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緑山 災難続き
再会
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「お待たせ!行きましょうか雅さん。」
「うわ、あずみすごいね。カニが泡を吹いたみたいなスカートだね。」
「規夫君の感性はいまいちわかりませんね。規夫君、お味噌は冷蔵庫に入っていませんでしたか?」
「入っていたけど、今朝のお味噌汁で使ってしまったの。」
「けれど、かなりいっぱいだったはずですが・・・」
「そう?3人分作ったらなくなったけど。」
「・・・規夫君もそのお味噌汁飲みましたか?」
「うん。飲んだ。」
「辛くはなかったですか?」
「そうだな・・・山波が作ってくれるのよりは辛かったかな。」
「あれだけのお味噌を使ってちょっと・・・ですか・・・では、買い物はお味噌だけでいいのですか?」
「そのほかにいるものはメモにして雅に渡しました。なるべく早く帰って来てね。
雅にご飯作るのを手伝ってもらいたいから。」
雅とあずみは近所の一番近いスーパーへ行った。向かっている間も、買い物をしている間もあずみは雅と口をきこうとしなかった。唯一、口を開いたのは、スーパーの端っこのカフェでケーキをどれにするか選ぶときだけだった。
けれど、ここでもケーキを食べ、さらにテイクアウトしてもいいというと少し機嫌が直ってやっと口をきいてくれた。
「今日は雅さんがいてよかった。初めて雅さんがいてよかったと思いましたよ。規夫君だけだったら、僕は今日の晩御飯で確実にお腹を壊すことになっていたでしょう。」
「どういう意味・・・」
「規夫君の作るご飯は依然、激マズと言うことです。まあ、それはともかく、雅さんが僕に話って何ですか?」
「あの・・・あずみ君とキスしたことなんだけど・・・」
「お兄様には内緒で、と言いたいのですね。」
「ああ、緑山にも山波さんにも・・・」
「どうしようかな・・・僕、もう、クニさんとのことはばれちゃったし、お兄様も帰って来たし、お料理教室もなんだかこのまま終わりになっていきそうな予感がするし・・・と言うことは、僕の保険そのものがいらなくなったということになりませんか?」
「だからさ・・・あの日のことは本当にごめん。酔っていて、本当に覚えてないんだ。」
「マジか。最低だな。」
「ごめん・・・本当にごめん。」
「まあ、なるべく言わないようにはします。でも、ペロッと言ってしまったらごめんなさい。」
「あずみ君。本当、お願い。」
雅はテーブルに両手をついて頭をこすりつけ、それをあずみはとても意地悪な顔で雅を見下ろした。
「あずみ君?」
背中から、大好きで、大好きでたまらなかった声が聞こえた。
「あ・・・・」
「やっぱり、あずみ君だ。今日はまた、とてもかわいいワンピースを着ているんだね。」
「木下さん・・・・」
あずみは少し恥ずかしくなって、バッグで顔を隠して店を出て行った。
「ちょっと、待ってあずみ君。どうしたの。」
木下はあずみを追いかけ、背中を抱きしめた。
「どうしたの。この間の事怒っているの。」
「そうではありません。今日はとても変なお化粧をしています。雅さん・・・さっき一緒にいた人・・・兄の元恋人なのですが・・・あの人を困らせようとして、こんな顔で来ました。まさか、木下さんに会うなんて、思ってもみなくて・・・」
「だって、家だってそう遠くないし、そりゃあ会うよ。それより、あずみ君の携帯もつながらないし・・・嫌われたのかと思ったよ。よかった、君が逃げ出したのがそんな可愛い理由で。」
「木下さん・・・スマフォはいろいろあって・・・お兄様に隠されてしまいました・・・」
「ワンピースもかわいいね。本当に女の子みたい。いや、女の子よりずっとかわいい。今度、ワンピースでデートしてよ。」
「イヤです。木下さんとは、男の子のお友達でいたいんです。親友・・・みたいな・・・」
「そう。じゃあ、また映画行く?」
「行きます。」
「あ・・・でもどうやって連絡しよう・・・・そうだ、明日、あの通りのカフェに4時に来てくれるかな。俺、今、あそこでバイトしているんだ。」
「バイト先変えたのですね。」
「うん、ちょっといろいろあって・・・じゃあ、今日は親と買い物来ているから、また、明日ね。」
木下はあずみに手を振ってスーパーの駐車場へと向かって行った。その姿を目で追いながら小さく、かわいく手を振って送った。
そしてくるりとカフェに向きを変えると、大きなウインドウの向こうで雅がニコニコ笑いながらあずみの姿を見ていた。
「・・・げ・・・・」
やられた・・・咄嗟にあずみは思ったが、百聞は一見に如かず、見られてしまったものを今更、間違えましたとも言えず、とりあえず、食べかけのケーキをただひたすら黙々と食べ、食べ終えると静かに立ち上がり、そのまま少し早歩きで車に戻り、パタンと扉を閉めると。
「保険は有効だよね。」
と、当たり前のように雅に言われた。
「の、ようですね。」
と言い返した。
「今のが木下君。だよね。」
「そうです。家に泊まっていただこうとしたとき、誰かさんがお兄様を出張先から呼んだ、あの木下さんです。」
「彼氏?」
「どうしてそうなるのですか?お友達です。今、親友になりかけなのです。」
「親友・・・?」
「お友達がいっぱいいる雅さんには、この気持ちはきっとわからないと思います。
とにかく、木下さんとは親友になりたいんです。なれるまで、お兄様には口出ししてほしくないんです。もちろん、雅さんにも。ですから、今日、あったことは言わないでほしい・・・」
