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夢のはじまり
第31話 少女の葛藤
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「何だテメェ俺らが何したって言うんだ。この店は客に対して難癖付けようって言うのかよ!」
調理場でケーキ作りをしていたら、カフェスペースの方から男性が喚き声が聞こえてきた。
「何かあったのかしら? ディオン少し様子を見てくるからここをお願いね」
先ほど聞こえた内容からしてあまり良い状況ではないわね。
私はディオンにこの場を任せてホールの方へと向かった。
「なんの騒ぎなの?」
カウンターに出ればエレンとグレイが遠巻きに見守っている。珍しいわねこの二人が止めようとしないなんて。
私も遠巻きに見てみると揉めている相手は二人組の男性、着ている服の様子から恐らく貴族。
そういう事ね、二人は執事とメイドとして教育されてきているから、自分より身分の高い者には逆らえないのだと勝手に思い、エレンが止めるのも無視して現場へと向かった。
慌ててエレンが私の後を追いかけてきたけど、これ以上私を止める様子はないようだ。
現場につくとリリアナが泣いているのが真っ先に目に入った。
「エスニア、何があったの?」
泣いて怯えているリリアナにはとても話が聞ける状態ではなさそうだ。
そのため私は庇っているエスニアに尋ねた、どいつがリリアナを泣かせたのだと。
エスニアの言葉に私は怒りでどうにかなりそうだった。『痴漢』私の大事な家族にこいつらは何て事をしてくれたのだと。
すると男の一人が私に語りかけてきた。
「あぁん、なんだ。どっかで見た顔だと思ったら婚約破棄された挙句、親父に屋敷を追い出された女じゃねぇか。 俺様を忘れた訳じゃねぇよな」
「誰よあなた」
即答だったけど別に冗談でも笑いを取っている訳じゃないのよ? 本気で知らないんだから仕方がないじゃない。
「お、お前俺を忘れた訳じゃねぇだろう!」
忘れた訳じゃねぇだろうと言われても……、そう言えば婚約がどうだとか屋敷がどうだとか言っていたわね。
学園に通っていた時に適当にフった男の誰かかしら?
自分で言うのも烏滸がましいが、これでも爵位と容姿でそれなりに告白とかされた事があるのだ。前世では一度もなかったけれど……。悔しくなんかないやいい。ぐすん。
「………………どこかで会ったかしら?」
私は十分以上に考えたけれど、どうしても思い出せない。
そもそも顔に特徴がないのよね。覚えておいて欲しかったら悪党らしくもっと特徴を作ってから話しかけるのが、筋ってもんじゃないかしら?
「お、お嬢様……」
すると見兼ねたエレンが私に耳打ちしてきた。
エレンに聞かされた話でようやくこの男の正体を知り、グレイ達の様子がおかしかった本当の理由がわかった。
なるほどね、それは手出しができない訳だ。
それにしても「あぁ、あのバカ姉の双子の弟。すっかり忘れてたわね存在自体」
おっと、つい思っていた事が口に出てしまった。
「忘れてただぁ!」
私の独り言にご丁寧に反応してくれる弟君。
あ、バカ姉のところは否定しないんだ。
「仕方がないじゃない、会ったことないでしょ?」
思っていた事を再び声にした。
だってそうでしょ? ロベリアと違い学園ではクラスが違ったし、屋敷にいる間でも食事は一緒に取っていないし、接点なんて全くなかったんだから。
「いえ、お嬢様。何度も会ってらっしゃいますよ」ぼそっ
へ? そうだったかしら?
エレンのツッコミに再び思い出そうとするもやはり思い出せない。
まぁ、言われてみれば一年間も同じ屋敷に暮らしていたんだから、すれ違ったりぐらいはしているかもしれない。でももともと眼中になかったんだから仕方ないじゃない。私悪くない。
私と弟君で言い争っているともう一人の男が割り込んできた。
そう言えばもう一人居たわね名前を聞いても覚える気がなので村人A、いや街人Aでいいや。
「とりあえずあなた邪魔。風束、氷閉」
適当に拘束魔法と、あとうるさいから口を塞いでおく。少しぐらい凍傷になってもいいわよね。
今日は学園の休みの日だから二階にエリスがいる。
酷い傷ならシロに直してもらえばいいわよね。ついでに言うならエリスが治すなんて絶対却下だから。
「それで話を戻すけどラナイス」
「ライナスだ!」
「…………コホン、話をもどすけどライナス」
ま、間違えた訳じゃないんだからね! わざと怒らせるように言っただけなんだから!
……う、上手く誤魔化せたかしら?
