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翌朝から護衛と一緒に研究所に行くことになって、初日の今日は侯爵家から二人の護衛がやってきた。
この二人のどちらかが行き帰りを共にするという顔合わせで、カーティス様も来てくれた。 
二人とも、侯爵家の別邸にいた時に顔見知りになっていた人だったので安心した。 
カーティス様に言われて、メガネを外した素顔も覚えてもらった。
……何故か、一層気を引き締めて護衛にあたると言われてしまったけれど。


さほど遠くない研究所と共に歩き、研究所の受付員にも侯爵家の護衛として覚えてもらう。
そして、帰りに護衛もしくはミーシャが待つ場所も教えてもらう。
研究所で働いている貴族は、みんなここで合流することになるらしい。

絶対一人で帰らないこと。
担当が変わったと言われても知らない護衛に付いて行かないこと。

等々、いろいろ言い含められてカーティス様と護衛二人と別れて仕事に向かった。



慣れてきた廊下を歩いているのに、いつもより見えにくいので別の場所のように感じる。
だけど、いつもよりレンズが半分なので耳の負担が少なくて軽い。
せめて、このメガネではっきり見えるくらいには回復できる薬を作りたいと思った。
 

それから数日後、特注メガネが仕上がり、カーティス様と一緒に取りにいった。
新しいフレームは耳の負担も軽減されていて、以前のものよりも顔にピッタリだった。
相変わらずレンズは多いので、分厚いのは変わらないけれど。


「ミーシャ、昼食を食べに行こう。マイラにはいらないと伝えてあるから心配ない。」

「はい。」


……外食っていつぶり?領地にいた小さい頃以来な気が……

カーティス様が連れて行ってくれたのはレストラン。
高級というほど堅苦しい感じではなく、貴族が気軽に食べやすいということで人気らしい。
家族や女性同士、恋人などが狙いで、ガッツリ食べたい大盛を好む男性同士は少ないとか。
料理を注文した後、カーティス様が言った。
 

「ミーシャ、料理が来るまででいいから、メガネを外していてくれないか?」

「いいですよ?」


不思議に思いながらも外した。
もちろん、目の前に座っているカーティス様の顔はわからない。


「面倒事を少しでも省きたいんだ。ミーシャの素顔を見せたら無謀なことをする奴が減る。」


トラブルが減るなら喜んで外すけど。
私のメガネの顔と素顔をここにいる人達に見せてるってことね。
カーティス様ってそんなに人気があるんだぁ。
アロイス様が言ってたものね。勘違いされるから女性の顔を見て話をしないって。
それなのに、私みたいなのにでも牽制しようとする令嬢がいるんだものね。

研究所のヒョロヒョロっとした男性か、お腹の丸い男性を見ていたら、確かに騎士様ってカッコいいと思うようになった。
それに加えて、カーティス様の顔が整っているということも。
人それぞれ好みがあるだろうけれど、人気なのはわかる気がする。独身だしね。
こんなカッコいい人と結婚したら、私なら不安で疲れそうなんだけど。
誘惑が多いって言ってたから、それを許せるか離婚を覚悟の上じゃないと騎士様と結婚は無理ね。 


料理はとても美味しかった。
マイラのご飯もいつも美味しいから、外食はたまにでいいかな。
すごく注目を浴びた気がするし。

カーティス様は、『二人であちこち出歩くと、そのうち見慣れて誰も気にしない』と言う。

そうかなぁ。そうなのかなぁ。そうなるといいなぁ。  

  

 



 
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