30 / 41
29、元勇者、一日限定大人になります。
しおりを挟む
節々が痛い。声がかすれる。アシュレイはううっと唸りながら最終的に気絶するように眠っていたようでいつの間にかベッドにいた。起き上がり下に行くと既にレイチェルが朝ご飯を用意していてアシュレイはむすっと不機嫌そうにレイチェルを見た。
「あ、おは……あー」
「……」
「ごめんなさい」
「うん、おはよう」
素直に謝ったレイチェルにアシュレイはそう挨拶をして席に着いた。またしても起きることが出来ずに朝食を作れなかったアシュレイは、どうやったらもっと早く起きれるかを思案する。とはいえ、あの行為の後はどうしてもだるくて疲れる。
そうこう悩んでいる内にレイチェルが今日の朝ご飯のホットサンドとサラダにオレンジジュース、カボチャのスープが置かれる。ついでに、ぼんやりとしているように見えたアシュレイにちゅっと触れるだけのキスをして。
「レ、レイチェル!!」
「ん?おはようのちゅう」
「ひえ……」
アシュレイは顔を真っ赤にしてそれを隠すように俯いた。
ふふっとレイチェルはそれを見て笑い、もぐもぐと食べ始める。アシュレイも落ち着いてから食べ始めて、今日の予定を聞く。
「今日って何かする予定でもある?」
「ん?んー、特には……」
「じゃあ今日こそ教会に行こう」
「うん!」
昨日の出来事は完全になかったことにしてアシュレイはそう提案する。昨日のあれは、運が悪かったとしか言いようがない。それにレイチェルを巻き込んでしまったこともあり、アシュレイはそこは反省している。これからは不用意に他人に近寄らないということを誓おう。
「あの冒険者たちに鉢合わせても面倒だから、レイチェル、何か一時的に俺を成長させるとか、顔変えるとかできない?」
「できるよ!」
「す、すごいね……」
アシュレイは適当にそう言ったのだが、レイチェルはあっさりとそう答えたので驚く。アシュレイにはそういう魔術は無駄だと切り捨てたのでそういう魔術は覚えていない。
「じゃあじゃあ、大きくするね!」
「え?い、今っ!?」
その瞬間アシュレイの体が大きくなった。大きくなったためにレイチェルのワイシャツを着ていただけの彼は下を隠す為に引っ張った。それから恥ずかしそうに涙目になりながらレイチェル!っと叫ぶ。
レイチェルはじいっとアシュレイが隠している下を見て、そっと来ていたカーディガンを膝の上にかける。違う、そうじゃないっとアシュレイはそう思ったが、レイチェルはそれから自分の服を持ってきたのでアシュレイはため息をつくだけで収まった。
レイチェルの魔術は一日で切れるらしい。つまり、24時間はこのマンであると考えていいだろう。アシュレイはレイチェルの服を身に包んで朝ご飯を食べ始める。
アシュレイはレイチェルより少し低いくらいで服は少し大きいくらいでちょうどいい。じいいっとレイチェルは成長したアシュレイを見てにこにこと笑顔を見せる。
「……レイチェル、どうしたの?」
「んーん、なんでもなーい」
レイチェルはそう言って、朝食を食べ始める。アシュレイも同じように食べ始めた。そして、アシュレイが食器洗いをして、二人でまた街に出る。
アシュレイは丸眼鏡と伸びた髪を適当に結わえ、サロペットとシャツ、ジャケットを肩に羽織っている。レイチェルは同じくシャツにカーディガン、ズボン、ストールで口元を隠し帽子を被っている。昨日の今日で外套は目立つと判断したためだ。
そんなある意味目立つ格好の二人は町に繰りだす。
すると、アシュレイは沢山の視線を感じた。ちらっと周りを見渡そうとしたがその前にレイチェルに腕を取られそちらに気を取られる。
「いきなり何?」
「別にー?」
アシュレイはレイチェルが突然腕を組んだ事に文句を言うがレイチェルはそっぽを向いている。何か拗ねているのだろうか。アシュレイはそう思ったが何が機嫌を損ねたのか分からずに、そのまま教会まで向かう。