「あなたは私の店のスタッフに無礼を働いたんだから、覚悟はできてるんでしょうね」
気を取り直してラナイス……じゃない、ライナスに向き合う。リリアナを泣かせた罪は許せないんだから。
その後も泥棒がどうのとか貴族がどうのだとか言っていたけれど、話が全く進まないわね。
私は忙しいのよ、こんなバカの相手に時間を取っていられないわ。
「それじゃ納得した処で取り敢えず、自ら貴族を名乗るならリリアナに謝ってから潔くこの場で腹を切りなさい」
女の敵は取り敢えず死んだほうが皆んなのためになるよね。でも私の素敵な提案にエレンが注意してきた。
「お嬢様、腹を切るのは店内を血で汚してしまうので出来れば他で」
確かにそうね……偉いわエレン。さすが私の専属メイドだけあるわね。
リリアナがなんだか怯えているようだけれど大丈夫よ、すぐに片付けてあげるから。
「紫焔《しえん》」
本来の紫焔《しえん》は対象者だけを燃やす事ができるちょっぴり怖い魔法。
だけど今唱えた魔法はただの幻影魔法、いくら私でもお客様の目の前で凄惨な事は出来ないわよ。
これはただの脅し、焔に脅されて謝れば多少の同情はあるでしょ。
ライナスにも落とし所を作って上げないと可哀想だからね。
それなのにこの男は言ってはいけない一言を言ってしまった。
「勝手に決め付けるな! お前が勝手に言ってるだけだろ! そんな事誰が思ってるって言うんだ俺は貴族だぞ! 俺に逆らえばどうなる分かってるんだろな。……あぁそうか、婚約を破棄されて男に飢えてるんだろう。な、なんだったら俺が相手をしてやるぜ」
婚約云々の事は別にいい、それは私自身が招いた事だ。
問題は最後の一言、今この店にはいるのは殆どが女性で、今も私たちのやり取りを見守っている。更にこの現状なら殆どの者が私の味方だろう、恐らくライナスに殺意を覚えたのは一人や二人ではないはず。
これではますます落とし所が無くなってしまった。
私とて本気で殺す気なんてサラサラない、謝罪させて適当に追い出すつもりだったのだ。
それなのこれでは本気で……。
「それは聞き捨てならないわね」
私が一人次の手を考えあぐねいていると、一人の少女が助け舟を出してくれた。
私の方を一瞬見たとこをを見ると恐らく私の事を思って声を掛けてくれたのだろう、エリスと同じ年ぐらいなのに中々頭の切れる子のようだ。
「それに婚約を破棄されたですって? 婚約すらしていないのにどうやって破棄ができるんですか?」
だけどこの少女が放った一言が私をさらに混乱させる事になる。
『婚約すらしていないのにどうやって破棄ができるんですか?』へ? 婚約したから破棄されたんだよ? この子何言ってるのかしら?
そして止めの出来事が。
「婚約の話にしてもそっちが勝手に取り決めて進めていただけだろう? ハルジオン家は婚約の話を含め一切認めてないし当然破棄の話も持ち出していない」
ナニイッテルノこの人。 突然現れた少女の兄の一言。ちょっと待って私話に付いていけてなくね?
「なんだお前!」
「俺か? 俺はジーク・ハルジオン、ハルジオン公爵家の嫡子だ」
こ、公爵家ぇー!?
調理場でケーキ作りをしていたら、カフェスペースの方から男性が喚き声が聞こえてきた。
「何かあったのかしら? ディオン少し様子を見てくるからここをお願いね」
先ほど聞こえた内容からしてあまり良い状況ではないわね。
私はディオンにこの場を任せてホールの方へと向かった。
「なんの騒ぎなの?」
カウンターに出ればエレンとグレイが遠巻きに見守っている。珍しいわねこの二人が止めようとしないなんて。
私も遠巻きに見てみると揉めている相手は二人組の男性、着ている服の様子から恐らく貴族。
そういう事ね、二人は執事とメイドとして教育されてきているから、自分より身分の高い者には逆らえないのだと勝手に思い、エレンが止めるのも無視して現場へと向かった。
慌ててエレンが私の後を追いかけてきたけど、これ以上私を止める様子はないようだ。
現場につくとリリアナが泣いているのが真っ先に目に入った。
「エスニア、何があったの?」
泣いて怯えているリリアナにはとても話が聞ける状態ではなさそうだ。
そのため私は庇っているエスニアに尋ねた、どいつがリリアナを泣かせたのだと。
エスニアの言葉に私は怒りでどうにかなりそうだった。『痴漢』私の大事な家族にこいつらは何て事をしてくれたのだと。
すると男の一人が私に語りかけてきた。
「あぁん、なんだ。どっかで見た顔だと思ったら婚約破棄された挙句、親父に屋敷を追い出された女じゃねぇか。 俺様を忘れた訳じゃねぇよな」
「誰よあなた」
即答だったけど別に冗談でも笑いを取っている訳じゃないのよ? 本気で知らないんだから仕方がないじゃない。
「お、お前俺を忘れた訳じゃねぇだろう!」
忘れた訳じゃねぇだろうと言われても……、そう言えば婚約がどうだとか屋敷がどうだとか言っていたわね。
学園に通っていた時に適当にフった男の誰かかしら?
