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従者と共に公爵家の屋敷へ帰ったベルーナはパンジー以外の3人の令嬢について考えていた。

 
ある令嬢は殿下にあまり興味はなさそうだった。他に好きな人ができたのかもしれない。

ある令嬢は自らを全面に押し出す気はなく、成り行きを観察しているようだった。

ある令嬢はベルーナに敵意丸出しだった。王太子妃になりたいのだろう。

ここにパンジーを加えると、ベルーナの目から見て王太子妃に相応しいのは2人。
この2人と今後について話をしてみたいと思った。

でもひとまず、明日は学園を休むことにしよう。病弱なのだから。




 
結局2日休み、教室に入るとラミレスは大げさに心配して世話を焼こうとした。


「殿下、それくらいは自分でできますのでお気遣いなく。」

「だが……わかった。」


病欠後に学園に来た時は常時こんな調子で、心が休まらない。
パンジーも呆れたようにラミレスを見ていた。



そして、ラミレスと1対1での交流の日になった。
今日は初回なので行くことにする。
気持ち的にも天候的にも行く気分ではないのだけれど……


「ようやくベルーナ嬢と2人きりで会えるね。嬉しいよ。さあ座って。疲れてないか?
 部屋は用意してあるから、いつでも休んでくれ。」


今すぐ休みたい。というか、帰りたい。
だけど、それだといつまで経っても同じことの繰り返しになる。


「殿下、お気遣いは嬉しいのですが、私としては婚約者候補から外して頂けると有難いのです。
 おわかりの通り、この体調では婚約者には相応しくありません。」

「いや、それは置いておいて、まずお互いを知ろうと……」

「置いておく話ではないと思いますが?
 失礼ですが、殿下は私の顔を見て候補に選んだと聞き及んでおります。
 殿下の婚約者に相応しいのは顔なのでしょうか?
 歳を取って衰えると不要にするのですか?
 あるいは、今、この顔が損なわれると間違いなく候補から外されますわよね?」

「い、いや。顔に傷をつけてまで候補から外れるのは止めてくれ。
 ……確かに顔で選んだ。だけど、だからこそ君のことが知りたいんだ。」

「私は、私のことを知る前に候補から外して頂きたく思っております。」

「どうして……」

「私を知ったところで、婚約者に選ばれることはないからです。
 殿下が学園で私の世話を焼こうとするように、結婚後も私の手助けをし続けるのですか?
 王太子妃、王妃、それぞれに公務も執務もございます。
 私にはそれをこなす体力がございません。
 最も望まれる後継者を産むことも難しいのです。
 そんな令嬢を誰が認めるのです?
 殿下が私を知っていってその上で婚約者に望んでも、私が望むことはありません。」

「……少し考える時間をくれないか。」

「わかりました。少し頭が痛いので失礼いたします。」


そう言ったベルーナの目には涙が零れそうになっていた。
ベルーナの従者がサッと側に寄って横抱きにして部屋を出た。

……相変わらず、素早い動きで。 


 

 

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