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しおりを挟む翌日の昼休憩、前日と同じようにサニード王太子殿下と約束した部屋に向かった。
すると部屋の近くで何やら言い合いをしているようで、近づくとそれが王太子殿下と側近候補の令息たち、そしてあの男爵令嬢だとわかった。
「どうしてですか?話を聞いてくれるって言ってくれたのに。」
「だから、先ほども説明したが君にいつまでも構っていられないから現状を変える必要がある。
君の主張する虐めは一向に良くなっていないようだから、担当教師と風紀委員に調査を任せることにしたんだ。私たちが話を聞くだけでは何も解決しないだろう?君は大げさなことにしたくないと言っていたが、その者たちが君を追いかけてまで暴言を繰り返し続けているのであれば話は別だ。」
「……え?追いかけて?」
「そうなんだろう?私たちは虐めをしてくる者と接しないように言ったから君は避けているはずだ。
それなのに、こうして話を聞いてほしいとやって来る。ということは、その者たちはわざわざ君を追いかけてきては暴言を吐いていることになる。まぁ、調査すればすぐに相手はわかることだし、注意されれば虐めは収まるだろう。それでも何かあれば、また教師に言うことだ。」
「……えっと、それじゃ、あの、サニード様が対応してくれないのですか?」
「私は王族であっても、学園内の虐めに対処する権限はない。学園の権限は学園長にある。各クラスに風紀委員もいるから、学園内の揉め事は風紀委員と担当教師が対応することだ。」
「……そんな。庶民上がりの男爵令嬢の話なんて信じてもらえません!サニード様が……」
「それと、私の名前を呼ぶのは止めてもらえるかな。許可してないよね?君が虐められたと主張する最たる不敬はそのことなんだ。名前くらいいいかと放っておいた私も悪いが、親しい間柄で許可した者にだけ許されることなんだ。君は婚約者でも友人でもない。礼儀作法について注意をした同級生の令嬢たちが正しい。暴言はよくないがね。
礼儀作法の教師にも君のことを頼んでおいた。男爵家で学べないのであれば集中して教えを乞うといい。意欲があれば庶民上がりだろうと親身に教えてくれる方だ。貴族としての常識と下位貴族の礼儀作法をしっかりと学ぶように。そうすれば暴言を吐かれることもなくなるだろう。」
男爵令嬢キララは助けを求めるように側近候補の令息たちに縋りつこうとした。
しかし、令息たちは苦笑して言った。
「僕たちには婚約者がいる。注意をしなかった僕たちも悪いけれど、貴族令嬢は異性に気軽に触れるものじゃないんだ。そのうち同級生に言われたことが正しかったと君が言ってくる日が来ると思っていたけれど、君は同級生の言うことに耳を傾ける気もなかったし、新たに学んでいる様子もなかったね。
僕たちまで否定するのは可哀想だと思ったけれど、それが間違いだったようだ。
君は僕たち誰かの愛人になるんじゃないかって噂になっていたらしい。そんな不名誉な噂は僕たちにも君にも迷惑な話だ。婚約者にも申し訳がない。適切な距離で過ごそう。僕たちは単なる先輩と後輩。顔見知り程度だ。」
「で、でも食事くらい一緒に……」
「悪いけど、特に君と話をする内容がないんだよね。僕たちの話についてこれないでしょ?君がいる時は君の話を聞いているだけで、僕らは自分たちが思うように話が出来なくて困ってたんだ。」
「そうそう。それに僕らだけで過ごせないのであれば、君と一緒に食事をするより婚約者と昼食をとる方がいいんだけど。」
「君ばかり特別扱いするのは周りが勘違いするのも無理はなかった。教訓になったよ。」
側近候補の令息たちにも冷たくあしらわれた男爵令嬢は泣くかと思ったけれど、子供みたいに頬を膨らませて『ひどいっ!』と言って去っていった。
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