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学校の七不思議
異界へとつながる夜の学校
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これから話すのは、うちの学校の生徒で噂されてる七不思議についての私の体験です。
学校の七不思議と呼ばれる7つのエピソードは定番のトイレの花子さんやテケテケなど、私もどっかで聞いたことのあるような怪談話で作られているんですが、最後の7つ目の噂だけが他と比べてちょっと異質というか変わった感じの話でした。
夜になり静まり返った学校の体育館に光が灯り、別の世界に繋がってしまうポータルが開くという噂です。それをクラスメイトからはじめて聞いたとき私は思わず、アホか?って思ったんですが、逆にその話が妙に引っかかって、誰が最初に言い始めたのだろう?とか、何が元ネタになった話だろう?と思ったりして、ネットで深く広く調べて見たりしました。結果、特に似たような話はみつからなくて、どうやら7つ目の噂は我が校オリジナルの七不思議らしいとわかりました。
ある日、私はまるでこの噂に取り憑かれてしまったように、実際に自分の目で見てみようと思ったのです。学校を終えて家に帰ってから、そわそわしながら懐中電灯などを準備して夜を待ちました。再び学校に忍び込んで体育館を調べに行ったのです。
でもというかややっぱり体育館の幾つかある入り口すべてが鍵が施錠されていました。でも小さい小窓のなら、何処かの鍵を締め忘れてるんじゃないかと思い、身をかがめながら一箇所ずつ調べ回っていると、不意に後ろから野太い声がかかりました。
その日の当直だった際田先生が戸締まり確認がまだ終わってなかったようで、私の振り回す電灯の光に気づいたようです。私は適当に言い訳を並べてみましたが、生徒指導も担当である際田先生には通用せず、とにかくこっぴどく説教されて家に返されました。
次の日登校して私は再び昼休みに職員室に呼ばれて、担任と際田先生のタッグによるお説教タイムを耐えなければならなくなったのですが、それでも私の好奇心は治まりませんでした。
それからしばらくして今度は、友人のキミカに一緒に夜の学校に忍び込む計画を持ちかけました。前回のリベンジです。彼女も面白そうだと案外あっさりと承諾してくれたので、今回は抜かりなく昼の間に体育館の窓などを下調べておいて、入れそうな場所を絞りました。体育館の側面の外壁に付けられてた排水パイプを伝って上に登ればそこから手に届く二階の窓から中へと入れそうだとわかりました。そして計画時刻の当日、私は昼の間に密かにその窓の鍵を開けておいたのです。
前回より遅めに学校に来ると、真っ先に事前に決めていたポイントへ行きました。時刻はPM10時過ぎで体育館周辺は外灯が全くなく人気だけでなく電気一つない真っ暗闇でした。
「これってヤバいんじゃない?おまえホントよくやるよ」とキミカは言って、私も「何をいまさら」といって彼女にニヤリと笑いました。私はその時心霊スポット探索に行く人の気持ちを理解しました。未知への恐怖心と自分の勇気の狭間におかれた自分の意思を試されたような、とにかくわくわくしてたんです。その後起きることも知らずに。
私とキミカは、計画通り排水パイプを伝って二階に上がり、引き戸を開けて、そこに体を捻り込みました。
中に入ると、広い空間があるのがうっすらわかりますが、ほぼ真っ暗で何も見えませんでした。私は懐中電灯を持っていたので、それをつけて中を照らしました。狭い廊下をひとまず端まで言って梯子をくだって床に降りて、バスケットゴールの体育館の床に大きな半円が描かれている場所を探しました。
通常それは、ただのバスケのルールに従って書かれた幾何学的な複数の線で構成する線過ぎないはずですが、床に見える円の中に、昼には無かった奇妙な模様や文字が書かれていたのです!
