7 / 18
7.
しおりを挟む必要な荷物を寮に取りに行ってから、公爵家に向かう馬車の中でドーソンに聞いた。
「お祖父様に頼まれて帰って来たのですか?」
「いや、父上だな。学園にいる年齢の公爵家の子供が私だけだから。
ゲルツと同じ爵位の息子で、しかも上級生だ。
子供たちが学園で困っているから何とかならないかって。」
「やっぱり爵位が上の家に対しては親たちも強く出れないって困るわよね。
上が必ずしも正しい貴族とは限らないし。ガーランド家のようにね。」
「前公爵はまだマシだったそうだ。領地経営にも事業にも意欲的だった。
だから息子とホリーの母上が婚約していたんだけど、息子が愚かだったんだな。
あの婚約破棄のきっかけになった夫人との仲は破綻してるらしい。
前公爵は別の者を後継者にすべきだったのに、あれから仕事に逃げた。
2年前に体調を悪くして愚かな息子が公爵になった。
事業はガタガタらしいよ。」
「前公爵様、ご存知なのかしら。頑張ってきたのに息子が壊すなんてショックよね。
ねぇ、ゲルツよりも公爵様の方で問題はないかしら。……爵位を落とせるような。」
「爵位が下がると従う貴族も減る。か。
停学者に爵位を返上した貴族がいると言っていたな。
公爵家が何か不法なことをしなかったか調べてもらうか。」
「そうね。不満を持っている貴族が協力してくれればいいけれど。
停学になって来なくなった貴族のリストももらわないとね。」
ドーソンがいる期間は短い。時間がないので急いでアレコレする必要がある。
私の後ろにドーソンいると気づいた生徒は嫌がらせを躊躇するだろう。
今のうちに、母の汚名をそそいでいきたい。
公爵邸に到着すると、後ろからついてきていたもう一台馬車からドーソンの友人たちも降りてきた。
彼らも客人として公爵家に滞在するそうだ。
応接室でドーソンの父、公爵と挨拶を交わし、改めて隣国の方々とも自己紹介をした。
公爵令息のケンドル、ケンドルの護衛のラース、ケンドルの従弟の伯爵令息ヴィクトル。
ケンドルとヴィクトルがドーソンの留学先の同級生らしい。
ドーソンと共に長期休暇の間だけ、こちらの学園で過ごす予定みたいだけど巻き込むってこと?
「短期だからといって、学園内のゴタゴタを他国の貴族に見られるって恥だろ?
私か彼らかが教室までホリーを送り迎えするから。
おそらく、今度は男に媚びを売っていると言われるかもしれない。
だけど、これ以上身体に傷を負わせるわけにはいかないから。
ホリーは今まで何もやり返してないだろう?男爵令嬢だから我慢している。
でも、これ以上エスカレートするのはよくない。
ゲルツなら、誰かにお前を襲うように指示するかもしれないから、気をつけるんだ。」
「わかりました。」
ゲルツの言いなりになる手駒ってあとどれくらいいるのかな?
今日の水の魔術で3人減ったよね?
彼らの停学とドーソンという公爵令息の登場で、少しは我に返った生徒も多いはず。
それにしても、物語のような出来事が起こったわ。
助けてくれたのが従兄という、嬉しいけど惚れることはないという残念な結果だけど。
泥を拭ってくれたヴィクトル様と、髪と服を乾かしてくれたラースさん。
隣国の方なのが残念だなぁ。……どうせ相手にもされないだろうけどね。
優しくされたのが久しぶりで、学園で良い出会いが訪れることに憧れた数か月前を思い出したけど、自分にはありえないことだったなぁと諦めることにした。
72
お気に入りに追加
536
あなたにおすすめの小説
【完結】自称“ヒロイン”の妹によると、私の婚約者は呪われているらしい ~婚約破棄される“悪役令嬢”だと言われました!~
Rohdea
恋愛
「お姉様の婚約者のアシュヴィン様は呪われているのよ。それで、その呪いを解けるのは彼と恋に落ちる私だけなの!」
ある日、妹のリオーナが突然そんな事を言い出した。
リオーナが言うには、この世界はリオーナが“ヒロイン”と呼ばれる世界。
その姉である私、ルファナは“悪役令嬢”と呼ばれる存在で、リオーナとアシュヴィン様の恋の邪魔者らしい。
そんな私はいずれ婚約破棄をされるのだと言う。
また、アシュヴィン様はとある呪い? にかかっているらしく、
その呪いを解けるのは“ヒロイン”のリオーナだけなのだとか。
───呪い? ヒロイン? 悪役令嬢?
リオーナの言っている事の半分以上は理解が出来なかったけれど、
自分がアシュヴィン様にいつか婚約破棄されるという点だけは妙に納得が出来てしまった。
なぜなら、ルファナと婚約者のアシュヴィンは──……
※主人公は、転生者ではありません
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
【完結】このたび殿下の婚約者となった身代わりの身代わり令嬢な私は、愛されない……はずでした
Rohdea
恋愛
私はこれまで一度も会った事も無い異母姉、エリザベスの身代わり令嬢となり、殿下の婚約者となった──……
唯一の肉親だった母親を亡くした平民のライザ。
そんな時、目の前に現れたのは父親を名乗る侯爵──
どうやら、母は侯爵の愛人で私はその娘だったらしい。
今更そんな事を言われても……私はこのまま一人で平民のまま生きて行くので関係ない。
そう思ったのに、父と名乗った侯爵は私を無理やり引き取ると言う。
しかも、その目的は王太子殿下の婚約者に選ばれながらも
つい最近、失踪してしまったという異母姉のフリをさせる事だった!
そして、異母姉の身代わり令嬢として殿下の婚約者となったライザは、
初顔合わせではっきりとこれは政略結婚だと告げられる。
それもそのはずで、どうやら殿下には結ばれる事が叶わない想い人がいるらしい。
「なんと! 異母姉もその人の身代わりで婚約者に選ばれていたのね!」
──つまり、ややこしいけど私は身代わりの身代わり!
ならば、異母姉のフリをした私が殿下に愛されることはない───……はずだった。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
W職業持ちの異世界スローライフ
Nowel
ファンタジー
仕事の帰り道、トラックに轢かれた鈴木健一。
目が覚めるとそこは魂の世界だった。
橋の神様に異世界に転生か転移することを選ばせてもらい、転移することに。
転移先は森の中、神様に貰った力を使いこの森の中でスローライフを目指す。
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる