上 下
13 / 18

13.

しおりを挟む
 

ゲルツが学園に来なくなった直後からガーランド家自体も金がなくなり、影響力も何もなくなった。

それによって、学園での嫌がらせは全くなくなり、昔の母の経緯もほとんどの人が理解してくれた。

「ガーランド家って崩壊寸前だったのに帰ってくる意味あったかな?」
 
首を傾げるドーソンに、ケンドルが答えた。

「いろいろ早まったキッカケにはなったんじゃないか?
 取引先への忠告もゲルツが息子ではない疑惑もね。
 それに、ホリー嬢を助けることが一番の目的だったし。どうするんだ?連れ帰る?」 

ドーソンがホリーに向かって聞いた。

「ホリー、一緒に隣国に留学しないか?嫌がらせがなくなっても仲良くなれないだろう?」

正直言って、それを悩んでいた。
今更、『勘違いで嫌がらせしてゴメンね~』とか『指示されたから仕方がなかった』とか言われて、心から許せる気持ちにはならない。隣国かぁ。いいかも?

「向こうにも寮があるのよね?男爵令嬢の留学生ってみんなに受け入れてもらえる?」

「まぁ、あっちでも爵位で対応の差はあるだろうけど、平民もいるからひどくはない。
 不安ならいっそのこと、うちの養女になって行くか?」

「男爵令嬢から公爵令嬢だなんて振り幅広すぎて冗談でも無理よ。」

笑ってそう返事をすると、ドーソンに真面目に聞かれた。

「ホリー、隣国の貴族と政略結婚する気ある?」

へ?隣国の?

「それは両親に言われたら嫁ぐ覚悟はあるけど。男爵令嬢と隣国貴族?」

なんの旨味があるかしら?

「そう。隣国の伯爵家が手を挙げている。目的は貴重な薬草。」

ああ、なるほど。

「その伯爵家を通じて実家の薬草を融通するってこと?それって国が許すかしら?」

「叔母上が男爵家に嫁いでから、規制を緩くするように父が国に働きかけていた。
 男爵家は困っている他国があれば無償で渡したい。国は困っている他国に高く売りたい。 
 男爵家に還元する気もないのにね。
 国王が助け合えばいいと考えていても、周りは金儲けの絶好の機会と言うんだ。
 あくどいことをやっていると、男爵家が逃げるかもしれないって父が脅したらしい。」

「国を通さなくても他国と男爵家がやり取りするようになるの?」

「その辺はまだ調整が必要だけど。でも娘の嫁ぎ先の国は融通したくなるだろ?
 別にタダで融通するんじゃない。窓口になるだけだ。」

隣国は安定して薬草が供給されることを望んでいるってことね。
今までより多く育てるのはそんなに手間ではないけれど、父が許すかしら。 

「父にこの薬草の話はしてるの?」

「少し増やして送るくらいなら問題ないそうだ。結婚の話はホリーに任せるって。」

ええ?もう確認してたの?

「それって留学のことも?」

「ああ。男爵令嬢でも公爵令嬢でも好きな方で留学していいって。」

いやいや。留学のために公爵令嬢にはなれないって。
養女ってそんな簡単になれたっけ?
 
「政略結婚の相手の伯爵家は男爵令嬢でもいいの?」

「それは気にしないって。な?」

な?誰に?と思ったら、ヴィクトル様に確認していた。え?

「相手、ヴィクトルなんだけど、どう?結構仲良くなってたし、お似合いだと思うよ。」


ヴィクトル様、そんなにニコニコして私の返事を待たないで?
 

  
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

「つまらない女」を捨ててやったつもりの王子様

七辻ゆゆ
恋愛
「父上! 俺は、あんなつまらない女とは結婚できません!」 婚約は解消になった。相手側からも、王子との相性を不安視して、解消の打診が行われていたのである。 王子はまだ「選ばれなかった」ことに気づいていない。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

残念ながら、定員オーバーです!お望みなら、次期王妃の座を明け渡しますので、お好きにしてください

mios
恋愛
ここのところ、婚約者の第一王子に付き纏われている。 「ベアトリス、頼む!このとーりだ!」 大袈裟に頭を下げて、どうにか我儘を通そうとなさいますが、何度も言いますが、無理です! 男爵令嬢を側妃にすることはできません。愛妾もすでに埋まってますのよ。 どこに、捻じ込めると言うのですか! ※番外編少し長くなりそうなので、また別作品としてあげることにしました。読んでいただきありがとうございました。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

〖完結〗ご存知ないようですが、父ではなく私が侯爵です。

藍川みいな
恋愛
タイトル変更しました。 「モニカ、すまない。俺は、本物の愛を知ってしまったんだ! だから、君とは結婚出来ない!」 十七歳の誕生日、七年間婚約をしていたルーファス様に婚約を破棄されてしまった。本物の愛の相手とは、義姉のサンドラ。サンドラは、私の全てを奪っていった。 父は私を見ようともせず、義母には理不尽に殴られる。 食事は日が経って固くなったパン一つ。そんな生活が、三年間続いていた。 父はただの侯爵代理だということを、義母もサンドラも気付いていない。あと一年で、私は正式な侯爵となる。 その時、あなた達は後悔することになる。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?

宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。 そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。 婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。 彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。 婚約者を前に彼らはどうするのだろうか? 短編になる予定です。 たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます! 【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。 ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

処理中です...