「なにこれ?変なマークついてる・・・」とキミカは言って、惹きつけられうみたいに円の中に入ろうとしました。
「ちょっとまって!」と言って私はすぐに止めようとしましたが、間に合いませんでした。
彼女が円の中に入った途端、体育館に天から強烈な光が差し込みました。私はあまりの眩しさに目をつむってしまいました。まぶたの向こう側で光が消えた後に目を開けてみると、そこはもう体育館の中ではなくどこかの外の世界でした。私は森の中に居たのです。
以前に行った記憶がないまったくの見知らぬ場所で、私の知らない種類の樹木に囲まれていて、夜ではなく昼のようでしたが、空は青ではなく真っ赤に染まり、木々の葉は人工的に染めたように藍色にそまり、幹は焦げたみたいに真っ黒でした。空気はまるで空の赤さに侵食されたように普通より熱くて重息苦しい気持ちがしました。
「どこ・・・?」私はあまりの変化に追いつけず呆然とひとりそんなふうに呟いていましたが、それから続いておもいって叫びました。
「キミカ―!!」
私はそんなふうに叫びながら消えた友達を探しました。赤い空に覆われた黒い森の中を一人さまよい歩きましたが、どんなにすすんでも同じような景色が続いていて、次第に何処をどう通ったのかも分からなくなるほど歩いていきましたが、キミカの姿は見つかりませんでした。私はもはや元いた場所へ戻ることも出来ず自分が完全に迷子だとわかって、心底恐ろしさが湧いて言葉もなく呆然としていると、森の奥の方から不気味な声が聞こえてきました。
「おやおや迷子さんかな?」
「ここは楽しい世界」
「遊んであげるからおいで」
次々に聞こえて来る複数の声に恐怖でかたまりました。成人とも子供とも思える正体不明の声は、様々な方向から聞こえては消えていくのでした。
姿の見えない声の主たちはいったい何者なのだろう?どうして私を呼んでいるの?そしてキミカは何処に行ったの?私の胸の中心の声が投げかけてくるその疑問に一つも答えがわからないままあたふたするだけでした。
森の奥から聞こえてくる声は収まらず様子はなく、声は大きく野太くなり、だんだん近づいてくるようでした。
私は逃げるように走りだしました。しかしどこからか聞こえてるようで、どこからも聞こえてこないような声に囲まれながら、恐怖でこわばった神経では冷静な方向判断もできない私が行きあたりばったり進んだ先も、永遠に不気味な森がひたすら景色が続いていて、そして終いには血の色をした空、上空からも声が聞こえて来るようになりました。
「どうして逃げるの?」
「こっちに来たかったんだろ?」
「逃げないでこっちに来なよ」
不気味な赤黒い森はどれだけ走っても終わることはなく、空から聞こえる声から逃れること出来そうもなく、自分はこの異界で無力な存在であることを悟りました。それでも私は歩きまわり、走りまわりながらどれだけ時間が経ったかもわからなくなり、私は正直「もう終わりだ」と思いました。
絶望してその場に座り込みました。
「神様助けて」
私はその時、無意識に一言そう発すること以外にやれることが無くなるほど精神的に追い込まれていて覚悟を決めたように黙って目をつむりました。
すると何者が知れない追手たちの声は遠ざかり、代わりに私のすぐ近くの方からリアルな男性の声が聞こえました。
私は目を開き急いでその方を見ると、そこに光の柱のようなポータルが立って、その中に体育館の映像が浮かんでいて床に立っている際田先生の姿がみえました。そして先生は私の方を見ると驚いた様子で「お前はまたこんなとこでいったい何しているんだ?こんな夜中に!」と怒鳴りました。
次の瞬間すでにポータルは消えていて、私は森の中ではなく体育館の中で半泣きながら先生にすがり就いていました。そして起きたことを話しました。
友達のキミカと一緒に夜の学校に来たこと。体育館で不思議な模様の円を見つけたこと。キミカが円の中に入って消えてしまったこと。そして異界に迷い込んだこと。怖い声に脅かされたこと・・・・。
際田先生は私の話を聞いて呆れた様子でした。
「そんな馬鹿な話があるか。君は夢でも見てんのか?それとも嘘をついているのか?」
