29 / 75
第二章 やめてー!!俺の屑を連れて行かないでぇ!!!
9
しおりを挟む
「気に入った?」
「うん! ありがとう!」
「良かった」
フラウはニコニコ笑顔だ。俺は彼から貰ったチョコを気に入ったので後の二つは猊下にあげようとポケットにしまう。するとフラウは不思議そうな表情を浮かべて首を傾げた。
「あれ、全部食べないの?」
「お兄ちゃん……、あ、カロシェーン様にあげるの。今一緒に住んでるから」
とっさに猊下の名前良く出たな俺。まだまだ覚えてるぞぉ、猊下の今世の名前!!ちょっと得意げ。
「カロシェーン……?」
「ああ、げ……んきな跡取りがいるラフィール公爵家の二番目の御方だな」
「あー、そんな名前だっけあの人」
なんだかジエンが変な言い方をしていたが、言葉に詰まっただけだろう多分。それよりも、何となくフラウが冷めた目をしたような?気のせいかな?
「ま、あの人、元々付き合い悪いしな。愛想良くしてるの見た事ねえし」
「そーだね。今でも冷徹公子、なんて呼ばれてるらしいよ」
「え?」
ジエンとフラウがそう話をしていた。俺は二人の会話を聞いてここ最近の猊下を思い出す。確かに少しばかり無表情は目立つが、愛想が悪いって程ではないし冷徹でもないだろう。前世の猊下よりはかなりとっつきやすい気がする。
「お兄ちゃんは、優しいし笑顔……は、まあ、そこまでじゃないけどいうほど無愛想じゃないよ?」
俺がそう言うと二人は揃って顔を見合わせて、困ったような表情を浮かべる。それから彼らはそうかとでも言うように頷いた。
「そりゃ良かったな」
「お兄ちゃんに愛されてるね」
「あ、ま、まあね……」
フラウの言葉に少しだけ引っかかりを覚えたがそれをどうにか飲み込んで俺はそう返す。
ああ、猊下が親切なのはこの髪と瞳を気に入ったからだと分かっている身としてはやっぱり素直にその言葉を受け取りにくい。相手はそんなこと考えているわけもないのに……。
少しばかりため息をつきたくなってこっそり息を吐く。そういえば、結構時間が経っている気がする。そろそろ帰ろうかな。ロズリーも帰ってきそうだし……。
「コイヨン、そろそろ帰ろう?」
「はい、アルカルド様」
「近くまで送るよ」
「俺も」
「要らないです。散れ」
「お前に言ってない」
「コイヨンがいるから大丈夫ここで! またね、フラウ、ジエン!」
また争いが始まったらたまったもんじゃない。俺はそう思って慌てて二人にそういって手を振りさっさとコイヨンの手を握って離脱。全く、コイヨンの交友関係は不思議だな。仲が良いのか、悪いのか。俺にもそういう悪友的なの欲しかったなぁ。立場的に難しすぎる……。リィンぐらいだ、俺の友達。実態無いけど。
「あ、そうだリィン!!」
すっかり忘れてた全知全能の友!こうやって外にいるんだから教会に行こう!猊下に行くなって言われたけど、俺にはのっぴきならない事情があるんだ!!
「? どうかなさいましたか?」
「最後に教会に寄りたいんだけど!」
「え? どうしてですか?」
「どうして? え、行きたいから……?」
コイヨンが至極不思議そうな表情と声でそう返されて俺はそこまで変なことを行っただろうかと驚いた。理由も単純なのでそのまま返したらコイヨンは気のない返事をした後に考え込む。それから深刻そうな表情を浮かべて静かに頭を下げた。
「……申し訳ありませんアルカルド様。実はここら辺の教会は異教徒の建てたものばかりで……」
「ちょ、ちょちょちょいちょい!?」
あれ?今異教徒って言わなかった?俺の気のせいとかじゃないよね?え?
思わずコイヨンの口を塞ぎ、誰も聞いてないか周りを確認した後に端によった。それからこっそりとコイヨンに耳打ちをする。
「コイヨン、何言ってんのさ! 異教徒も何も……」
「異教徒です。異教徒なんですよあいつらは。誰のお陰で今この地で平和に暮らせているのか、その恩恵に感謝もせずにのうのうと生きている家畜です」
「か、か、家畜ぅ!?」
な、なんだこの子どうしたこの子!?いきなり過激な子というじゃん!?え、なんで?何が彼をそうさせたの!?俺なんか変なこと言った!?