「わかった。頑張れよ。」
「はい。がんばります!」
「うわ、あずみすごいね。カニが泡を吹いたみたいなスカートだね。」
「規夫君の感性はいまいちわかりませんね。規夫君、お味噌は冷蔵庫に入っていませんでしたか?」
「入っていたけど、今朝のお味噌汁で使ってしまったの。」
「けれど、かなりいっぱいだったはずですが・・・」
「そう?3人分作ったらなくなったけど。」
「・・・規夫君もそのお味噌汁飲みましたか?」
「うん。飲んだ。」
「辛くはなかったですか?」
「そうだな・・・山波が作ってくれるのよりは辛かったかな。」
「あれだけのお味噌を使ってちょっと・・・ですか・・・では、買い物はお味噌だけでいいのですか?」
「そのほかにいるものはメモにして雅に渡しました。なるべく早く帰って来てね。
雅にご飯作るのを手伝ってもらいたいから。」
雅とあずみは近所の一番近いスーパーへ行った。向かっている間も、買い物をしている間もあずみは雅と口をきこうとしなかった。唯一、口を開いたのは、スーパーの端っこのカフェでケーキをどれにするか選ぶときだけだった。
けれど、ここでもケーキを食べ、さらにテイクアウトしてもいいというと少し機嫌が直ってやっと口をきいてくれた。
「今日は雅さんがいてよかった。初めて雅さんがいてよかったと思いましたよ。規夫君だけだったら、僕は今日の晩御飯で確実にお腹を壊すことになっていたでしょう。」
「どういう意味・・・」
「規夫君の作るご飯は依然、激マズと言うことです。まあ、それはともかく、雅さんが僕に話って何ですか?」
「あの・・・あずみ君とキスしたことなんだけど・・・」
「お兄様には内緒で、と言いたいのですね。」
「ああ、緑山にも山波さんにも・・・」
「どうしようかな・・・僕、もう、クニさんとのことはばれちゃったし、お兄様も帰って来たし、お料理教室もなんだかこのまま終わりになっていきそうな予感がするし・・・と言うことは、僕の保険そのものがいらなくなったということになりませんか?」
「だからさ・・・あの日のことは本当にごめん。酔っていて、本当に覚えてないんだ。」
「マジか。最低だな。」
「ごめん・・・本当にごめん。」
「まあ、なるべく言わないようにはします。でも、ペロッと言ってしまったらごめんなさい。」
「あずみ君。本当、お願い。」
雅はテーブルに両手をついて頭をこすりつけ、それをあずみはとても意地悪な顔で雅を見下ろした。
「あずみ君?」
背中から、大好きで、大好きでたまらなかった声が聞こえた。
「あ・・・・」
「やっぱり、あずみ君だ。今日はまた、とてもかわいいワンピースを着ているんだね。」
「木下さん・・・・」
あずみは少し恥ずかしくなって、バッグで顔を隠して店を出て行った。
「ちょっと、待ってあずみ君。どうしたの。」
木下はあずみを追いかけ、背中を抱きしめた。
「どうしたの。この間の事怒っているの。」
「そうではありません。今日はとても変なお化粧をしています。雅さん・・・さっき一緒にいた人・・・兄の元恋人なのですが・・・あの人を困らせようとして、こんな顔で来ました。まさか、木下さんに会うなんて、思ってもみなくて・・・」
「だって、家だってそう遠くないし、そりゃあ会うよ。それより、あずみ君の携帯もつながらないし・・・嫌われたのかと思ったよ。よかった、君が逃げ出したのがそんな可愛い理由で。」
「木下さん・・・スマフォはいろいろあって・・・お兄様に隠されてしまいました・・・」
「ワンピースもかわいいね。本当に女の子みたい。いや、女の子よりずっとかわいい。今度、ワンピースでデートしてよ。」
「イヤです。木下さんとは、男の子のお友達でいたいんです。親友・・・みたいな・・・」
「そう。じゃあ、また映画行く?」
「行きます。」
「あ・・・でもどうやって連絡しよう・・・・そうだ、明日、あの通りのカフェに4時に来てくれるかな。俺、今、あそこでバイトしているんだ。」
「バイト先変えたのですね。」
「うん、ちょっといろいろあって・・・じゃあ、今日は親と買い物来ているから、また、明日ね。」
木下はあずみに手を振ってスーパーの駐車場へと向かって行った。その姿を目で追いながら小さく、かわいく手を振って送った。
そしてくるりとカフェに向きを変えると、大きなウインドウの向こうで雅がニコニコ笑いながらあずみの姿を見ていた。
「・・・げ・・・・」
やられた・・・咄嗟にあずみは思ったが、百聞は一見に如かず、見られてしまったものを今更、間違えましたとも言えず、とりあえず、食べかけのケーキをただひたすら黙々と食べ、食べ終えると静かに立ち上がり、そのまま少し早歩きで車に戻り、パタンと扉を閉めると。
「保険は有効だよね。」
と、当たり前のように雅に言われた。
「の、ようですね。」
と言い返した。
「今のが木下君。だよね。」
「そうです。家に泊まっていただこうとしたとき、誰かさんがお兄様を出張先から呼んだ、あの木下さんです。」
「彼氏?」
「どうしてそうなるのですか?お友達です。今、親友になりかけなのです。」
「親友・・・?」
「お友達がいっぱいいる雅さんには、この気持ちはきっとわからないと思います。
とにかく、木下さんとは親友になりたいんです。なれるまで、お兄様には口出ししてほしくないんです。もちろん、雅さんにも。ですから、今日、あったことは言わないでほしい・・・」
「わかった。頑張れよ。」
「はい。がんばります!」
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