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二日後、ルーク様から目配せされ、距離をあけてついていく。
ついた先は、特別室。現在は第一王子殿下が私用で利用されている部屋だ。 
王族が学園に在籍中は、私的な話や昼食などの利用で特別室が与えられることになっている。
そこに入るということは第一王子殿下もいるのだろうか? 

「殿下に部屋を借りた。
 二人で話す姿を見られると面倒だし、話の内容的にも防音のこの部屋がいいと思って。」

「そうですね。助かります。」

クラリスはルークと向かい合ってソファに座った。

「あれからどう?父親には何か聞けた?」

「はい。ルーク様は何か良い方法ってありました?」

「ちょっと思いついた案がないこともないが…そっちは?」

ルークに考えた案を説明した。

「婚約解消にできる案は二つです。
 
 一つ目は、ディランが犯罪を犯す。
 でも、犯すかわからない犯罪や冤罪に陥れるわけにはいかないので却下ですけどね。

 二つ目は、私が別の貴族と結婚するか平民になるかです。
 これは、ディランが伯爵家の跡継ぎになり、おそらく領民が犠牲になります。
 そして、侯爵夫人が、私が伯爵家とディランを捨てたと言いふらすでしょう。
 となると結婚してくれる貴族はいませんので、平民の方になりますね。

 結婚する場合も案は二つです。

 一つ目は、白い結婚で逃げ切る。
 愛人と別宅で暮らしてもらいます。三年後に何がなんでも追い出します。
 追い出せなかったり襲われた場合は二つ目に繋がりますね。
 
 二つ目は、私も愛人をつくって愛人の子を跡継ぎにする。
 どんなに白い目で見られようと、私の子であり、正統な跡継ぎです。

 とまぁ、こんなくらいしか思いつきませんでした。」

「だよなぁ。犯罪を犯させるってのが手っ取り早いけど、あんな小者じゃ無理だな。
 …父親の話は?」

ちょっと衝撃的だったんですけど…と前置きをし、父が話した内容をルークに話した。

「それは…逆恨みじゃないか。
 元々男子優先なのに、平民になりたくないから自分が継ぐって。
 それが許される家ばかりなら男子も長子も関係なくなって、争いが絶えないぞ?
 
 侯爵家との婚約を解消するなんて許さない。
 愛し愛されない夫は愛人に子を産ませ、君は仕事三昧。これが侯爵夫人の目的か。
 ディランのかわりに仕事をしている間は、父親も君も殺さないってとこか?

 毒殺か…今更、証拠がないな。
 お前の父親が怖がるのもわかるな。使用人にも疑心暗鬼。疲れてるだろな。」

「自分を犠牲にするのが一番周りへ迷惑がかからないのだと改めて思いました。
 ですが、足掻けるなら足掻きたいです。
 ルーク様の案は?」

「要は、この婚約が乗っ取り前提で当人たちを無視した遺言に基づくものだということを知らしめる。
 関係のない人前で発表するのがいいな。遺言や婚姻に詳しい法担当の王宮官吏がいいか?
 しかし、乗っ取りは伯爵が認めていると言い出すだろう。
 それを言い出す前に何とかしなければならない。侯爵を使おうと思う。」

「侯爵様?婚約解消に同意してくださると?」

「ちょっと脅すネタを掴んだ。それを耳に入れればうまくいくかもしれない。
 しかし、これは口外禁止の情報だ。関係のない君に教えるわけにはいかない。
 俺が侯爵をこのネタで脅すにも理由が必要だ。」

「……その情報と引き換えするのに必要な対価は私で何とかなるものですか?」




「ああ。…アイツと婚約解消できれば、俺と契約結婚してもらう。」










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