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しおりを挟むノックス殿下とアヴリルの婚約解消が認められた少し後、ノックス殿下とシーラ子爵令嬢は卒業したため、学園内は穏やかな空気が流れていた。
最終学年になったアヴリルは、王太子妃教育の復習や既に請け負っていた王族としての慰問や奉仕活動が無くなったことで自由な時間を得ることができるようになった。
何があっても逃げることは許されないと思っていたノックス殿下との結婚。
ずっと我慢をしていた。
一生、我慢し続けるのだと思っていた。
それが、あのパーティーで役目を終えることを許された。
アヴリルは夢かと思った。
夢でも、逃げれるものなら逃げたいと思って婚約破棄を受けた。
父が出てきた時は、勝手に了承したことを怒られるのではないかと思った。
しかし、父も同意してくれた。
しかも、たった一つの条件を出しただけで婚約破棄を婚約解消としたのだ。
婚約破棄は、した方もされた方も汚点となる。
王族は気にしないだろうが、貴族としては各家に代々記録が残るほど汚点とされる。
父は自分の代で、その汚点を残すことを嫌ったのだろう。
そう思っていた。
だが、娘が王太子妃になることを望んでいたのだと思っていた父は、そうではなかった。
家族との時間が無くなるほど勉強を詰め込まれる娘を可哀想に思い、頑張っている娘に声をかけようとしても頑張らなくていいと言ってしまいそうで何も言えなかったと父は言った。
そうだった。
父は口数は少ないが、家族思いで涙もろい人でもあった。
対外的には無駄を嫌う冷淡公爵と言われているが。
頑張り甲斐のない相手に尽くすことにならずに済んでよかったと婚約解消はお祝いとなったのだ。
父が出したたった一つの条件。
国王陛下はもちろん理解していた。
だが、ノックス殿下はわかっていないようだった。
王太子殿下という次期国王の地位を降ろされた意味をノックス殿下はわからなかったようだ。
シーラ子爵令嬢がどんなに教育を頑張ったところで、彼女の実家、貧乏なノンブレイン子爵家が伯爵家になれる見込みなど全くない。
彼女を養女にしてくれる高位貴族がいるなら可能性がないわけではないが、いるわけがない。
つまり、ノックス殿下は王太子の地位に返り咲くことはほぼ不可能。
それは、あのパーティーにいた高位貴族には周知の事実。
ノックス殿下は次期国王には相応しくない。
それをウィンターホール公爵である父が国王陛下に進言し、周りの貴族も異議を唱えなかったことで同意したとされ、国王陛下はそれを受けたのだ。
ノックス殿下の下には弟がいる。妹もいるのだ。
長男だからと当然のように王太子になっていたが、努力も見られず自分勝手。人の上に立つ器を持たないと判断されれば、国王陛下に進言するのも臣下の務めである。
本来ならば、高位貴族や主要部門の長の会議で提言してから国王陛下へと進言する形になるのだが、今回は一足飛びでの進言となり、国王陛下も認めた。
ノックス殿下はそのことにいつ気づくか。それはシーラ子爵令嬢の教育の進み具合によるだろう。
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