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木下さんと約束
そして、また雅・・・
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機嫌よく運転する如月の横でふくれっ面のあずみは、やっぱりいろいろと納得がいかない事だらけだった。
「お兄様、先ほどのお話の件ですが・・・」
「なんだったかな。」
「僕がいなければここで若い恋人と・・・と言う点で、お兄様は叔母様に否定しませんでしたよね。
それに、夕べは雅のことが好きだと・・・・」
「そうだったかな。」
「はい、たしかにそう言いました。僕の心はなぜかお兄様の言葉でズタボロです。修復不可能なほどに壊れました。今はついうっかりドーナツで釣られてしまいましたが、本当はとても怒っていて、何も喉を通らないほどです。あれはお兄様の本心なのですか。今、平然と僕の隣に座っていますが、本当は雅の隣のほうがいいと思っていますか?」
「思っているわけがないでしょう。私は君が大好きで、君のことだけしか考えてないよ。だからほかの人がいろいろ話をしてもあまり覚えていなくて・・・それで君の気分を害してしまったのなら謝罪するよ。
ごめんね。
今はこうして君との時間を楽しみたいんだ・・・だからほかの人の話はやめにしないか。」
「お兄様の言葉はほんの少しだととてもやさしく聞こえますが、いろいろ考えていると槍のように僕の心を突き刺します。僕を優しくしたり冷たく突き放したり・・・抱きしめたり・・・一体何がしたいのかわかりません。
そんなことをぐるぐる考えてばかりで、そして僕の心はぼろぼろになって苦しくて、苦しくてもう耐えられません。」
「うれしいな・・・私のことをそんなに考えていてくれたなんて。」
「いえ、それほど考えてはいません。」
「今、考えているといったじゃないか。私が言った言葉、したこと、そのことばかり考えて、そして気にかかると。」
「そうではなくて・・・」
「私は君が好きだよ。出会った時から。ただそれだけだ。」
「それは嘘だ・・・雅のこと、好きでしょ。男として・・・そこが僕にはわからないんだ・・・
僕のことが好きと言いながら目の前で平気でキスしたり・・・僕のほうがお兄様と早く出会っているのに、雅より僕のほうが先なのに、お兄様は雅を先に取ったじゃないか。」
「そうだね。それを言われると何も言えなくなってしまうな・・・」
「お兄様はずるいよ。適当にごまかして・・・適当にかわいがる。そのうち僕のことも飽きるんでしょ。」
「焼いているのかい、私と雅の事。」
「そんなんじゃありません。」
あずみは、信号待ちの車の中から飛び出して、進行方向とは逆に走り出した。如月はしばらくバックミラーであずみの姿を追いかけたが、信号が変わると車を走らせた。
追いかけてきてほしくない、追いかけられたくない。けれど追いかけてこない如月に少し腹を立てていた。一度だけ立ち止まり振り返り・・・また走り出した。行く当てなどなかった。あずみの持っているヒーローのカードはゼロ・・・木下との待ち合わせは4時。
まだ2時間とちょとある。
家に一度帰ろうか・・・
(またあの坂を登るのか・・・で、一時間くらいしたら下るんだろ・・・それもなー・・・・)
木下のバイト先に近い、大型ショッピングセンターの本屋で立ち読みでもして時間をつぶそうと思った。
そこに一歩踏み入れ、
(今まで鈴木さんなしでここへ来るなんてありえなかった。僕も一人で来れるようになった・・・・大人になったな・・・そういえば十七歳になったんだ。アレいつだっけ。ケーキ食べたっけ?なんだかごたごたしてパニックな毎日だったから誕生日も来たのか来なかったのかわからなくなったけど・・・ま、イッカ)
などと考えていた。
本屋で立ち読みをはじめかけたその時、知っている男が本屋の前を通った。
(う・・・・・雅・・・・・)
けれど、雅はそこにいるあずみのことなんてどうでもいいかのように本屋の一番前の棚に隠れるように、行きかう人を見ているようで、あずみは暇つぶしに人を見ている雅を見ていた。
ただただ、そこに立って本を一冊、手に取り1時間半ほどそこに立っていた。あずみもまた、その後ろの棚で同じように、本を1冊手に取り、雅を眺めていた。
