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学園を卒業した数日後、騎士たちがディランが起こした事件の報告とジェシーの報告に訪れた。

伯爵とクラリス、ルークも一緒に話を聞いた。


まずディランだが、農薬は原液のままであったため、肌の爛れ、口内と喉の炎症、右目失明、左目もはっきりは見えないが辛うじて自分で動ける程度ということだった。

当然、クラリスを狙った犯行であったため、罪人だ。
侯爵家もディランを廃籍し無関係としたため、平民扱いで罪は重い。だが実害は自分だけ。
しかし、失明しはっきり話せないディランは何処にも送れず扱いに困っていた。
その時、そんな奴でも歓迎のところがあった。
男娼館だ。といっても相手は男限定。そこで、男を受け入れ体を慣らしてもらう。
ディランが自分の行いを心から反省し男娼として問題を起こさなければ、需要がある限り男娼館で生活できる。そこでは、食事や洗濯は任せられるし清潔に過ごせる。
もし反省が見られなければ男の扱いを学んだ後、鉱山で働く犯罪者相手の男娼になる。
もちろん清潔さは段違いだ。一日の相手の人数も多いだろう。穴が壊れるかもしれない。そんな所だ。
ディランの未来はディラン次第ということだった。



次にジェシーだが、彼女は黙秘していた。
薬は毒薬で、量により堕胎薬にもなれば心臓を弱らせたり、即死したり。
侍女のリンに渡した量は堕胎薬であった。
リンによると、子爵と関係をもった侍女が妊娠した。だが産めない。と相談されたらしい。
知り合いだったジェシーにいい方法がないか聞いたところ、この粉を渡されたらしい。

リンは侍女に渡したが、侍女は勇気が出ずすぐに飲めなかった。
ポケットにしまったが、ハンカチと一緒に包み紙が出てしまい、子爵夫人に問い詰められた。
答えない侍女に、騎士が呼ばれて毒かと尋問され、リンからジェシーへと繋がったのである。

黙秘を続けていたジェシーに、昔仕えたであろう伯爵家の令嬢だった侯爵夫人(ディランの母)が亡くなったと何気なく伝えると、泣き出し自白を始めた。

伯爵家のお嬢様が父親に婚約を命令されたため、恋人が死んでしまった。
その嘆きは悲痛だった。ジェシーはお嬢様を不憫に思った。
自分は『お嬢様の味方だ』と伝えた。

やがて嫁いでいったお嬢様が何年も経ってお願いしてきた。
『息子のディランをクラリスと結婚させてこの伯爵家に戻りたい。
 そのためにはクラリスに弟妹はいらない。
 弟の嫁が妊娠すれば、堕胎させてほしい。』

そう言って大金を渡し、薬を買うようにジェシーは言われた。
指定された場所で男の名前を確認し、金と薬を交換した。
小瓶だが、いっぱい粉が入っていた。
堕胎の量、致死量、体を弱らせるに必要な日数など、細かく教えてもらった。

やがて、現伯爵の妻が妊娠した。
出番だと思い薬を飲み物に混ぜたところ、流産した。
それを3回繰り返した頃、お嬢様にこっそり呼び出された。
『一週間後、父を訪ねる。その時、父の飲み物に致死量の毒を入れて』
断ろうと思った。だけど、『味方って言ってくれたわよね?』と言われた。
既に3回、産まれるはずの赤ん坊も殺してる。
もう逃げられない。そう思い、前伯爵のお茶に致死量の3倍の毒を入れた。ひと口でも確実な死を。
『弟とクラリスはまだ先。怪しい動きをしたら教えて』
そう言われていた。
その後、クラリスとディランの婚約が結ばれ、お嬢様は本当に戻って来る気だと思った。
嬉しくもあり、不安でもあった。

そう語ったという。

ジェシーが語ったことは立証が難しい。
前伯爵は病気で死亡したとされており、堕胎も証明できない。

だが、彼女は罪の意識を感じている。
死刑には出来ないが、毒物所持と譲渡により労働の懲役刑である。
無期にするつもりだが、それでよいかと伯爵は聞かれた。

「…はい…」

震えるような声で伯爵は答えた。








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