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しおりを挟むマーキュリーが従妹であるサドルデン伯爵令嬢に協力した理由はアイリーンだと思う。
サドルデン伯爵令嬢が僕とアイリーンが離婚することを期待したのも間違いないだろう。
例え、離婚したとしても僕と結婚できるわけでもないのに?
ただそれだけで、悪意のある噂、いや、結局はこの噂を知っているというか言っているのはサドルデン伯爵令嬢とマーキュリーの2人だけなのか?
お茶会に来ていた他の夫人や令嬢たちには噂を広げるように伝えていないのか?
アイリーンに確認できない以上、お茶会でどんな会話があったのかを知るにはやはり参加者に聞くしかないのか。
侍女長がサドルデン伯爵家であったお茶会の参加者リストを手に入れたと報告に来た。
「すごいな。よく手に入れてくれた。」
「まぁ、こっそりと。情報の物々交換みたいなものですね。
私が直接伯爵家と関わったわけではなく間に他家の侍女も入っておりますので問題ありません。」
「情報の物々交換……なんか怖いな。」
「大丈夫です。この侯爵家の不利になるような情報は絶対に渡しませんので。
ちょっとした娯楽程度のものです。」
「わかった。君たち侍女を信頼しているよ。
このリスト、なんか印があるけど?」
「ご令嬢と仲の良い方、ご令嬢の友人が誘われた方、お茶会に参加したいと望まれた方、別です。」
「思ったよりも気軽に参加できるお茶会だったんだ。
アイリーンの友人が誘われていないし、アイリーンも悩んでいたなら少人数なのかと思った。」
「おそらくですが、新婚のアイリーン様の参加を耳にした方々が伯爵家にお願いしたようです。」
「……あぁ、そういうことか。
令嬢本人か友人の誰かがアイリーンの参加をどこかで口にしたんだな。
新婚で次期侯爵夫人であるアイリーンと仲良くなりたい女性も多いだろう。
まさかそういう理由だと知らなかったか、あるいは知っていても断れなくて令嬢は許可した。」
お茶会では、主催者の伯爵令嬢よりもアイリーンに多くの視線が集まってしまったのではないだろうか。
そのことに腹を立てた令嬢が、僕たち夫婦に波風を立てる計画をマーキュリーにした。
僕たちが離婚すればマーキュリーもアイリーンに近づけることから計画に乗った。
伯爵令嬢の嫌がらせ。
アイリーンが夫であるジョルジュとの閨に不満を抱いているという噂を僕が聞き、アイリーンがそんなことを言っていないと言い訳しても僕がアイリーンを信じられずに不仲になる。とか。
僕が娼館に入る姿をアイリーンが見に行かなかったとしても、行ったという事実があるだけにアイリーンは僕が娼婦を抱いたと思い込むに違いないので離婚するだろう。とか。
新婚なのに夫が娼婦を抱くなんて、アイリーンに問題があるのではないか。とか。
夫以外の男を知るはずもないアイリーンが閨事に不満を言うということは比較できる不貞相手がいるということではないか。とか。
『アイリーンが夫との閨事に不満を抱いている』
そう吹聴するだけで、いろんな想像を抱かせることができる嫌がらせなのだ。
ただ、僕たち夫婦を別れさせるか、あるいは不仲にさせるためだけの、嫌がらせ。
それがサドルデン伯爵令嬢が望んだ目的だったのだ。
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