教会に行くと、そこには人だかりができていた。アシュレイがなんだろうと思っていると、レイチェルが傍にいるご婦人達に話を聞く。
「失礼ですが、これは何かの催しが……?」
「え?ああ、あんた最近来た人たちかい?今日は勇者様のパーティーに参加していた祭司様が来ているんだよ」
「へー、そうなんですか」
「そうそう!綺麗な人でねー。ご利益もあるっていうからみーんなこぞって礼拝に来てるのよ」
「成程」
勇者パーティーで今祭司となるとリナだろうかっとアシュレイはぼんやりとそう思いながら、なぜこんなところに来ているのかと疑問がわく。一応勇者がやられたから来ているのだろうか。勇者パーティーだからってなんてことを。
アシュレイは、父親は何を考えているのだろうかっと頭を抱える。もう好きにしていいというのに、まだ勇者に縛られる人生を歩んでいるのかと思うと申し訳ないと思う。
とはいえ、ここでアシュレイがどうこうしてもどうにもならないだろう。
やれることといえば、やはりあの魔神と早めに蹴りをつけなければならない。
その為に、この教会に訪れ聞きたいことがあったのだがこの状態では無理だろう。
アシュレイはくいっとレイチェルの腕を引き、目で帰ろうと伝える。すると伝わったのかレイチェルは頷いて、その婦人にお礼を言おうとした時、閉じられていた教会の扉が開いた。
「あんたら折角来たんだから参加しなよ!」
「え、いえ僕たちは……」
「いいからいいから!」
「そうそう、こんな機会はきっとないわ。行きましょう?」
初めて来たというだけでご婦人方はレイチェルとアシュレイをぐいぐい教会の中に連れていく。というのもご婦人たちにとってはこの目の保養の二人をここで逃してなるものかっという思いが強い。この界隈の男であるとは思えないその美貌にメロメロである。
その魅力に気づいていないのはアシュレイだけで、レイチェルはというとどうだ、僕のアーシュは美人だろうとでもいうように鼻高々に僕のもの自慢をするために腕を組んで肩に頭をのせている。
一部どよめきだって気絶する者が出たおかげで今日の参拝者はいつもより若干少なかったとか。
「あ、おは……あー」
「……」
「ごめんなさい」
「うん、おはよう」
素直に謝ったレイチェルにアシュレイはそう挨拶をして席に着いた。またしても起きることが出来ずに朝食を作れなかったアシュレイは、どうやったらもっと早く起きれるかを思案する。とはいえ、あの行為の後はどうしてもだるくて疲れる。
そうこう悩んでいる内にレイチェルが今日の朝ご飯のホットサンドとサラダにオレンジジュース、カボチャのスープが置かれる。ついでに、ぼんやりとしているように見えたアシュレイにちゅっと触れるだけのキスをして。
「レ、レイチェル!!」
「ん?おはようのちゅう」
「ひえ……」
アシュレイは顔を真っ赤にしてそれを隠すように俯いた。
ふふっとレイチェルはそれを見て笑い、もぐもぐと食べ始める。アシュレイも落ち着いてから食べ始めて、今日の予定を聞く。
「今日って何かする予定でもある?」
「ん?んー、特には……」
「じゃあ今日こそ教会に行こう」
「うん!」
昨日の出来事は完全になかったことにしてアシュレイはそう提案する。昨日のあれは、運が悪かったとしか言いようがない。それにレイチェルを巻き込んでしまったこともあり、アシュレイはそこは反省している。これからは不用意に他人に近寄らないということを誓おう。
「あの冒険者たちに鉢合わせても面倒だから、レイチェル、何か一時的に俺を成長させるとか、顔変えるとかできない?」
「できるよ!」
「す、すごいね……」
アシュレイは適当にそう言ったのだが、レイチェルはあっさりとそう答えたので驚く。アシュレイにはそういう魔術は無駄だと切り捨てたのでそういう魔術は覚えていない。
「じゃあじゃあ、大きくするね!」
「え?い、今っ!?」
その瞬間アシュレイの体が大きくなった。大きくなったためにレイチェルのワイシャツを着ていただけの彼は下を隠す為に引っ張った。それから恥ずかしそうに涙目になりながらレイチェル!っと叫ぶ。
