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25、塔攻略?

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一行は塔に来た。そびえたつその白い塔は見上げるほど大きい。こんなに高かったのかっとアシュレイはそう思いながらレイチェルと一緒に手をつないでそこにいた。
塔の前には兵士のようなものがいて、パーティーの代表者が何か紙に書いている。なんだろうか。
アシュレイがそう思っていると手慣れたようにアランがその兵士に近寄り、紙に何かをかいた。
アシュレイはぱっとレイチェルから手を離し、アランに近寄る。


「ねーねー、お兄ちゃん。何かいてるの?」
「ん?これは塔に入る為に必要なことで誰がいるのかとかの確認の為らしい」
「ふーん?」


一応確認ぐらいはするのかっとアシュレイはそう思った。

この塔の攻略には沢山の人が攻略しているらしく、その紙には名前やパーティー名が書かれている。
やはり時間が経っているからか、結構なチームが挑んでいるようだ。

国は何もしていないのか?それともこの記録に載っていないだけ……?

アシュレイはその紙を見てそう思案しつつ、ぴとっとアランに引っ付いてじっとその紙を見ていると、ひょいっと体が浮いた。


「アーシュ……?」
「あ、お、お兄ちゃん……」


低い声でそう言ったレイチェルにアシュレイはひくっと頬をひきつらせた。フードの下からむっすぅっと不機嫌そうな顔をしたレイチェルがアシュレイからは見え、やっちまったと頭を抱える。


「よーし!じゃあ入るか!」


アランがそう言った。

アシュレイはそう意気込んで入るアランにまじでその軽装で大丈夫なの……?と心配になりつつも、この一行には特にこれと言った思い入れはないのでいざというときは見捨てようと固く誓う。

アランが先導、真ん中に女性たちしんがりにレイチェルとアシュレイという順でその塔に踏み入ると、外観を裏切らない白い空間が続いていた。そこには何もない空間に見えたがアランが足を踏み入れた瞬間床から螺旋状の階段が出てきてその最終地点に大きな扉が現れる。


「おおー!すげえな。これがダンジョン!」
「そうね!すごいわ!」
「ええ!こんな高等技術、初めてです!魔神を倒した後もこの塔は貴重な美術建造物になりますよ!」
「魔術回路も見たことがないものばかり……」


そう一行はそろって感心する。アシュレイは大丈夫かっとやはり行く末が心配になりながらも、はしゃいでいるように早く行こうよー!っとレイチェルを引っ張る。アシュレイがそう見せたために多少冷静になったのか、アイーシャとシェルがこういう。


「あら、だめですよ、隊列を乱しては」
「興奮するのも分かるがここはもう敵の手中。警戒して」


二人は先ほどの自身を省みるように優しい声であったがその後、うんうんとただ同意して頷いたロナが責め立てるように強い口調で話をする。


「そうよ!これだから何も知らない子供は……」


アシュレイは、こいつ分かってないなっと思いつつごめんさいっと形だけ謝っておく。それからアランが先陣を切って階段を上りだし、大きな扉の前に来た。先ほど下で見たよりも大きく見える。

アランはそれに手を置いて開けるぞっと目で合図をする。一行は頷いて、ゆっくりと開いていく扉を見守る。
そして少し隙間の空いた扉から中を覗くとそこはだだっ広い空間が広がっていた。おおよそ、外から見てこんな広さの部屋があるなんてありえないだろうというぐらいの規格外の広さだ。天井も高い。

アシュレイは後方からそれだけの情報を得て、大体、大量に敵が出るか、大きな敵が出るかと予想する。勇者の旅でダンジョン攻略にも貢献したアシュレイはこの手のよくある仕掛けには覚えがある。所謂階層ボスというものでそれなりに強い。

つまるところ、このメンバーじゃ太刀打ち不可である。


「おにい……」
「? 何もないじゃない?」


アシュレイが言うより先にロナが入った。一人が入った瞬間、全員がその空間の中央に強制転移された。

まさか、斥候であるロナが不用心にも中に入るとは思わずアシュレイが頭を抱える。一行は慌てふためいて一応身構えるが、既にその空間にはアシュレイたちを囲むようにスケルトン系の魔物が現れる。

アシュレイのやる気がかなり下がった。

食いもんじゃないのかという心境である。


「スケルトン!?」


ロナがそう言って動揺するが、反対にアランは指示を出す。


「アイーシャは防御壁、シェルは足止めの魔法を!ロナとアーシュ君は投擲しつつ敵の攪乱を頼む!俺とレイで減らして逃げ道を作る!」


アシュレイは、その指示に感心した。逃げるという考えがあるのは素晴らしい。中には逃げるなんてありえない!っと無謀に突っ込むやつもいるらしい。

とはいえ、その考えは素晴らしいが無知ともいえる。

この空間、既に扉は消え逃げ場はない。リスポーン限界、もしくはこの空間のボスを殺すしか方法はないのだ。

アシュレイはそう思うがこればっかりは知識があるかないかなのでしょうがない。元々彼らはそういう経験もなしにここに来たのであろうから自業自得ともいえる。この世界で生きるには経験と知識がすべて。常に死と隣り合わせで生きるか死ぬかは実力次第。考えるまでもなく、このパーティーだけで行っていたらお陀仏になっていただろう。

まあ、そんなものアシュレイがいる時点で生還必至ではあるが。


「シェルお姉ちゃん。このスケルトン全部凍らせられないの?」
「え?半分くらいならできる、けど……」
「できるよ」


シェルがそう言った矢先にレイチェルがすかさずそう言い放ち、実行する。


凍れフリーズ


レイチェルの足元から床が凍り始めスケルトンたちを氷で包み込む。そして数秒で床とスケルトンが凍ってしまった。ぽかんっとアラン達はその様を見ているがアシュレイは冷静に、氷の山から棍棒を取り出してふんっという掛け声とともに氷になったスケルトンを粉々にしていく。

この状態になってもスケルトンはまだ死んでいない。粉々にしないと彼らは死なないのだ。ここからはもう作業だ。またやってきてもその都度凍らかせて粉々にすればいい。そういうのはアシュレイにとって得意分野である。

力おし、ごり押し最高!


「お兄ちゃんたちも早く!」
「え、あ、ああ、そうだな!これだと安全だ!」


アランがはっと我に返ってそう言った。それにつられて他の三人も我に返る。


「ええ、ですが、私にはとても……」
「申し訳ない、私も、こんな氷を割れない」
「私もー」
「そうだな!じゃあ周囲の警戒を頼む!男三人でやろうぜ!」
「異論ありません」
「分かった!僕たちに任せてね!」


にっこりと愛想よく笑うアシュレイにほわんっとアイーシャとシェルはよろしくっと言いながら微笑みかけるが、ロナは本当に子供が嫌いのようでさっさとやれとばかりに手で払う。レイチェルが抜いている剣の切っ先をロナに向けようとしたのでアシュレイは慌てて鞘に入れるように言った。
そのままアシュレイと同じくスケルトンが持っていた打撃系武器を氷から取り出してアシュレイたちはひたすらに壊す。

アシュレイは元々力があったので簡単に壊れるが、他二人特にアランは中々壊れない。

え?っとアランはかんかんっと音のするまるで壊れる気配のないそれにきょとんとしてそれから棍棒を投げて粉々にしたり踏みつぶしたりぶん殴ってバラバラにしているアシュレイを見てこそっとシェルに声をかけた。


「あの子に強化魔術つけてる?」
「? つけてない。アランにだけ」
「だ、だよねー?」


一瞬アランはまさか素で?っと思うがアシュレイにはレイチェルという兄がいてその兄が魔術を使えることを思い出す。アランは勝手にアシュレイはレイチェルに強化魔術をつけてもらっていると解釈した。

そして地道にそんな作業をしていると扉があった方から黒い霧が立ち込めていた。
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