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必要な荷物を寮に取りに行ってから、公爵家に向かう馬車の中でドーソンに聞いた。

「お祖父様に頼まれて帰って来たのですか?」

「いや、父上だな。学園にいる年齢の公爵家の子供が私だけだから。
 ゲルツと同じ爵位の息子で、しかも上級生だ。
 子供たちが学園で困っているから何とかならないかって。」

「やっぱり爵位が上の家に対しては親たちも強く出れないって困るわよね。
 上が必ずしも正しい貴族とは限らないし。ガーランド家のようにね。」

「前公爵はまだマシだったそうだ。領地経営にも事業にも意欲的だった。
 だから息子とホリーの母上が婚約していたんだけど、息子が愚かだったんだな。
 あの婚約破棄のきっかけになった夫人との仲は破綻してるらしい。
 前公爵は別の者を後継者にすべきだったのに、あれから仕事に逃げた。
 2年前に体調を悪くして愚かな息子が公爵になった。
 事業はガタガタらしいよ。」

「前公爵様、ご存知なのかしら。頑張ってきたのに息子が壊すなんてショックよね。
 ねぇ、ゲルツよりも公爵様の方で問題はないかしら。……爵位を落とせるような。」

「爵位が下がると従う貴族も減る。か。
 停学者に爵位を返上した貴族がいると言っていたな。
 公爵家が何か不法なことをしなかったか調べてもらうか。」
 
「そうね。不満を持っている貴族が協力してくれればいいけれど。
 停学になって来なくなった貴族のリストももらわないとね。」

ドーソンがいる期間は短い。時間がないので急いでアレコレする必要がある。
私の後ろにドーソンいると気づいた生徒は嫌がらせを躊躇するだろう。
今のうちに、母の汚名をそそいでいきたい。
 


公爵邸に到着すると、後ろからついてきていたもう一台馬車からドーソンの友人たちも降りてきた。
彼らも客人として公爵家に滞在するそうだ。

応接室でドーソンの父、公爵と挨拶を交わし、改めて隣国の方々とも自己紹介をした。

公爵令息のケンドル、ケンドルの護衛のラース、ケンドルの従弟の伯爵令息ヴィクトル。

ケンドルとヴィクトルがドーソンの留学先の同級生らしい。

ドーソンと共に長期休暇の間だけ、こちらの学園で過ごす予定みたいだけど巻き込むってこと?


「短期だからといって、学園内のゴタゴタを他国の貴族に見られるって恥だろ?
 私か彼らかが教室までホリーを送り迎えするから。
 おそらく、今度は男に媚びを売っていると言われるかもしれない。
 だけど、これ以上身体に傷を負わせるわけにはいかないから。
 ホリーは今まで何もやり返してないだろう?男爵令嬢だから我慢している。
 でも、これ以上エスカレートするのはよくない。
 ゲルツなら、誰かにお前を襲うように指示するかもしれないから、気をつけるんだ。」

「わかりました。」

ゲルツの言いなりになる手駒ってあとどれくらいいるのかな?
今日の水の魔術で3人減ったよね?

彼らの停学とドーソンという公爵令息の登場で、少しは我に返った生徒も多いはず。



それにしても、物語のような出来事が起こったわ。
助けてくれたのが従兄という、嬉しいけど惚れることはないという残念な結果だけど。
 
泥を拭ってくれたヴィクトル様と、髪と服を乾かしてくれたラースさん。
隣国の方なのが残念だなぁ。……どうせ相手にもされないだろうけどね。

優しくされたのが久しぶりで、学園で良い出会いが訪れることに憧れた数か月前を思い出したけど、自分にはありえないことだったなぁと諦めることにした。


 
 
 
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