レイチェルはじいっとアシュレイが隠している下を見て、そっと来ていたカーディガンを膝の上にかける。違う、そうじゃないっとアシュレイはそう思ったが、レイチェルはそれから自分の服を持ってきたのでアシュレイはため息をつくだけで収まった。
レイチェルの魔術は一日で切れるらしい。つまり、24時間はこのマンであると考えていいだろう。アシュレイはレイチェルの服を身に包んで朝ご飯を食べ始める。
アシュレイはレイチェルより少し低いくらいで服は少し大きいくらいでちょうどいい。じいいっとレイチェルは成長したアシュレイを見てにこにこと笑顔を見せる。
「……レイチェル、どうしたの?」
「んーん、なんでもなーい」
レイチェルはそう言って、朝食を食べ始める。アシュレイも同じように食べ始めた。そして、アシュレイが食器洗いをして、二人でまた街に出る。
アシュレイは丸眼鏡と伸びた髪を適当に結わえ、サロペットとシャツ、ジャケットを肩に羽織っている。レイチェルは同じくシャツにカーディガン、ズボン、ストールで口元を隠し帽子を被っている。昨日の今日で外套は目立つと判断したためだ。
そんなある意味目立つ格好の二人は町に繰りだす。
すると、アシュレイは沢山の視線を感じた。ちらっと周りを見渡そうとしたがその前にレイチェルに腕を取られそちらに気を取られる。
「いきなり何?」
「別にー?」
アシュレイはレイチェルが突然腕を組んだ事に文句を言うがレイチェルはそっぽを向いている。何か拗ねているのだろうか。アシュレイはそう思ったが何が機嫌を損ねたのか分からずに、そのまま教会まで向かう。
教会に行くと、そこには人だかりができていた。アシュレイがなんだろうと思っていると、レイチェルが傍にいるご婦人達に話を聞く。
「失礼ですが、これは何かの催しが……?」
「え?ああ、あんた最近来た人たちかい?今日は勇者様のパーティーに参加していた祭司様が来ているんだよ」
「へー、そうなんですか」
「そうそう!綺麗な人でねー。ご利益もあるっていうからみーんなこぞって礼拝に来てるのよ」
「成程」
勇者パーティーで今祭司となるとリナだろうかっとアシュレイはぼんやりとそう思いながら、なぜこんなところに来ているのかと疑問がわく。一応勇者がやられたから来ているのだろうか。勇者パーティーだからってなんてことを。
アシュレイは、父親は何を考えているのだろうかっと頭を抱える。もう好きにしていいというのに、まだ勇者に縛られる人生を歩んでいるのかと思うと申し訳ないと思う。
とはいえ、ここでアシュレイがどうこうしてもどうにもならないだろう。
やれることといえば、やはりあの魔神と早めに蹴りをつけなければならない。
その為に、この教会に訪れ聞きたいことがあったのだがこの状態では無理だろう。
アシュレイはくいっとレイチェルの腕を引き、目で帰ろうと伝える。すると伝わったのかレイチェルは頷いて、その婦人にお礼を言おうとした時、閉じられていた教会の扉が開いた。
「あんたら折角来たんだから参加しなよ!」
「え、いえ僕たちは……」
「いいからいいから!」
「そうそう、こんな機会はきっとないわ。行きましょう?」
初めて来たというだけでご婦人方はレイチェルとアシュレイをぐいぐい教会の中に連れていく。というのもご婦人たちにとってはこの目の保養の二人をここで逃してなるものかっという思いが強い。この界隈の男であるとは思えないその美貌にメロメロである。
その魅力に気づいていないのはアシュレイだけで、レイチェルはというとどうだ、僕のアーシュは美人だろうとでもいうように鼻高々に僕のもの自慢をするために腕を組んで肩に頭をのせている。
一部どよめきだって気絶する者が出たおかげで今日の参拝者はいつもより若干少なかったとか。
0
お気に入りに追加
828
あなたにおすすめの小説
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる