基本二度寝
恋愛
己の人生は既に決まっている。
親の望む令嬢を伴侶に迎え、子を成し、後継者を育てる。
ただそれだけのつまらぬ人生。
ならば、結婚までは好きに過ごしていいだろう?と、思った。
侯爵子息アリストには幼馴染がいる。
幼馴染が、出産に耐えられるほど身体が丈夫であったならアリストは彼女を伴侶にしたかった。
可愛らしく、淑やかな幼馴染が愛おしい。
それが叶うなら子がなくても、と思うのだが、父はそれを認めない。
父の選んだ伯爵令嬢が婚約者になった。
幼馴染のような愛らしさも、優しさもない。
平凡な容姿。口うるさい貴族令嬢。
うんざりだ。
幼馴染はずっと屋敷の中で育てられた為、外の事を知らない。
彼女のために、華やかな舞踏会を見せたかった。
比較的若い者があつまるような、気楽なものならば、多少の粗相も多目に見てもらえるだろう。
アリストは幼馴染のテイラーに己の色のドレスを贈り夜会に出席した。
まさか、自分のエスコートもなしにアリストの婚約者が参加しているとは露ほどにも思わず…。
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
【完結】「第一王子に婚約破棄されましたが平気です。私を大切にしてくださる男爵様に一途に愛されて幸せに暮らしますので」
まほりろ
恋愛
学園の食堂で第一王子に冤罪をかけられ、婚約破棄と国外追放を命じられた。
食堂にはクラスメイトも生徒会の仲間も先生もいた。
だが面倒なことに関わりたくないのか、皆見てみぬふりをしている。
誰か……誰か一人でもいい、私の味方になってくれたら……。
そんなとき颯爽?と私の前に現れたのは、ボサボサ頭に瓶底眼鏡のひょろひょろの男爵だった。
彼が私を守ってくれるの?
※ヒーローは最初弱くてかっこ悪いですが、回を重ねるごとに強くかっこよくなっていきます。
※ざまぁ有り、死ネタ有り
※他サイトにも投稿予定。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる