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最終章 断罪された神子様は、前世養父だった冷徹公子に溺愛される。
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頭を地面につけたまま微動だにしない二人に俺は困惑した。何がどうなっているのだろうか。
まさか、この姿を見て金の神子だと思っていない?なら何で謝るんだ?いや金の神子だと分かっていても謝られるようなことは……。
「この馬鹿が! うまく人を先導できず、貴方様を見殺しにする羽目になったと! 私達は、貴方様に命を救われた身です。それなのに、恩を仇で返すような行いをしてしまい大変申し訳ありませんでした!!」
「で、でも、そもそも隣の神官が邪魔しなければ……」
「黙りなさいフレイ! お前の愚かで稚拙な行動が尊きお方の命を奪ったのですよ!? 恥を知りなさい!!」
「……??」
俺は非常に混乱し、猊下に助けを求めた。猊下は何も言わずに黙っていたが、俺の視線に気付くと口を開いた。
「お前達には前世の記憶があるのか」
「はい。まさか、もう一度神子様と出会うことが出来るとは思いませんでした。金の神子という名にふさわしく、魔術を使うとキラキラと金色の光が神子様を包み込んでいましたので見間違いようがありません。神に愛された唯一のお方で、この地に舞い降りた天使様です!!」
「え!?」
あれ、今レオの口からとんでもないこと聞かされなかった?
「ちょ、ちょっと待って? 俺の周りに光って何の話……?」
「ああ、ご自身が光り輝いておられるので分からないのですね? 私達はそのおこぼれを……」
「魔術を使うと毎回俺光ってたの!?」
「はい。私にはそう見えます。フレイもそうですよね?」
「うん、俺もそう見え……ます」
「!!??」
普通に恥ずかしい!!そんなの今俺魔術使ってますよって丸見えだったって事!?意味ないじゃんそんなの!!
「見える者の方が少ないからルドが考えているような事は起きない」
「あ、そ、そうなんだ」
主役補正かと思ったが、猊下も見えているような口ぶりに俺はそれ以上考える事はやめた。見えない人の方が多いって言ってるんだからきっと見えるのはこの三人だけだ。だって皆聞いてきたことないし。
というか、話がそれてしまった。
「いや、前世の記憶を持っているのになんで俺を恩人?とか言って謝るの……? 俺は、ほら、あまり評判良くなかったし……」
「俗物どもが勝手に言っているだけです。貴方様の本質は慈悲深い天使様なのですから」
「えーっと、そっちの皇太子様もそうなの?」
なんだかレオがコイヨンに見えてきた。なら何を話しても全肯定なきがするのですぐさまフレイに話をかける。
するとフレイはぱっと顔を明るくしてこくこくと頷いた。
「うん。神子様は天使様。俺は、あのとき神子様を殺したことにして貴方を逃がそうとした。それなのに、隣のそいつが邪魔して貴方が死んでしまった」
「フレイ!」
え、そうなの?
考えて見れば確かにあのとき、何となく違和感があったがそんな事情があるとは知らなかった。
つまり、あれ?俺が勝手に勘違いをして、悪役になろうとして?そして勝手に死んだことによってこんなことになってる……?
考えれば考えるほどドツボにはまっていく。
「俺は事実を言ったまで。そいつが悪い! まあ、神子様が死んだ後に、神子様に不敬を働いたもの全てを粛正したのは褒めてやるけど!」
「え……?」
フレイがなんか凄いこと言わなかった?粛正?何それ?
俺は猊下を見た。猊下はそっと視線を逸らした。
その時不意に俺はリィンがこんなことを言っていた事を思い出した。
――まあ、例外はあるよ? 例えばその子が死ぬことで、その世界の人がほぼ死ぬとか。
いやいや、まさかそんなことありえない……よね?
今その真偽を確認する術はないので、とりあえず頭の隅に追いやった。
「つまり、俺を殺すつもりはない、てこと?」
「! はじめから貴方を殺そうだなんて思ったことありません! どうすればあの魔窟から貴方を救い出せるかずっと考えておりました!!」
「なる……ほど……」
成る程成る程、つまり、えーっと?
「ルド、これでお前の憂いは晴れたか?」
「い、いや、そうなると二人が付き合っているかどうか確認しないと……っ!」
「指を見ろ」
「指……?」
猊下にそう言われて二人の指に注目する。するとそこにはおそろいの指輪がつけてあった。
それで俺は全てを悟った。もう二人は付き合っているということに!!
つまり、俺の悩みは全くの無意味だったのだ!!
