あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

しゃーりん

文字の大きさ
上 下
3 / 8

3.

しおりを挟む
 
 
ノックス殿下とアヴリルの婚約解消が認められた少し後、ノックス殿下とシーラ子爵令嬢は卒業したため、学園内は穏やかな空気が流れていた。

最終学年になったアヴリルは、王太子妃教育の復習や既に請け負っていた王族としての慰問や奉仕活動が無くなったことで自由な時間を得ることができるようになった。


何があっても逃げることは許されないと思っていたノックス殿下との結婚。

ずっと我慢をしていた。

一生、我慢し続けるのだと思っていた。

それが、あのパーティーで役目を終えることを許された。


アヴリルは夢かと思った。
夢でも、逃げれるものなら逃げたいと思って婚約破棄を受けた。

父が出てきた時は、勝手に了承したことを怒られるのではないかと思った。
しかし、父も同意してくれた。
しかも、たった一つの条件を出しただけで婚約破棄を婚約解消としたのだ。

婚約破棄は、した方もされた方も汚点となる。
王族は気にしないだろうが、貴族としては各家に代々記録が残るほど汚点とされる。
父は自分の代で、その汚点を残すことを嫌ったのだろう。

そう思っていた。

だが、娘が王太子妃になることを望んでいたのだと思っていた父は、そうではなかった。
家族との時間が無くなるほど勉強を詰め込まれる娘を可哀想に思い、頑張っている娘に声をかけようとしても頑張らなくていいと言ってしまいそうで何も言えなかったと父は言った。 

そうだった。

父は口数は少ないが、家族思いで涙もろい人でもあった。

対外的には無駄を嫌う冷淡公爵と言われているが。

頑張り甲斐のない相手に尽くすことにならずに済んでよかったと婚約解消はお祝いとなったのだ。 


父が出したたった一つの条件。

国王陛下はもちろん理解していた。
だが、ノックス殿下はわかっていないようだった。

王太子殿下という次期国王の地位を降ろされた意味をノックス殿下はわからなかったようだ。
シーラ子爵令嬢がどんなに教育を頑張ったところで、彼女の実家、貧乏なノンブレイン子爵家が伯爵家になれる見込みなど全くない。
彼女を養女にしてくれる高位貴族がいるなら可能性がないわけではないが、いるわけがない。

つまり、ノックス殿下は王太子の地位に返り咲くことはほぼ不可能。

それは、あのパーティーにいた高位貴族には周知の事実。


ノックス殿下は次期国王には相応しくない。

それをウィンターホール公爵である父が国王陛下に進言し、周りの貴族も異議を唱えなかったことで同意したとされ、国王陛下はそれを受けたのだ。

ノックス殿下の下には弟がいる。妹もいるのだ。

長男だからと当然のように王太子になっていたが、努力も見られず自分勝手。人の上に立つ器を持たないと判断されれば、国王陛下に進言するのも臣下の務めである。

本来ならば、高位貴族や主要部門の長の会議で提言してから国王陛下へと進言する形になるのだが、今回は一足飛びでの進言となり、国王陛下も認めた。

ノックス殿下はそのことにいつ気づくか。それはシーラ子爵令嬢の教育の進み具合によるだろう。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸せな人生を送りたいなんて贅沢は言いませんわ。ただゆっくりお昼寝くらいは自由にしたいわね

りりん
恋愛
皇帝陛下に婚約破棄された侯爵令嬢ユーリアは、その後形ばかりの側妃として召し上げられた。公務の出来ない皇妃の代わりに公務を行うだけの為に。 皇帝に愛される事もなく、話す事すらなく、寝る時間も削ってただ公務だけを熟す日々。 そしてユーリアは、たった一人執務室の中で儚くなった。 もし生まれ変われるなら、お昼寝くらいは自由に出来るものに生まれ変わりたい。そう願いながら

隣国へ留学中だった婚約者が真実の愛の君を連れて帰ってきました

れもん・檸檬・レモン?
恋愛
隣国へ留学中だった王太子殿下が帰ってきた 留学中に出会った『真実の愛』で結ばれた恋人を連れて なんでも隣国の王太子に婚約破棄された可哀想な公爵令嬢なんだそうだ

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

初めまして婚約者様

まる
恋愛
「まあ!貴方が私の婚約者でしたのね!」 緊迫する場での明るいのんびりとした声。 その言葉を聞いてある一点に非難の視線が集中する。 ○○○○○○○○○○ ※物語の背景はふんわりしています。スルッと読んでいただければ幸いです。 目を止めて読んで下さった方、お気に入り、しおりの登録ありがとう御座いました!少しでも楽しんで読んでいただけたなら幸いです(^人^)

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

処理中です...