「本当です!嘘じゃないです!」私は信じてもらおうと、床に書かれた魔法陣のような模様やさっき見たポータルを探しましたが何処にもありません。ライトが付けられた体育館でした。。
「たしかにキミカと一緒に夜の学校に来たのかもしれんが、キミカはおとなしく途中で帰ったんじゃないのか?君は一人で体育館に入って寝ぼけていたんだろう?」際田先生は怪訝な顔でそう言いました。
「そんなわけないです!本当に見たんだってば!」
強く言っても私の話に先生は聞く耳を持ちませんでした。今になって当然だと思うのですが、私は逆らってどこか学校に居るかも知れないキミカの姿を探そうとしましたが、際田先生は強引に私を連れ出して、クルマで私の家まで送ってくれました。
家に着くと両親も心配して待っていました。先生から事情を聞いて、当然ながら両親もカンカンに怒っていてこっぴどく怒られました。
私はその夜一人で泣きながら、キミカのことを思い出しました。彼女もあの世界に行ったのだろうか?そして私と同じように異界から帰ったのかもしれない。いずれにせよ夜の体育館に誘ったことを悔やみました。とにかく無事でありますように、と祈りました。
翌日学校に行ってもキミカは登校していませんでした。担任はキミカが昨晩帰ってないといって、私に説明をしてくれと言われて、私は困惑して焦りまくりながらそれでも昨日見たことを話しました。でも私自身その前後の記憶が曖昧でした。先生たちに同じ話をしても信じてもらえない繰り返して私は精神的に一杯一杯でした。
そして疲労困憊して家に帰ると、昨晩よく寝れなかったのもあって、私はベットに横にってすぐに泥のように眠ってしまいました。そして夢の中でキミカが現れたのです。
「どうしたの?どこにいたの?」と私はキミカに尋ねました。
「あのね・・・」と言ってためらいながら口ごもったキミカは、間をおいて不思議な話を始めました。
「あの日見つけた変な円の中に入ったら、別の世界に飛ばされちゃったみたいなんだ。そこで人間以外の生き物に捕まったあとに牢獄みたいなところに連れて行かれたの。檻のある部屋で黴臭くて暗くてすごく怖いところだった・・・。でもそこにやってきた人が助けてくれたんだ!」
「人?」
「うん、その人は王子さまだったんだよ。彼は私を見つけてその檻からだしてくれて自分の城に連れて行ってくれたんだ。そこはすごく綺麗できらびやかな色んな宝石や魔法のような不思議な世界でさ、彼は私に優しくしてくれて色んなことを教えてくれたの。そしてなにより彼は私を見て恋にすぐに恋に落ちたって・・・」
「マジでいってるの?」と私は驚いて問いかけました。
「うん。そして彼は私にプロポーズしたんだよ。彼と一緒に異界で暮らさないかって」
「それで・・・キミカは?」
「彼のプロポーズを受けたの。あの日現れた不思議な円は、13年に一度しか開かないものなんだって。運命しかないでしょ?だから私は彼と一緒に異界で暮らすことにしたんだ。彼は私をとても愛してくれて私も彼を愛してるんだ」とキミカは笑顔で言いました。よく見れば彼女顔は、何年か経たあとの成人してしばらくした姿に思えました。
「もう戻ってこないの?」私はちょっと悲しくなって来て、彼女にたずねました。
「うんごめん・・・。でも、私はこっちの世界が好きになたみたい。彼との子供が生まれてこっちにはもう家族がいるんだ。彼の両親や兄弟や親戚や友だち・・・みんな本当に優しくて素敵な人たちなんだ」
「でも私だってあんたの友達でしょ?」と私は言いました。
「もちろん、あなたも私の友達だよ。だから、これからも時々会いに来るよ。あの円のようなポータルは特別な夜にだけ現れるんだって。あの日開いたのその特別なよるだったの。十三年に一度しか開かないの。でも次に訪れるその時に体育館に来ればまた私に会えるよ」
「でも13年に一度ってそれ次はわたし30歳じゃん!無理だって、そんなの・・・」
「そうだね・・・時間の過ぎるって酷いことかもね次に会っても見た目がもうお互いにわかんないかもね・・・。でもさあんたはあんたで自分の幸せを見つけてよ」
彼女は最後にそう言って、光の中に消えていきました。私が話していた相手はキミカ本人ではなく、夢の中の幻だったのですが、妙なリアリティを感じたのです。私は夢の中にも関わらず、彼女の最後の別れの言葉だと真実味を感じたのです。