良い事なのか、悪いことなのか……。いや、殺されないから確実に良い事なんだろうけど……。
「ところで神子様、隣にいるそいつは貴方の何なんですか? もし脅されているようでしたら私の権力を使ってでもお守りします」
フレイがそう言って忌々しげに猊下を睨む。先ほどの話を聞くに、本気で猊下のせいで計画が失敗したと思っているようだ。そんなことないのに。
だから俺は慌てて猊下の腕を引っ張り頬に軽くキスをする。
「!」
「俺の好きな人で、俺が幸せにしたい人です!!」
BL小説の主人公に悪役がこんなことを宣言するのは恐らく俺だけであろう。
まさか、この姿を見て金の神子だと思っていない?なら何で謝るんだ?いや金の神子だと分かっていても謝られるようなことは……。
「この馬鹿が! うまく人を先導できず、貴方様を見殺しにする羽目になったと! 私達は、貴方様に命を救われた身です。それなのに、恩を仇で返すような行いをしてしまい大変申し訳ありませんでした!!」
「で、でも、そもそも隣の神官が邪魔しなければ……」
「黙りなさいフレイ! お前の愚かで稚拙な行動が尊きお方の命を奪ったのですよ!? 恥を知りなさい!!」
「……??」
俺は非常に混乱し、猊下に助けを求めた。猊下は何も言わずに黙っていたが、俺の視線に気付くと口を開いた。
「お前達には前世の記憶があるのか」
「はい。まさか、もう一度神子様と出会うことが出来るとは思いませんでした。金の神子という名にふさわしく、魔術を使うとキラキラと金色の光が神子様を包み込んでいましたので見間違いようがありません。神に愛された唯一のお方で、この地に舞い降りた天使様です!!」
「え!?」
あれ、今レオの口からとんでもないこと聞かされなかった?
「ちょ、ちょっと待って? 俺の周りに光って何の話……?」
「ああ、ご自身が光り輝いておられるので分からないのですね? 私達はそのおこぼれを……」
「魔術を使うと毎回俺光ってたの!?」
「はい。私にはそう見えます。フレイもそうですよね?」
「うん、俺もそう見え……ます」
「!!??」
普通に恥ずかしい!!そんなの今俺魔術使ってますよって丸見えだったって事!?意味ないじゃんそんなの!!
「見える者の方が少ないからルドが考えているような事は起きない」
「あ、そ、そうなんだ」
主役補正かと思ったが、猊下も見えているような口ぶりに俺はそれ以上考える事はやめた。見えない人の方が多いって言ってるんだからきっと見えるのはこの三人だけだ。だって皆聞いてきたことないし。
というか、話がそれてしまった。
「いや、前世の記憶を持っているのになんで俺を恩人?とか言って謝るの……? 俺は、ほら、あまり評判良くなかったし……」
「俗物どもが勝手に言っているだけです。貴方様の本質は慈悲深い天使様なのですから」
「えーっと、そっちの皇太子様もそうなの?」
なんだかレオがコイヨンに見えてきた。なら何を話しても全肯定なきがするのですぐさまフレイに話をかける。
するとフレイはぱっと顔を明るくしてこくこくと頷いた。
「うん。神子様は天使様。俺は、あのとき神子様を殺したことにして貴方を逃がそうとした。それなのに、隣のそいつが邪魔して貴方が死んでしまった」
「フレイ!」
え、そうなの?
考えて見れば確かにあのとき、何となく違和感があったがそんな事情があるとは知らなかった。
つまり、あれ?俺が勝手に勘違いをして、悪役になろうとして?そして勝手に死んだことによってこんなことになってる……?
考えれば考えるほどドツボにはまっていく。
「俺は事実を言ったまで。そいつが悪い! まあ、神子様が死んだ後に、神子様に不敬を働いたもの全てを粛正したのは褒めてやるけど!」
「え……?」
フレイがなんか凄いこと言わなかった?粛正?何それ?
俺は猊下を見た。猊下はそっと視線を逸らした。
その時不意に俺はリィンがこんなことを言っていた事を思い出した。
――まあ、例外はあるよ? 例えばその子が死ぬことで、その世界の人がほぼ死ぬとか。
いやいや、まさかそんなことありえない……よね?
今その真偽を確認する術はないので、とりあえず頭の隅に追いやった。
「つまり、俺を殺すつもりはない、てこと?」
「! はじめから貴方を殺そうだなんて思ったことありません! どうすればあの魔窟から貴方を救い出せるかずっと考えておりました!!」
「なる……ほど……」
成る程成る程、つまり、えーっと?
「ルド、これでお前の憂いは晴れたか?」
「い、いや、そうなると二人が付き合っているかどうか確認しないと……っ!」
「指を見ろ」
「指……?」
猊下にそう言われて二人の指に注目する。するとそこにはおそろいの指輪がつけてあった。
それで俺は全てを悟った。もう二人は付き合っているということに!!
つまり、俺の悩みは全くの無意味だったのだ!!
良い事なのか、悪いことなのか……。いや、殺されないから確実に良い事なんだろうけど……。
「ところで神子様、隣にいるそいつは貴方の何なんですか? もし脅されているようでしたら私の権力を使ってでもお守りします」
フレイがそう言って忌々しげに猊下を睨む。先ほどの話を聞くに、本気で猊下のせいで計画が失敗したと思っているようだ。そんなことないのに。
だから俺は慌てて猊下の腕を引っ張り頬に軽くキスをする。
「!」
「俺の好きな人で、俺が幸せにしたい人です!!」
BL小説の主人公に悪役がこんなことを宣言するのは恐らく俺だけであろう。
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