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第一章 スチュワート編(一年)
第23話 授業参観
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学園社交界から一ヶ月、私に対して若干脅え気味だったココリナちゃんとカトレアさんであったが、日にちが経過するにつれようやく普段通りに戻ってきたある日、私にとっては初めてとなる授業参観が告知された。
「ねぇ、この授業参観って一体何する授業なの?」
「えっ、アリスちゃん、授業参観を知らないの?」
いつも通りの昼食タイム、今朝のホームルームで配られた一枚の紙を見ながら私が放った一言に全員が反応する。
「初等部の時になかった? 私たちの授業を見に両親達が……あっ」
ココリナちゃんが途中まで説明してくれるも、私の両親の事を思い出したのか、口元を両手で押さえながら申し訳なさそうな視線をこちらに送ってくる。
「ごめん、アリスちゃん。そうだよね、そうやって悲しみを乗り越えてきたんだもんね、うん、知らなくて当然だよ。私、うっかりしちゃってた。ぐすん」
何やら壮大に勘違いをされている気がするが、本人の中では納得がいったのか、私を抱きしめながらうっすら涙まで浮かべてしまっている。
「ココリナさん、多分誤解されていると思いますよ?」
少し困った様子でリリアナさんがフォローに入る。
リリアナさんにすれば私が亡くなった両親の事で悲しんでいない事は、エスニア様から多少なりとは聞いているだろうし、昔一緒に遊んだ様子を少し思い出せば、寂しい思いをしていない事も分かってくれるだろう。
「ぐすん、誤解……ですか?」
若干目頭を赤くさせながら、リリアナさんの言葉に耳を傾けるココリナちゃん。
「はい。アリスさんって初等部はどこの学校にも通われていない……ですよね?」
「うん、通ってないよ」
確か自己紹介の時に、学校に通うのはこのスチュワートが初めてと言った気がするが、ココリナちゃん達試験組からすれば、初等部に通っているのは至極当然の事なのだろう。生憎私はそれ以前から家庭教師の先生から教わっていたので、初等部があると言われる学校には通った事がない。
「……えっと、アリスちゃんってこのスチュワートが初めての学校?」
「うん、自己紹介の時に言ってなかった?」
ココリナちゃんは少し考えるような素振りをし。
「パフィオさんも当然……ここが初めてだよね?」
「えっ!? あ、はい、そうですが……」
突然話を振られ慌てて返事をするパフィオさん。若干ココリナちゃんが放つオーラに怯えている。
「まさかとは思いますが、リリアナさんは……」
「す、すみません。実は私もこの学園が初めてで……」
何故か申し訳なさそうにしながら、言い淀んでしまうリリアナさん。
以前エスニア様の両親である公爵様からも、娘のように大事にされていると聞いているので、恐らく私と同じように特別に家庭教師の先生にでも教わっていたのだろう。
「……カトレアさん、実は自分も貴族だとかは言い出しませんよね?」
残るカトレアさんに救いを求めて一人ココリナちゃんが縋っていく。
「いいません、いいません。ココリナさんこそ実は王女様でしたとか言わないでくださいよ」
「言わないよ、ていうか、ここスチュワートだよね! 今更だけど何この有りえない顔ぶれは、何か私達の方がここにいちゃおかしい気がしてきたよ!」
ココリナちゃんの迫力に私を含む三人が申し訳なさそうにお互いを見つめ合うも、ガシッっとお互い抱き合いながら友情を確かめ合う目の前の平民シスターズ。確かに純粋に平民街で育ったのはこの二人だけだからね。
「もう、アリスちゃんはともかく、他の二人もおかしいでしょ!」
逆ギレとも取れるココリナちゃんの発言に思わずリリアナさんは謝罪をされ、パフィオさんは小さく「これでも伯爵家の娘……」と言いかけて同じく謝罪の言葉を口にする。
「あのー、何で私は……いえ、何でもないです」
一人抗議しようとするも、ココリナちゃんの一睨みでリリアナさん達と同じく萎縮する。
前々から免疫力が強いとは思っていたが、ミリィやお義兄様、挙げ句の果てにはルテアちゃんやジークといった人物達と出会い、すっかり無敵モードになってしまった気が……。