期待とは裏腹に、何事も起きずにその時間は終わった。そして雅が出ていくと、あずみも同じように本を戻して木下のカフェに向かおうと、雅が出たところとは違う出口から店を出た。
「お兄様、先ほどのお話の件ですが・・・」
「なんだったかな。」
「僕がいなければここで若い恋人と・・・と言う点で、お兄様は叔母様に否定しませんでしたよね。
それに、夕べは雅のことが好きだと・・・・」
「そうだったかな。」
「はい、たしかにそう言いました。僕の心はなぜかお兄様の言葉でズタボロです。修復不可能なほどに壊れました。今はついうっかりドーナツで釣られてしまいましたが、本当はとても怒っていて、何も喉を通らないほどです。あれはお兄様の本心なのですか。今、平然と僕の隣に座っていますが、本当は雅の隣のほうがいいと思っていますか?」
「思っているわけがないでしょう。私は君が大好きで、君のことだけしか考えてないよ。だからほかの人がいろいろ話をしてもあまり覚えていなくて・・・それで君の気分を害してしまったのなら謝罪するよ。
ごめんね。
今はこうして君との時間を楽しみたいんだ・・・だからほかの人の話はやめにしないか。」
「お兄様の言葉はほんの少しだととてもやさしく聞こえますが、いろいろ考えていると槍のように僕の心を突き刺します。僕を優しくしたり冷たく突き放したり・・・抱きしめたり・・・一体何がしたいのかわかりません。
そんなことをぐるぐる考えてばかりで、そして僕の心はぼろぼろになって苦しくて、苦しくてもう耐えられません。」
「うれしいな・・・私のことをそんなに考えていてくれたなんて。」
「いえ、それほど考えてはいません。」
「今、考えているといったじゃないか。私が言った言葉、したこと、そのことばかり考えて、そして気にかかると。」
「そうではなくて・・・」
「私は君が好きだよ。出会った時から。ただそれだけだ。」
「それは嘘だ・・・雅のこと、好きでしょ。男として・・・そこが僕にはわからないんだ・・・
僕のことが好きと言いながら目の前で平気でキスしたり・・・僕のほうがお兄様と早く出会っているのに、雅より僕のほうが先なのに、お兄様は雅を先に取ったじゃないか。」
「そうだね。それを言われると何も言えなくなってしまうな・・・」
「お兄様はずるいよ。適当にごまかして・・・適当にかわいがる。そのうち僕のことも飽きるんでしょ。」
「焼いているのかい、私と雅の事。」
「そんなんじゃありません。」
あずみは、信号待ちの車の中から飛び出して、進行方向とは逆に走り出した。如月はしばらくバックミラーであずみの姿を追いかけたが、信号が変わると車を走らせた。
追いかけてきてほしくない、追いかけられたくない。けれど追いかけてこない如月に少し腹を立てていた。一度だけ立ち止まり振り返り・・・また走り出した。行く当てなどなかった。あずみの持っているヒーローのカードはゼロ・・・木下との待ち合わせは4時。
まだ2時間とちょとある。
家に一度帰ろうか・・・
(またあの坂を登るのか・・・で、一時間くらいしたら下るんだろ・・・それもなー・・・・)
木下のバイト先に近い、大型ショッピングセンターの本屋で立ち読みでもして時間をつぶそうと思った。
そこに一歩踏み入れ、
(今まで鈴木さんなしでここへ来るなんてありえなかった。僕も一人で来れるようになった・・・・大人になったな・・・そういえば十七歳になったんだ。アレいつだっけ。ケーキ食べたっけ?なんだかごたごたしてパニックな毎日だったから誕生日も来たのか来なかったのかわからなくなったけど・・・ま、イッカ)
などと考えていた。
本屋で立ち読みをはじめかけたその時、知っている男が本屋の前を通った。
(う・・・・・雅・・・・・)
けれど、雅はそこにいるあずみのことなんてどうでもいいかのように本屋の一番前の棚に隠れるように、行きかう人を見ているようで、あずみは暇つぶしに人を見ている雅を見ていた。
ただただ、そこに立って本を一冊、手に取り1時間半ほどそこに立っていた。あずみもまた、その後ろの棚で同じように、本を1冊手に取り、雅を眺めていた。
期待とは裏腹に、何事も起きずにその時間は終わった。そして雅が出ていくと、あずみも同じように本を戻して木下のカフェに向かおうと、雅が出たところとは違う出口から店を出た。
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