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第一章 ダンジョン脱出編
14、元王子、女王に謁見する。
しおりを挟むジークフリードは王の間へと繋がる“蛇の廊下”とよばれる廊下を歩いていた。
その廊下の壁の左右には蛇の姿をかたどった金細工が貼りつけられ、それが王の間へと伸びていた。
この時代、蛇は神へ近づくことのできる唯一の動物と考えられていた。
手もなく、足もなく、ほとんど音もさせずに獲物に近づくことができる動物だからである。
そんな動物でなくては、神の姿を目にすることなどできない、と考えられていたのだ。
つまり、この廊下は、神を目にするために歩く廊下。
これは、王の間に待ち構えているものこそが、この世の神である……、そういう潜在意識をこの廊下を歩くものに植え付けるための廊下であった。
生まれてからもう何百回も往復したこの廊下をジークフリードは美しい一輪の薔薇を携え歩いている。
奪われたものを取り返さなければならないからだ。
廊下の終わりには王を守るように衛兵が二人配置され、王の間に通じる唯一の扉を守っていた。
衛兵の二人は、ジークフリードの顔を見るなり苦い顔をして目を伏せた。ジークフリードは二人に話しかける。
「ビッグス、ウェッジ。相も変わらずお前たちはこの門を守っているのだな。この裏切り者が」
「殿下……」と衛兵の片方(ビックス)が言った。「我々は王を守る盾“キングスガード”でございます。今の王を守るのが我らの仕事」
「父上を守るのがそなたらの仕事であった。それを王が変わればほいほいとついてゆくとはな……、犬でさえ与えられた恩を三年は忘れぬというが……、そのほうらは犬以下であるな」
「「……」」
「まぁよい。女王陛下に伝えよ。このジークフリード=ミッドランドが謁見を希望している、と」
「殿下……、陛下から参内の命があったのでございますか?」
「無ければどうだというのだ。このジークフリードが謁見を希望しているのだ。愛しの陛下にな。このジークフリードが地上でただ一人愛する女性に会いたいと願うのはそれほどおかしなことか?」
普段のジークフリードの女性関係の激しさを知っているビッグスとウェッジが困惑顔で目を合わせる。
「キャロラインに伝えよ! このジークフリードが逢いたいと願っている、とな」
すると、戸惑うビッグスとウェッジの後ろ……つまり、扉の奥から凛とした声が聞こえてきた。
「聞こえているわジーク。ビッグス、ウェッジ。彼を中にお通ししなさい」
「「はっ、女王陛下」」
ビッグスとウェッジの手により、王の間に通じる唯一の扉“王の扉”が二つに割れゆっくり開かれてゆく。
その奥には金色に光る獅子の肘掛けに肘を乗せ、玉座に座る女王キャロラインがいた。キャロラインのその頭上には金色に光る冠が乗せられていた。
金髪の貴公子ジークフリードはキャロラインに跪いた。
しかし、その目は獲物を狙うような目でキャロラインを見据える。
そんなジークフリードにキャロラインは微笑みかけた。
「よく来たわねジーク。わたくしもちょうどあなたに話があったところなの」
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