「それで……そのー」
ココリナちゃんがようやく落ち着いたタイミングで再び切り出す私。
結局ココリナちゃんの暴走(?)で教えてもらえなかった為、授業参観が一体なんなのかは未だによく分かっていない。
「ん~、えっとね」
腕を組みながらどう教えようか迷っているのだろうか、先ほど私の両親の事を言いかけて戸惑った事から、恐らく気を使われているのだろう。
「授業参観と言うのはですね、普段私たちが受けている授業を両親達に見てもらう事、なんだそうです」
言い淀むココリナちゃんに代わって教えてくれたのはリリアナさん。私と同じ中等部から通いだしているのに、持っている知識は倍以上! 少し悲しくなり、同類を求めるよう希望を込めてパフィオさんを見つめるも、どうやら既にご存知だったようで、気まずそうに視線を逸らされてしまう。
「それじゃ早い話がみんなの両親が学校に来る、って事?」
「そうです。ただご家庭の事情によってご兄姉の方が来られる場合もあるとは聞いておりますが、アリスさんの場合は……」
「うん、まず無理だよね」
リリアナさん達四人には、先月の学園社交界で私の育ての親が国王様と王妃様だと説明しているので、ある程度の事情は察してくれるだろう。
因みにイリアさんとはあれ以来何故か避けられれおり、未だに事情の説明どころかまともに会話すらも出来ていない。
「あの、アリスさんご義両親ならご相談されれば意外と喜んで来られるのではないですか?」
「ちょっ、何を言い出すんですかパフィオさん!」
パフィオさんの何気ない一言に真っ先に反応したのはカトレアさん。
ココリナちゃんは免疫力が強いけど、カトレアさんはむしろ逆の性格だからね。今でも私がミリィ達の名前を出したら若干怯える素振りを見せてくる。
「そうですね、カトレアさんの言う通り流石にそれは……」
「無理だよね」
いくら大事にして頂いているとは言っても、この教室に一国の国王様と王妃であり元聖女様を呼ぶ訳にもいかないだろう。
よくココリナちゃん達から非常識だと言われるが、お義父様達が来れば大騒ぎになる事は私だって理解出来る。それに常に公務と呼ばれているお仕事がギッシリ詰まっているのに、私事で困らせる訳にもいかない。っていうかご遠慮したい。
「ですが入学式の時も来られていたんですよね? だったら無理やりにでも予定を空けて来ようとされるのではないですか?」
「うっ」
そう言えば入学式の時は変装までして来られたんだった。しかもお義父様は来賓としての無理やりの参加……。後で聞いた話だが、警備や何やらでかなり大変だったとお義兄様が教えてくれた。
ヴィクトリアの入学式と違いスチュワートの入学式は一般の方が多いから、入場のチェックから周辺の警備などで、いつも以上の厳戒態勢が敷かれていたらしい。
「ど、どうしよう。私、何だか嫌な予感がしてきたよ」
パフィオさんの言う通り、あのお義母様達なら誰かに公務を押し付けてでも来そうな気がして不安がよぎる。
本音を言えば来てくれる事は嬉しいけれど、流石にこの授業参観は難しいだろう。変装するにも限界があるし、二人とも超が付くほどの有名人。
これで騒ぎにならずに何が騒ぎだと声を大にして言いたい気分だ。
「えっと、その、まぁ、頑張って」
「が、頑張ってくださいアリスさん! 私のためにも!」
「私の口からはなんとも……」
「わ、私の立場では何もできませんよ」
みんなに救いを求めるも、返って来た答えは軽く見放されるものばかり。
うぅ、授業参観怖いよぉ~。
こうして不安を心に抱きながら授業参観日を迎えるのだった。
そしてその授業参観当日
ミリィに相談した結果、義両親には教えない方が一番じゃない? って事になり、結局授業参観の案内が書かれた紙は見せていない。
どうやらヴィクトリア側の授業参観日はスチュワートと日程が異なっており、既に一学期の初め頃に終わっているいう。
そんな話聞いたことがないよと抗議したが、返ってきた答えが「ごめん聞かないで、私だって忘れたい事もあるのよ」と苦悶の顔で言われれば、黙って察してあげるのが友達ってものだろう。
一体何をやらかしたんですかお義母様!?