それ以来キミカは失踪扱いになり警察が捜査を開始しました。生徒たちは噂しあい私はその度誰からか質問攻めにあいました。でもそれに答えることはしませんでした。誰に話しても信じることが無いことがわかっているからです。キミカも再び現れることはなく完全に消えてしまいました。その後時間の経過と共に、事件のことは人々の記憶から消えて行きましたが、私は忘れませんでした。そして今年で私は30歳になります。
彼女との約束を果たす時がやって来たのです。
学校の七不思議と呼ばれる7つのエピソードは定番のトイレの花子さんやテケテケなど、私もどっかで聞いたことのあるような怪談話で作られているんですが、最後の7つ目の噂だけが他と比べてちょっと異質というか変わった感じの話でした。
夜になり静まり返った学校の体育館に光が灯り、別の世界に繋がってしまうポータルが開くという噂です。それをクラスメイトからはじめて聞いたとき私は思わず、アホか?って思ったんですが、逆にその話が妙に引っかかって、誰が最初に言い始めたのだろう?とか、何が元ネタになった話だろう?と思ったりして、ネットで深く広く調べて見たりしました。結果、特に似たような話はみつからなくて、どうやら7つ目の噂は我が校オリジナルの七不思議らしいとわかりました。
ある日、私はまるでこの噂に取り憑かれてしまったように、実際に自分の目で見てみようと思ったのです。学校を終えて家に帰ってから、そわそわしながら懐中電灯などを準備して夜を待ちました。再び学校に忍び込んで体育館を調べに行ったのです。
でもというかややっぱり体育館の幾つかある入り口すべてが鍵が施錠されていました。でも小さい小窓のなら、何処かの鍵を締め忘れてるんじゃないかと思い、身をかがめながら一箇所ずつ調べ回っていると、不意に後ろから野太い声がかかりました。
その日の当直だった際田先生が戸締まり確認がまだ終わってなかったようで、私の振り回す電灯の光に気づいたようです。私は適当に言い訳を並べてみましたが、生徒指導も担当である際田先生には通用せず、とにかくこっぴどく説教されて家に返されました。
次の日登校して私は再び昼休みに職員室に呼ばれて、担任と際田先生のタッグによるお説教タイムを耐えなければならなくなったのですが、それでも私の好奇心は治まりませんでした。
それからしばらくして今度は、友人のキミカに一緒に夜の学校に忍び込む計画を持ちかけました。前回のリベンジです。彼女も面白そうだと案外あっさりと承諾してくれたので、今回は抜かりなく昼の間に体育館の窓などを下調べておいて、入れそうな場所を絞りました。体育館の側面の外壁に付けられてた排水パイプを伝って上に登ればそこから手に届く二階の窓から中へと入れそうだとわかりました。そして計画時刻の当日、私は昼の間に密かにその窓の鍵を開けておいたのです。
前回より遅めに学校に来ると、真っ先に事前に決めていたポイントへ行きました。時刻はPM10時過ぎで体育館周辺は外灯が全くなく人気だけでなく電気一つない真っ暗闇でした。
「これってヤバいんじゃない?おまえホントよくやるよ」とキミカは言って、私も「何をいまさら」といって彼女にニヤリと笑いました。私はその時心霊スポット探索に行く人の気持ちを理解しました。未知への恐怖心と自分の勇気の狭間におかれた自分の意思を試されたような、とにかくわくわくしてたんです。その後起きることも知らずに。
私とキミカは、計画通り排水パイプを伝って二階に上がり、引き戸を開けて、そこに体を捻り込みました。
中に入ると、広い空間があるのがうっすらわかりますが、ほぼ真っ暗で何も見えませんでした。私は懐中電灯を持っていたので、それをつけて中を照らしました。狭い廊下をひとまず端まで言って梯子をくだって床に降りて、バスケットゴールの体育館の床に大きな半円が描かれている場所を探しました。
通常それは、ただのバスケのルールに従って書かれた幾何学的な複数の線で構成する線過ぎないはずですが、床に見える円の中に、昼には無かった奇妙な模様や文字が書かれていたのです!
