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しおりを挟むラミレスからのうるさいくらいの視線を感じながら授業を受けた。
授業内容については既に学習済のため、わからなくて困ることはない。
先取りで家庭教師から学んでいる高位貴族は、授業を受けなくても試験の8割は点数を取れる。
そうでなければ家庭教師の意味がない。
それでも学園に通うのは、他貴族との交流や親しくなった友人たちとの将来展望など、国を担うに相応しい若者同士の育成が望まれているからである。
なので、本来は学園の試験の順位を競うことなど、あまり意味を成さない。
頭の出来がよろしくないとあからさまにわかる順位の下の方の貴族が恥ずかしい思いをするだけだ。
貴族家それぞれに事情があるため、3年間の学園生活が負担になる場合がある。
そのために飛び級制度もある。
試験に合格さえすれば1学年あるいは2学年上に進級できるし、卒業試験に受かれば、どの時点であっても卒業したことを認定される。
数年に一度、入学資格を得てすぐに卒業試験を受けて、学園に通うことなく卒業資格を得る者もいるのだ。
パンジーとも適度に交流しながら、週末は初めての1対5での交流が王宮の庭園で行われた。
もちろん、この集まりには出席する。
候補者全員を一度に見ることができる機会なのだから。
王太子殿下はベルーナに会いたいがために、早く庭園に行こうとする。
しかし、侍従に許可されない。なぜなら、王太子殿下が先に待っているのは都合が悪いから。
5人の令嬢が揃ってから登場するものなのだ。
ラミレスがイライラしながらその時を待っている間、候補の令嬢たちが続々と集まり始めた。
始めは1歳年上の侯爵令嬢アネモネ。
続いて1歳年下の伯爵令嬢アゼリア。
続いて2歳年下の侯爵令嬢カシア。
続いて同じ年の公爵令嬢パンジーとベルーナ。歩いている時に一緒になった。
「初めまして。サーキュラ公爵家ベルーナと申します。よろしくお願いしますね。」
初顔合わせのベルーナが最初に挨拶した。
それから4人それぞれの挨拶が続き、比較的和やかに会話をしている時に王太子殿下が来た。
「やあ。みんな揃ってるね。ベルーナ嬢、挨拶を終えたかい?」
「はい。皆様、私の体調を気遣って下さって。お優しい方ばかりで嬉しいです。」
「そうか。疲れたら言ってくれ。部屋を用意しているから。」
「……お気遣いありがとうございます。」
そこからはどんな話になっても最後にはラミレスがベルーナにどう思う?どうする?どこがいい?と質問ばかりして段々と雰囲気が微妙になってきたところ、助けがやってきた。
「失礼いたします。ベルーナ様の顔色が悪いようですので、今日はこの辺りで失礼いたします。」
いつの間にか、ベルーナの目からは涙がポロポロと零れていたのだ。
体調が悪いことを言い出せなかったのだろうか。ラミレスは狼狽えた。
ベルーナの従者がベルーナを横抱きにして王太子殿下と婚約者候補たちに挨拶を済ませて去ろうとした。
「ま、待ってくれ。王宮に部屋を用意してあるから休んで行ってくれ。」
「いえ。慣れない場所よりも公爵邸の方が心に負担なくお休みいただけますので。」
そのまま軽やかに、まるでベルーナの重さを感じないかのような足取りで素早く去っていった。
王宮の使用人や護衛が動く隙も口を挟む隙も与えず、ベルーナの従者はあっという間に見えなくなった。
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