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しおりを挟むゲルツが学園に来なくなった直後からガーランド家自体も金がなくなり、影響力も何もなくなった。
それによって、学園での嫌がらせは全くなくなり、昔の母の経緯もほとんどの人が理解してくれた。
「ガーランド家って崩壊寸前だったのに帰ってくる意味あったかな?」
首を傾げるドーソンに、ケンドルが答えた。
「いろいろ早まったキッカケにはなったんじゃないか?
取引先への忠告もゲルツが息子ではない疑惑もね。
それに、ホリー嬢を助けることが一番の目的だったし。どうするんだ?連れ帰る?」
ドーソンがホリーに向かって聞いた。
「ホリー、一緒に隣国に留学しないか?嫌がらせがなくなっても仲良くなれないだろう?」
正直言って、それを悩んでいた。
今更、『勘違いで嫌がらせしてゴメンね~』とか『指示されたから仕方がなかった』とか言われて、心から許せる気持ちにはならない。隣国かぁ。いいかも?
「向こうにも寮があるのよね?男爵令嬢の留学生ってみんなに受け入れてもらえる?」
「まぁ、あっちでも爵位で対応の差はあるだろうけど、平民もいるからひどくはない。
不安ならいっそのこと、うちの養女になって行くか?」
「男爵令嬢から公爵令嬢だなんて振り幅広すぎて冗談でも無理よ。」
笑ってそう返事をすると、ドーソンに真面目に聞かれた。
「ホリー、隣国の貴族と政略結婚する気ある?」
へ?隣国の?
「それは両親に言われたら嫁ぐ覚悟はあるけど。男爵令嬢と隣国貴族?」
なんの旨味があるかしら?
「そう。隣国の伯爵家が手を挙げている。目的は貴重な薬草。」
ああ、なるほど。
「その伯爵家を通じて実家の薬草を融通するってこと?それって国が許すかしら?」
「叔母上が男爵家に嫁いでから、規制を緩くするように父が国に働きかけていた。
男爵家は困っている他国があれば無償で渡したい。国は困っている他国に高く売りたい。
男爵家に還元する気もないのにね。
国王が助け合えばいいと考えていても、周りは金儲けの絶好の機会と言うんだ。
あくどいことをやっていると、男爵家が逃げるかもしれないって父が脅したらしい。」
「国を通さなくても他国と男爵家がやり取りするようになるの?」
「その辺はまだ調整が必要だけど。でも娘の嫁ぎ先の国は融通したくなるだろ?
別にタダで融通するんじゃない。窓口になるだけだ。」
隣国は安定して薬草が供給されることを望んでいるってことね。
今までより多く育てるのはそんなに手間ではないけれど、父が許すかしら。
「父にこの薬草の話はしてるの?」
「少し増やして送るくらいなら問題ないそうだ。結婚の話はホリーに任せるって。」
ええ?もう確認してたの?
「それって留学のことも?」
「ああ。男爵令嬢でも公爵令嬢でも好きな方で留学していいって。」
いやいや。留学のために公爵令嬢にはなれないって。
養女ってそんな簡単になれたっけ?
「政略結婚の相手の伯爵家は男爵令嬢でもいいの?」
「それは気にしないって。な?」
な?誰に?と思ったら、ヴィクトル様に確認していた。え?
「相手、ヴィクトルなんだけど、どう?結構仲良くなってたし、お似合いだと思うよ。」
ヴィクトル様、そんなにニコニコして私の返事を待たないで?
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