「なにこれ?変なマークついてる・・・」とキミカは言って、惹きつけられうみたいに円の中に入ろうとしました。
「ちょっとまって!」と言って私はすぐに止めようとしましたが、間に合いませんでした。
彼女が円の中に入った途端、体育館に天から強烈な光が差し込みました。私はあまりの眩しさに目をつむってしまいました。まぶたの向こう側で光が消えた後に目を開けてみると、そこはもう体育館の中ではなくどこかの外の世界でした。私は森の中に居たのです。
以前に行った記憶がないまったくの見知らぬ場所で、私の知らない種類の樹木に囲まれていて、夜ではなく昼のようでしたが、空は青ではなく真っ赤に染まり、木々の葉は人工的に染めたように藍色にそまり、幹は焦げたみたいに真っ黒でした。空気はまるで空の赤さに侵食されたように普通より熱くて重息苦しい気持ちがしました。
「どこ・・・?」私はあまりの変化に追いつけず呆然とひとりそんなふうに呟いていましたが、それから続いておもいって叫びました。
「キミカ―!!」
私はそんなふうに叫びながら消えた友達を探しました。赤い空に覆われた黒い森の中を一人さまよい歩きましたが、どんなにすすんでも同じような景色が続いていて、次第に何処をどう通ったのかも分からなくなるほど歩いていきましたが、キミカの姿は見つかりませんでした。私はもはや元いた場所へ戻ることも出来ず自分が完全に迷子だとわかって、心底恐ろしさが湧いて言葉もなく呆然としていると、森の奥の方から不気味な声が聞こえてきました。
「おやおや迷子さんかな?」
「ここは楽しい世界」
「遊んであげるからおいで」
次々に聞こえて来る複数の声に恐怖でかたまりました。成人とも子供とも思える正体不明の声は、様々な方向から聞こえては消えていくのでした。
姿の見えない声の主たちはいったい何者なのだろう?どうして私を呼んでいるの?そしてキミカは何処に行ったの?私の胸の中心の声が投げかけてくるその疑問に一つも答えがわからないままあたふたするだけでした。
森の奥から聞こえてくる声は収まらず様子はなく、声は大きく野太くなり、だんだん近づいてくるようでした。
私は逃げるように走りだしました。しかしどこからか聞こえてるようで、どこからも聞こえてこないような声に囲まれながら、恐怖でこわばった神経では冷静な方向判断もできない私が行きあたりばったり進んだ先も、永遠に不気味な森がひたすら景色が続いていて、そして終いには血の色をした空、上空からも声が聞こえて来るようになりました。
「どうして逃げるの?」
「こっちに来たかったんだろ?」
「逃げないでこっちに来なよ」
不気味な赤黒い森はどれだけ走っても終わることはなく、空から聞こえる声から逃れること出来そうもなく、自分はこの異界で無力な存在であることを悟りました。それでも私は歩きまわり、走りまわりながらどれだけ時間が経ったかもわからなくなり、私は正直「もう終わりだ」と思いました。
絶望してその場に座り込みました。
「神様助けて」
私はその時、無意識に一言そう発すること以外にやれることが無くなるほど精神的に追い込まれていて覚悟を決めたように黙って目をつむりました。
すると何者が知れない追手たちの声は遠ざかり、代わりに私のすぐ近くの方からリアルな男性の声が聞こえました。
私は目を開き急いでその方を見ると、そこに光の柱のようなポータルが立って、その中に体育館の映像が浮かんでいて床に立っている際田先生の姿がみえました。そして先生は私の方を見ると驚いた様子で「お前はまたこんなとこでいったい何しているんだ?こんな夜中に!」と怒鳴りました。
次の瞬間すでにポータルは消えていて、私は森の中ではなく体育館の中で半泣きながら先生にすがり就いていました。そして起きたことを話しました。
友達のキミカと一緒に夜の学校に来たこと。体育館で不思議な模様の円を見つけたこと。キミカが円の中に入って消えてしまったこと。そして異界に迷い込んだこと。怖い声に脅かされたこと・・・・。
際田先生は私の話を聞いて呆れた様子でした。
「そんな馬鹿な話があるか。君は夢でも見てんのか?それとも嘘をついているのか?」
「本当です!嘘じゃないです!」私は信じてもらおうと、床に書かれた魔法陣のような模様やさっき見たポータルを探しましたが何処にもありません。ライトが付けられた体育館でした。。
「たしかにキミカと一緒に夜の学校に来たのかもしれんが、キミカはおとなしく途中で帰ったんじゃないのか?君は一人で体育館に入って寝ぼけていたんだろう?」際田先生は怪訝な顔でそう言いました。