自分で言うのも烏滸がましいが、これでも爵位と容姿でそれなりに告白とかされた事があるのだ。前世では一度もなかったけれど……。悔しくなんかないやいい。ぐすん。
「………………どこかで会ったかしら?」
私は十分以上に考えたけれど、どうしても思い出せない。
そもそも顔に特徴がないのよね。覚えておいて欲しかったら悪党らしくもっと特徴を作ってから話しかけるのが、筋ってもんじゃないかしら?
「お、お嬢様……」
すると見兼ねたエレンが私に耳打ちしてきた。
エレンに聞かされた話でようやくこの男の正体を知り、グレイ達の様子がおかしかった本当の理由がわかった。
なるほどね、それは手出しができない訳だ。
それにしても「あぁ、あのバカ姉の双子の弟。すっかり忘れてたわね存在自体」
おっと、つい思っていた事が口に出てしまった。
「忘れてただぁ!」
私の独り言にご丁寧に反応してくれる弟君。
あ、バカ姉のところは否定しないんだ。
「仕方がないじゃない、会ったことないでしょ?」
思っていた事を再び声にした。
だってそうでしょ? ロベリアと違い学園ではクラスが違ったし、屋敷にいる間でも食事は一緒に取っていないし、接点なんて全くなかったんだから。
「いえ、お嬢様。何度も会ってらっしゃいますよ」ぼそっ
へ? そうだったかしら?
エレンのツッコミに再び思い出そうとするもやはり思い出せない。
まぁ、言われてみれば一年間も同じ屋敷に暮らしていたんだから、すれ違ったりぐらいはしているかもしれない。でももともと眼中になかったんだから仕方ないじゃない。私悪くない。
私と弟君で言い争っているともう一人の男が割り込んできた。
そう言えばもう一人居たわね名前を聞いても覚える気がなので村人A、いや街人Aでいいや。
「とりあえずあなた邪魔。風束、氷閉」
適当に拘束魔法と、あとうるさいから口を塞いでおく。少しぐらい凍傷になってもいいわよね。
今日は学園の休みの日だから二階にエリスがいる。
酷い傷ならシロに直してもらえばいいわよね。ついでに言うならエリスが治すなんて絶対却下だから。
「それで話を戻すけどラナイス」
「ライナスだ!」
「…………コホン、話をもどすけどライナス」
ま、間違えた訳じゃないんだからね! わざと怒らせるように言っただけなんだから!
……う、上手く誤魔化せたかしら?
「あなたは私の店のスタッフに無礼を働いたんだから、覚悟はできてるんでしょうね」
気を取り直してラナイス……じゃない、ライナスに向き合う。リリアナを泣かせた罪は許せないんだから。
その後も泥棒がどうのとか貴族がどうのだとか言っていたけれど、話が全く進まないわね。
私は忙しいのよ、こんなバカの相手に時間を取っていられないわ。
「それじゃ納得した処で取り敢えず、自ら貴族を名乗るならリリアナに謝ってから潔くこの場で腹を切りなさい」
女の敵は取り敢えず死んだほうが皆んなのためになるよね。でも私の素敵な提案にエレンが注意してきた。
「お嬢様、腹を切るのは店内を血で汚してしまうので出来れば他で」
確かにそうね……偉いわエレン。さすが私の専属メイドだけあるわね。
リリアナがなんだか怯えているようだけれど大丈夫よ、すぐに片付けてあげるから。
「紫焔《しえん》」
本来の紫焔《しえん》は対象者だけを燃やす事ができるちょっぴり怖い魔法。
だけど今唱えた魔法はただの幻影魔法、いくら私でもお客様の目の前で凄惨な事は出来ないわよ。
これはただの脅し、焔に脅されて謝れば多少の同情はあるでしょ。
ライナスにも落とし所を作って上げないと可哀想だからね。
それなのにこの男は言ってはいけない一言を言ってしまった。
「勝手に決め付けるな! お前が勝手に言ってるだけだろ! そんな事誰が思ってるって言うんだ俺は貴族だぞ! 俺に逆らえばどうなる分かってるんだろな。……あぁそうか、婚約を破棄されて男に飢えてるんだろう。な、なんだったら俺が相手をしてやるぜ」
婚約云々の事は別にいい、それは私自身が招いた事だ。
問題は最後の一言、今この店にはいるのは殆どが女性で、今も私たちのやり取りを見守っている。更にこの現状なら殆どの者が私の味方だろう、恐らくライナスに殺意を覚えたのは一人や二人ではないはず。
これではますます落とし所が無くなってしまった。
私とて本気で殺す気なんてサラサラない、謝罪させて適当に追い出すつもりだったのだ。
それなのこれでは本気で……。
「それは聞き捨てならないわね」
私が一人次の手を考えあぐねいていると、一人の少女が助け舟を出してくれた。
私の方を一瞬見たとこをを見ると恐らく私の事を思って声を掛けてくれたのだろう、エリスと同じ年ぐらいなのに中々頭の切れる子のようだ。
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そして止めの出来事が。
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ナニイッテルノこの人。 突然現れた少女の兄の一言。ちょっと待って私話に付いていけてなくね?
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