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しおりを挟むここでの生活に慣れるために、数日はゆっくりと過ごすことを勧められた。
この別邸にも図書室がある。薬草の本もあったので読ませてもらった。
アロイス様は疲れやすくなったようで、散歩も庭を歩く程度。
お茶の時間や食事の時間は一緒に過ごしている。
昼食後は少し長めに話せるので、それも楽しい時間だった。
その昼食後の時間に医師と薬師が来たので診察後、少しお話を聞いた。
「ほー。ここまでレンズを重ねてメガネをかけている方を初めて見たなぁ。」
「僕もです。」
医師と薬師がそれぞれジッとメガネを見つめている。私ではない。メガネを。
「それは不便でしょうなぁ。重そうだ。」
「そうなのです。先生、目が良くなる薬ってないんですか?」
思わず縋るように聞いてしまった。
「それがなぁ。この国では見え方をよくする研究者がおらんでなぁ。
あんまり困ってる人がおらんというか需要が見込めんでなぁ。」
期待はしていなかったが、ガックリしてしまった。
「昔、ジャンカ国という薬草の研究が盛んな国があってな、
その国で作られた目の薬には見え方が良くなるものがあったそうなんだがなぁ。」
「ジャンカ国って…」
「火山の噴火で滅んだなぁ。
この国でも何人もの薬師がジャンカ国の薬の文献を読み解こうと頑張ったんだがなぁ。
難解で、挫折した者ばかりなんだよ。」
「それって、薬師の仕事じゃなくて学者の仕事なんじゃないか?」
アロイス様に尤もなことを言われて、医師と薬師は目を丸くした。
「この国にあるジャンカ国の文献が薬の文献だけだったから医師と薬師の手元に長年あったんだな。
だがそのためにジャンカ国の文字の研究がこの国の学者でされていないってことか。
あるいは、研究しても読めるのは薬の文献だけ。面白くなかったのかな。」
「じゃあ、私が挑戦してはダメですか?
医師でも薬師でも学者でもないですけど、もし目の薬があるかもしれないのなら…」
医師と薬師は顔を見合わせて頷いた。
「上の者に確認してみるよ。
医師も薬師も忙しいのに、毎年挑戦しては挫折する者ばかりだからねぇ。
ちなみに、一つの国の言語なのに何故か3,4種類の文字が混ざってる。
それがより難解に感じるんだよなぁ。」
許可が出たら、次の診察の時に持ってくるよ~と言って帰って行った。
「ミーシャの興味がもう一つ増えたな。
その目が少しでも良くなる薬が見つかるとレンズが少なくなるのにな。」
「そうですね。薬が見つからなければ、レンズを改良するのはどうでしょう?」
「それもいいな。興味がまた増えた。」
薬師に文字の解読にレンズの改良。目のことばかりだけど、ちょっとワクワクするわ。
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