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しおりを挟む学園では、時々わざとぶつかってくる令嬢が数人いた。
ベルーナは令嬢に詳しくない。
クラスメイトと婚約者候補の令嬢以外は、覚える気もないから。
ただ、パンジーが一緒にいる時にそれを見られ、彼女はいつの間にか数人の令嬢全てを把握した。
「わかったわ。伯爵令嬢アゼリア様の親戚の者たちね。
彼女はまだ入学していないから、バレないとでも思ったのかしら。」
「アゼリア様は敵意むき出しでしたからね。……私にはソノ気がないのに。」
「どうせなら、私やアネモネ様を狙うべきなのに。そう思わない?」
パンジーもよくわかっている。
殿下に望まれても私が望んでいないので、私に嫌がらせをしても意味がない。
アゼリアのライバルはパンジーとアネモネなのだ。
それに、このことがバレてしまった今、アゼリアは婚約者候補から外されるのではないか。
そんなことを考えていると、上から水が降ってきた。
私とパンジーはずぶ濡れ。周りの数人も被害にあった。
「そこの令嬢2人を捕まえて!」
パンジーが指示をして、花瓶を持っている令嬢を令息が囲った。
「ご、ごめんなさい。ちょっと手が滑っただけなの。」
「そうよ。わざとじゃないわ。」
「言い訳は後で聞くわ。私たちは着替えてくるから。
教師にも伝えて。空き教室にでも入れて逃げないように見張ってほしいの。」
公爵令嬢の指示に、周りはテキパキと動き始めた。
私たちは着替えることにしたが、騒ぎを聞きつけたベルーナの従者はベルーナに着替えを渡してサッサと着替えさせて、帰宅することを選んだ。
後のことは全てパンジーに任せて。
従者に横抱きにされたまま、ベルーナは後始末を任せることを詫びた。
「ごめんなさいね。お任せしてしまって。」
「いいのよ。任せて。明日はお休みかしら?」
「ええ。そうね。その予定だわ。」
ベルーナとパンジーは笑い合って別れた。
その後、パンジーの調査結果と教師の尋問により、今回の実行犯2人とベルーナに何度もぶつかった令嬢合わせて3人は処分されることになるだろう。
もちろん、指示をしたアゼリアと父親である伯爵にも処分が下される。
その処分の前に婚約者候補からも外されることになった。
自業自得である。
選ばれた5人の中で、一番格下であった伯爵家。
安定性と将来の発展を見込まれて選ばれたというのに、婚約者候補に選ばれたこの5年間の伯爵夫妻の欲が災いして、アゼリアへの教育も間違った方向へと向いてしまった結果だった。
確かに、婚約者に選ばれれば侯爵になる近道であったかもしれない。
しかし、婚約者になれなかったとしても候補に選ばれただけで国からの信頼は厚いのだ。
堅実にそのまま歩んでいれば、いずれは侯爵が見えていたということだ。
娘が王妃になる。その大きな夢を見てしまったために、伯爵でいられなくなってしまったのだから。
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