「それじゃ国おう……アリスちゃんのご義両親は来ないんだね?」
「うん、教えていないから今日は来ないよ」
ココリナちゃんが国王様といいかけて気を使ってくれたのだろう。四人にはちゃんと説明したが、クラスの全員にまでは言ってないからね。うっかり国王様なんて言葉を出したらどんな反応が返ってくるかが分からない。
「でも大丈夫なの? 仮にもお世話になっているご義両親なんだよね? 来る来ないは別として、授業参観の案内を見せなくても」
まぁ、その辺は私も気にならなかったと言えば嘘になる。
今まで育てて頂いて、本当の両親のように接してくれていた義両親だから、隠し事をすることもそうだし、私が気を使って何処か一線を引いていると思われるのも正直辛い。
私自身に血のつながりはないけれど、本当の家族だと思っているし両親達も実の娘だと思ってくれている筈だ。
「ん~、その辺りは後でちゃんと謝るつもりだよ。お義兄様に相談したらその時はフォローしてくれる言ってくれてるから、多分大丈夫じゃないかなぁ」
ここでティアお義姉様に相談しないところが私が成長した証。
もしお義姉様に相談しようものなら、聖女のお仕事を残してでもお義母様達と一緒に来ると言い出しかねない。
「まぁ、アリスちゃんが大丈夫というのならいいんだけれど……」
ココリナちゃんが何やら言い出そうとした時、マリー先生に先導されながら続々と教室の後ろ扉から入ってこられる生徒達のご両親達。その中で一段と目立つ服を着た小太りのご婦人に目が止まる。
あれ? あの人って確か入学式の時ド派手なピンクのドレスを着て目立っていた人だ。一体誰のお母さんなんだろうと教室内を見渡すも、それらしき人は……
その時私の背後で小さく「もっと地味な服でっていったじゃない」と言う唸り声が聞こえて来る。
うん、ここは何も触れないでおこう、それが友達ってもんだ。
どうやらお義父様もお義母様来られていないようなので一安心。落ち着いた気持ちで正面を見ると、私はその場で固まった。
「えっと、本日は前聖女様であり、王妃様であるフローラ・レーネス・レガリア様が見学に来られております」
困ったように目を泳がせながらマリー先生が隣に立つ女性を紹介する。
「……」
な、なにやってるんですかお義母様ぁーー!!
変装するどころかそのままの姿で来られ、あまつさえ堂々と教室に現れるなんて! っていうか、なんで今日授業参観があるって知ってるの!? 今日のことを知っているのは私とミリィ、そして生徒会長であるお義兄様だけな筈だよね!
この日、両手で頭を抱えながら苦悶している生徒が二人居たとか居なかったとか。この話はまた別の機会に。
「ねぇ、この授業参観って一体何する授業なの?」
「えっ、アリスちゃん、授業参観を知らないの?」
いつも通りの昼食タイム、今朝のホームルームで配られた一枚の紙を見ながら私が放った一言に全員が反応する。
「初等部の時になかった? 私たちの授業を見に両親達が……あっ」
ココリナちゃんが途中まで説明してくれるも、私の両親の事を思い出したのか、口元を両手で押さえながら申し訳なさそうな視線をこちらに送ってくる。
「ごめん、アリスちゃん。そうだよね、そうやって悲しみを乗り越えてきたんだもんね、うん、知らなくて当然だよ。私、うっかりしちゃってた。ぐすん」
何やら壮大に勘違いをされている気がするが、本人の中では納得がいったのか、私を抱きしめながらうっすら涙まで浮かべてしまっている。
「ココリナさん、多分誤解されていると思いますよ?」
少し困った様子でリリアナさんがフォローに入る。
リリアナさんにすれば私が亡くなった両親の事で悲しんでいない事は、エスニア様から多少なりとは聞いているだろうし、昔一緒に遊んだ様子を少し思い出せば、寂しい思いをしていない事も分かってくれるだろう。
「ぐすん、誤解……ですか?」
若干目頭を赤くさせながら、リリアナさんの言葉に耳を傾けるココリナちゃん。
「はい。アリスさんって初等部はどこの学校にも通われていない……ですよね?」
「うん、通ってないよ」
確か自己紹介の時に、学校に通うのはこのスチュワートが初めてと言った気がするが、ココリナちゃん達試験組からすれば、初等部に通っているのは至極当然の事なのだろう。生憎私はそれ以前から家庭教師の先生から教わっていたので、初等部があると言われる学校には通った事がない。
「……えっと、アリスちゃんってこのスチュワートが初めての学校?」
