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しおりを挟む学園を卒業後、ウラジールはラフィーナと結婚した。
そして、ラフィーナはすぐに妊娠し、ベンジャミンを産んだ。
ちなみに、エカテリーナも伯爵家に嫁ぎ、すぐに妊娠、出産した。その娘がララベルである。
王家と公爵家の密約通り、後にララベルは10歳で公爵家の養女となりベンジャミンの婚約者になる。
王太子妃教育が遅くから始まったラフィーナは、完璧な王太子妃とは言い難かった。
しかし、最低限のラインはクリアできており、しかも王子を産んだことで悪く言う者は少なかった。
ウラジールはラフィーナを溺愛しており、夫婦関係は良好だと思われていた。
ベンジャミンに続き、第二子を授かるのも遠くないであろうと言われていたのだが、いつまで経っても妊娠することはなかった。
王子が生まれているので側妃を娶る義務はない。
しかし、王族が少ない今、第二子を望む声は大きくなってきていた。
「側妃を娶る気はない。ラフィーナは真実の愛の相手なんだ。
他の女性を抱くなど、考えたくもない。」
ウラジールはそう突っぱねて側妃を娶らなかった。
毎日のようにラフィーナを愛し、月のものが来れば落胆する。ウラジールは何年もそう過ごした。
そして、2人が27歳になったある日、ラフィーナの侍女から密告があった。
『ラフィーナ妃殿下は、ずっと避妊薬をお飲みですので妊娠するはずがありません。』
信じられなかった。第二子を望むウラジールのことをラフィーナは誰よりも知っていた。
ラフィーナも妊娠しないことを詫びるように言うので、ウラジールはラフィーナの前では落胆した姿を見せないように気遣っていたというのに。
………思い返せば、月のものが来たことを詫びはするが、悲嘆に暮れる姿を見たことはない。
ウラジールはラフィーナに問い質した。
すると、ラフィーナは認めた。その言い分は男のウラジールには理解し難かった。
『ベンジャミンを妊娠・出産したせいで、体のラインは崩れるし、皮は伸びるしで困ったわ。
また出産後のあの苦痛を私に味わわせるつもりなの?
私はね、この容姿を保つために努力を重ねているの。
あなたと結婚したのも、王太子妃になれば最高級のケアが得られると思ったからよ?』
ウラジールは騙された気分になったが、ラフィーナを愛していた。
しかし、考え方の違うラフィーナを抱く気が薄れ、そのうち抱かなくなった。28歳の頃だった。
周りも、ウラジールからラフィーナへの溺愛が薄れたことを感じられるほどだった。
そして、決定的な出来事が起こる。
ラフィーナが護衛騎士を寝所に引きずり込み、昼間から情事に耽っているとのことだった。
またまた侍女からの密告を受け、寝所に駆けつけたウラジールが聞いたのは情事真っ最中の嬌声と体がぶつかり合う音だった。
やがて、荒い息遣いになったところで侍従と侍女と一緒に踏み込むと、まだ繋がった状態だった。
護衛騎士は慌ててラフィーナから離れ、身だしなみを整えようとしたが服はウラジールのそばだった。
「ラフィーナ、王太子妃の公務はどうした?」
「あぁ、今日は気分が乗らなくて。最近、あなたが抱いてくれないから肌に張りがなくなってきたの。
だから、彼に抱いてもらってたの。
やっぱり、男に手や口で体に触れられると肌が生き生きとする気がするわ。」
「……ラフィーナを離宮に幽閉しろ。王太子妃は病気を発症しているようだ。
肌や顔、髪などを維持する物は全て排除しろ。服も質素なものでいい。アクセサリーも不要だ。」
病気療養なんだからな。ウラジールはそう言いつけて情事の匂いが残る部屋を出た。
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