「そんなわけないです!本当に見たんだってば!」
強く言っても私の話に先生は聞く耳を持ちませんでした。今になって当然だと思うのですが、私は逆らってどこか学校に居るかも知れないキミカの姿を探そうとしましたが、際田先生は強引に私を連れ出して、クルマで私の家まで送ってくれました。
家に着くと両親も心配して待っていました。先生から事情を聞いて、当然ながら両親もカンカンに怒っていてこっぴどく怒られました。
私はその夜一人で泣きながら、キミカのことを思い出しました。彼女もあの世界に行ったのだろうか?そして私と同じように異界から帰ったのかもしれない。いずれにせよ夜の体育館に誘ったことを悔やみました。とにかく無事でありますように、と祈りました。
翌日学校に行ってもキミカは登校していませんでした。担任はキミカが昨晩帰ってないといって、私に説明をしてくれと言われて、私は困惑して焦りまくりながらそれでも昨日見たことを話しました。でも私自身その前後の記憶が曖昧でした。先生たちに同じ話をしても信じてもらえない繰り返して私は精神的に一杯一杯でした。
そして疲労困憊して家に帰ると、昨晩よく寝れなかったのもあって、私はベットに横にってすぐに泥のように眠ってしまいました。そして夢の中でキミカが現れたのです。
「どうしたの?どこにいたの?」と私はキミカに尋ねました。
「あのね・・・」と言ってためらいながら口ごもったキミカは、間をおいて不思議な話を始めました。
「あの日見つけた変な円の中に入ったら、別の世界に飛ばされちゃったみたいなんだ。そこで人間以外の生き物に捕まったあとに牢獄みたいなところに連れて行かれたの。檻のある部屋で黴臭くて暗くてすごく怖いところだった・・・。でもそこにやってきた人が助けてくれたんだ!」
「人?」
「うん、その人は王子さまだったんだよ。彼は私を見つけてその檻からだしてくれて自分の城に連れて行ってくれたんだ。そこはすごく綺麗できらびやかな色んな宝石や魔法のような不思議な世界でさ、彼は私に優しくしてくれて色んなことを教えてくれたの。そしてなにより彼は私を見て恋にすぐに恋に落ちたって・・・」
「マジでいってるの?」と私は驚いて問いかけました。
「うん。そして彼は私にプロポーズしたんだよ。彼と一緒に異界で暮らさないかって」
「それで・・・キミカは?」
「彼のプロポーズを受けたの。あの日現れた不思議な円は、13年に一度しか開かないものなんだって。運命しかないでしょ?だから私は彼と一緒に異界で暮らすことにしたんだ。彼は私をとても愛してくれて私も彼を愛してるんだ」とキミカは笑顔で言いました。よく見れば彼女顔は、何年か経たあとの成人してしばらくした姿に思えました。
「もう戻ってこないの?」私はちょっと悲しくなって来て、彼女にたずねました。
「うんごめん・・・。でも、私はこっちの世界が好きになたみたい。彼との子供が生まれてこっちにはもう家族がいるんだ。彼の両親や兄弟や親戚や友だち・・・みんな本当に優しくて素敵な人たちなんだ」
「でも私だってあんたの友達でしょ?」と私は言いました。
「もちろん、あなたも私の友達だよ。だから、これからも時々会いに来るよ。あの円のようなポータルは特別な夜にだけ現れるんだって。あの日開いたのその特別なよるだったの。十三年に一度しか開かないの。でも次に訪れるその時に体育館に来ればまた私に会えるよ」
「でも13年に一度ってそれ次はわたし30歳じゃん!無理だって、そんなの・・・」
「そうだね・・・時間の過ぎるって酷いことかもね次に会っても見た目がもうお互いにわかんないかもね・・・。でもさあんたはあんたで自分の幸せを見つけてよ」
彼女は最後にそう言って、光の中に消えていきました。私が話していた相手はキミカ本人ではなく、夢の中の幻だったのですが、妙なリアリティを感じたのです。私は夢の中にも関わらず、彼女の最後の別れの言葉だと真実味を感じたのです。
それ以来キミカは失踪扱いになり警察が捜査を開始しました。生徒たちは噂しあい私はその度誰からか質問攻めにあいました。でもそれに答えることはしませんでした。誰に話しても信じることが無いことがわかっているからです。キミカも再び現れることはなく完全に消えてしまいました。その後時間の経過と共に、事件のことは人々の記憶から消えて行きましたが、私は忘れませんでした。そして今年で私は30歳になります。
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