在るべきところへ

リエ馨

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◆在るべきところへ◇9話◇夢の話 ①

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◆在るべきところへ◇9話◇夢の話 ①


 砂竜を追い返した日の夜も、レイはどこかへ行ってしまった。
 変わらず簡素な夕食を終えると、フェレナードがインティスに話しかけてきた。

「君は、精霊の姿が見えるのかい?」
「精霊?」

 質問の意図が一瞬わからず聞き返したが、すぐに理解した。ライネのことだ。
 レイから聞いたことがあるが、普通は精霊は人の目に見えるものではないらしいのだ。

「見えない。ライネだけ」
「呼んだ?」

 どこからともなく声がしたかと思うと、もう彼女はそこにいた。
 髪の長い、全体的に空と同じような色で、ふわふわしていて、大体浮いていて、時々大きく動くと服の裾から水滴が舞う。
 実体を持たないように見えて、触れることができる。気付くといつの間にかいなくなっている、不思議な存在だ。

「人の形をしてるのは初めて見たものだから……見ようと思って見られるものではないからね」
「からくりは秘密よ。見えてた方が色々便利でしょ?」
「まあ……」

 ライネがさり気なく仕組みから話を逸らせようとしていると思い、フェレナードはそれに従うことにした。

「そういえば、幼なじみって言ってたあの女の子も相当な力を持ってたみたいだけど、あそこはそういう素質の人が多い村?」
「素質? ……いや、普通の村」
「君は?」
「俺? 俺も別に普通」
「うーん……」

 微妙に話が噛み合っていない気がして、フェレナードは腕を組んで唸った。いや、もしかしたら普通の基準が違うのかもしれない。

「君とライネさんとは……」
「ライネでいいわ」
「ありがとう。ライネとは、どういう契約をしてるの?」
「契約?」

 インティスは全く身に覚えのない質問にきょとんとした。
 ライネが代わりに説明する。

「あたしたちは契約なんてしてないわ。気が合うから一緒にいるだけよ」
「うん、そう」

 インティスが頷く。

「うーん……」

 フェレナードは唸るしかなかった。

 精霊と契約なしで行動するなんて聞いたことがない。
 普通であれば、彼らについて文献などで知識を深め、彼らが存在する自然の中に身を置いて、少しずつその力を肌で感じることで、彼らに自分を認知してもらう。そうすれば契約できるようになり、初めて精霊を側に置いたり、彼らの力を借りて魔法を使うことができるのだ。

 それらの過程を全て飛ばして、二人は一緒にいる。不思議な関係だなとフェレナードは思った。


    ◇
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