「うん、自己紹介の時に言ってなかった?」
ココリナちゃんは少し考えるような素振りをし。
「パフィオさんも当然……ここが初めてだよね?」
「えっ!? あ、はい、そうですが……」
突然話を振られ慌てて返事をするパフィオさん。若干ココリナちゃんが放つオーラに怯えている。
「まさかとは思いますが、リリアナさんは……」
「す、すみません。実は私もこの学園が初めてで……」
何故か申し訳なさそうにしながら、言い淀んでしまうリリアナさん。
以前エスニア様の両親である公爵様からも、娘のように大事にされていると聞いているので、恐らく私と同じように特別に家庭教師の先生にでも教わっていたのだろう。
「……カトレアさん、実は自分も貴族だとかは言い出しませんよね?」
残るカトレアさんに救いを求めて一人ココリナちゃんが縋っていく。
「いいません、いいません。ココリナさんこそ実は王女様でしたとか言わないでくださいよ」
「言わないよ、ていうか、ここスチュワートだよね! 今更だけど何この有りえない顔ぶれは、何か私達の方がここにいちゃおかしい気がしてきたよ!」
ココリナちゃんの迫力に私を含む三人が申し訳なさそうにお互いを見つめ合うも、ガシッっとお互い抱き合いながら友情を確かめ合う目の前の平民シスターズ。確かに純粋に平民街で育ったのはこの二人だけだからね。
「もう、アリスちゃんはともかく、他の二人もおかしいでしょ!」
逆ギレとも取れるココリナちゃんの発言に思わずリリアナさんは謝罪をされ、パフィオさんは小さく「これでも伯爵家の娘……」と言いかけて同じく謝罪の言葉を口にする。
「あのー、何で私は……いえ、何でもないです」
一人抗議しようとするも、ココリナちゃんの一睨みでリリアナさん達と同じく萎縮する。
前々から免疫力が強いとは思っていたが、ミリィやお義兄様、挙げ句の果てにはルテアちゃんやジークといった人物達と出会い、すっかり無敵モードになってしまった気が……。
「それで……そのー」
ココリナちゃんがようやく落ち着いたタイミングで再び切り出す私。
結局ココリナちゃんの暴走(?)で教えてもらえなかった為、授業参観が一体なんなのかは未だによく分かっていない。
「ん~、えっとね」
腕を組みながらどう教えようか迷っているのだろうか、先ほど私の両親の事を言いかけて戸惑った事から、恐らく気を使われているのだろう。
「授業参観と言うのはですね、普段私たちが受けている授業を両親達に見てもらう事、なんだそうです」
言い淀むココリナちゃんに代わって教えてくれたのはリリアナさん。私と同じ中等部から通いだしているのに、持っている知識は倍以上! 少し悲しくなり、同類を求めるよう希望を込めてパフィオさんを見つめるも、どうやら既にご存知だったようで、気まずそうに視線を逸らされてしまう。
「それじゃ早い話がみんなの両親が学校に来る、って事?」
「そうです。ただご家庭の事情によってご兄姉の方が来られる場合もあるとは聞いておりますが、アリスさんの場合は……」
「うん、まず無理だよね」
リリアナさん達四人には、先月の学園社交界で私の育ての親が国王様と王妃様だと説明しているので、ある程度の事情は察してくれるだろう。
因みにイリアさんとはあれ以来何故か避けられれおり、未だに事情の説明どころかまともに会話すらも出来ていない。
「あの、アリスさんご義両親ならご相談されれば意外と喜んで来られるのではないですか?」
「ちょっ、何を言い出すんですかパフィオさん!」
パフィオさんの何気ない一言に真っ先に反応したのはカトレアさん。
ココリナちゃんは免疫力が強いけど、カトレアさんはむしろ逆の性格だからね。今でも私がミリィ達の名前を出したら若干怯える素振りを見せてくる。
「そうですね、カトレアさんの言う通り流石にそれは……」
「無理だよね」
いくら大事にして頂いているとは言っても、この教室に一国の国王様と王妃であり元聖女様を呼ぶ訳にもいかないだろう。
よくココリナちゃん達から非常識だと言われるが、お義父様達が来れば大騒ぎになる事は私だって理解出来る。それに常に公務と呼ばれているお仕事がギッシリ詰まっているのに、私事で困らせる訳にもいかない。っていうかご遠慮したい。
「ですが入学式の時も来られていたんですよね? だったら無理やりにでも予定を空けて来ようとされるのではないですか?」
「うっ」
そう言えば入学式の時は変装までして来られたんだった。しかもお義父様は来賓としての無理やりの参加……。後で聞いた話だが、警備や何やらでかなり大変だったとお義兄様が教えてくれた。
ヴィクトリアの入学式と違いスチュワートの入学式は一般の方が多いから、入場のチェックから周辺の警備などで、いつも以上の厳戒態勢が敷かれていたらしい。
「ど、どうしよう。私、何だか嫌な予感がしてきたよ」
パフィオさんの言う通り、あのお義母様達なら誰かに公務を押し付けてでも来そうな気がして不安がよぎる。
本音を言えば来てくれる事は嬉しいけれど、流石にこの授業参観は難しいだろう。変装するにも限界があるし、二人とも超が付くほどの有名人。
これで騒ぎにならずに何が騒ぎだと声を大にして言いたい気分だ。
「えっと、その、まぁ、頑張って」
「が、頑張ってくださいアリスさん! 私のためにも!」
「私の口からはなんとも……」
「わ、私の立場では何もできませんよ」
みんなに救いを求めるも、返って来た答えは軽く見放されるものばかり。
うぅ、授業参観怖いよぉ~。
こうして不安を心に抱きながら授業参観日を迎えるのだった。
そしてその授業参観当日
ミリィに相談した結果、義両親には教えない方が一番じゃない? って事になり、結局授業参観の案内が書かれた紙は見せていない。
どうやらヴィクトリア側の授業参観日はスチュワートと日程が異なっており、既に一学期の初め頃に終わっているいう。
そんな話聞いたことがないよと抗議したが、返ってきた答えが「ごめん聞かないで、私だって忘れたい事もあるのよ」と苦悶の顔で言われれば、黙って察してあげるのが友達ってものだろう。
一体何をやらかしたんですかお義母様!?
「それじゃ国おう……アリスちゃんのご義両親は来ないんだね?」
「うん、教えていないから今日は来ないよ」
ココリナちゃんが国王様といいかけて気を使ってくれたのだろう。四人にはちゃんと説明したが、クラスの全員にまでは言ってないからね。うっかり国王様なんて言葉を出したらどんな反応が返ってくるかが分からない。
「でも大丈夫なの? 仮にもお世話になっているご義両親なんだよね? 来る来ないは別として、授業参観の案内を見せなくても」
まぁ、その辺は私も気にならなかったと言えば嘘になる。
今まで育てて頂いて、本当の両親のように接してくれていた義両親だから、隠し事をすることもそうだし、私が気を使って何処か一線を引いていると思われるのも正直辛い。
私自身に血のつながりはないけれど、本当の家族だと思っているし両親達も実の娘だと思ってくれている筈だ。
「ん~、その辺りは後でちゃんと謝るつもりだよ。お義兄様に相談したらその時はフォローしてくれる言ってくれてるから、多分大丈夫じゃないかなぁ」
ここでティアお義姉様に相談しないところが私が成長した証。
もしお義姉様に相談しようものなら、聖女のお仕事を残してでもお義母様達と一緒に来ると言い出しかねない。
「まぁ、アリスちゃんが大丈夫というのならいいんだけれど……」
ココリナちゃんが何やら言い出そうとした時、マリー先生に先導されながら続々と教室の後ろ扉から入ってこられる生徒達のご両親達。その中で一段と目立つ服を着た小太りのご婦人に目が止まる。
あれ? あの人って確か入学式の時ド派手なピンクのドレスを着て目立っていた人だ。一体誰のお母さんなんだろうと教室内を見渡すも、それらしき人は……
その時私の背後で小さく「もっと地味な服でっていったじゃない」と言う唸り声が聞こえて来る。
うん、ここは何も触れないでおこう、それが友達ってもんだ。
どうやらお義父様もお義母様来られていないようなので一安心。落ち着いた気持ちで正面を見ると、私はその場で固まった。
「えっと、本日は前聖女様であり、王妃様であるフローラ・レーネス・レガリア様が見学に来られております」
困ったように目を泳がせながらマリー先生が隣に立つ女性を紹介する。
「……」
な、なにやってるんですかお義母様ぁーー!!
変装するどころかそのままの姿で来られ、あまつさえ堂々と教室に現れるなんて! っていうか、なんで今日授業参観があるって知ってるの!? 今日のことを知っているのは私とミリィ、そして生徒会長であるお義兄様だけな筈だよね!
この日、両手で頭を抱えながら苦悶している生徒が二人居たとか居なかったとか。この話はまた別の機会に。
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