「ここら辺の教会は、聞いたことの無い神を崇めているのです。そんな頭のおかしい異教徒どもの巣に貴方様を連れて行くのは少し気が引けて……」
聞いたこの無い神って、ここ数百年は変わってないよね!?リィンは金の神子が死んだときにその信仰は廃れて新しい神様を立てたはず。それが今ではメジャーになっているはずだから誰もが知っている神様のはずなんだけど。
俺はそう考えながら頭を抱える。ちらりとコイヨンを見ると彼は揺るぎない強い意志で絶対に俺を教会に連れて行きたくないようだった。俺はそれを見て静かに頷く。
成る程。これが狂信者というものか。
俺の時代にいなくて良かったぜ。
こんなおかしな信者が一人でもいたらあの時代の俺は早々に死んでいただろう。我らが信じる神はただ一人!とかなんとか言っちゃって。あ、神様だから一人じゃなくて一柱か?まあ、そんなことどうでも良いか。
俺はそんなことを考えながら深くため息をつく。これは俺が折れるしかないと思ったからだ。何となく、この子はこれに関しては引かないだろうと悟ったからだ。
「分かった」
「私の我が儘を聞いてくださりありがとうございます、アルカルド様」
「いいよいいよ、早く帰らないといけないしね」
というか、コイヨンがいないときに行けばいい話だ。
俺はそう思ってコイヨンと共に屋敷に帰った。猊下も来てないし、ロズリーもいない。俺を部屋まで案内するとコイヨンが言っていたのでひとまず猊下の部屋に案内して貰った。物置に案内させたらロズリーの立場が危ういからな。
俺はそうしてコイヨンと分かれ、彼が周囲にいないことを確認して魔法で最初の物置に戻る。
今日はいろんな事あったけど、ひとまずロズリーが無事ならオッケーです。俺の屑は、そう簡単に手放さないぜ!!
「うん! ありがとう!」
「良かった」
フラウはニコニコ笑顔だ。俺は彼から貰ったチョコを気に入ったので後の二つは猊下にあげようとポケットにしまう。するとフラウは不思議そうな表情を浮かべて首を傾げた。
「あれ、全部食べないの?」
「お兄ちゃん……、あ、カロシェーン様にあげるの。今一緒に住んでるから」
とっさに猊下の名前良く出たな俺。まだまだ覚えてるぞぉ、猊下の今世の名前!!ちょっと得意げ。
「カロシェーン……?」
「ああ、げ……んきな跡取りがいるラフィール公爵家の二番目の御方だな」
「あー、そんな名前だっけあの人」
なんだかジエンが変な言い方をしていたが、言葉に詰まっただけだろう多分。それよりも、何となくフラウが冷めた目をしたような?気のせいかな?
「ま、あの人、元々付き合い悪いしな。愛想良くしてるの見た事ねえし」
「そーだね。今でも冷徹公子、なんて呼ばれてるらしいよ」
「え?」
ジエンとフラウがそう話をしていた。俺は二人の会話を聞いてここ最近の猊下を思い出す。確かに少しばかり無表情は目立つが、愛想が悪いって程ではないし冷徹でもないだろう。前世の猊下よりはかなりとっつきやすい気がする。
「お兄ちゃんは、優しいし笑顔……は、まあ、そこまでじゃないけどいうほど無愛想じゃないよ?」
俺がそう言うと二人は揃って顔を見合わせて、困ったような表情を浮かべる。それから彼らはそうかとでも言うように頷いた。
「そりゃ良かったな」
「お兄ちゃんに愛されてるね」
「あ、ま、まあね……」
フラウの言葉に少しだけ引っかかりを覚えたがそれをどうにか飲み込んで俺はそう返す。
ああ、猊下が親切なのはこの髪と瞳を気に入ったからだと分かっている身としてはやっぱり素直にその言葉を受け取りにくい。相手はそんなこと考えているわけもないのに……。
少しばかりため息をつきたくなってこっそり息を吐く。そういえば、結構時間が経っている気がする。そろそろ帰ろうかな。ロズリーも帰ってきそうだし……。
「コイヨン、そろそろ帰ろう?」
「はい、アルカルド様」
「近くまで送るよ」
「俺も」
「要らないです。散れ」
「お前に言ってない」
「コイヨンがいるから大丈夫ここで! またね、フラウ、ジエン!」
また争いが始まったらたまったもんじゃない。俺はそう思って慌てて二人にそういって手を振りさっさとコイヨンの手を握って離脱。全く、コイヨンの交友関係は不思議だな。仲が良いのか、悪いのか。俺にもそういう悪友的なの欲しかったなぁ。立場的に難しすぎる……。リィンぐらいだ、俺の友達。実態無いけど。
「あ、そうだリィン!!」
すっかり忘れてた全知全能の友!こうやって外にいるんだから教会に行こう!猊下に行くなって言われたけど、俺にはのっぴきならない事情があるんだ!!
「? どうかなさいましたか?」
「最後に教会に寄りたいんだけど!」
「え? どうしてですか?」
「どうして? え、行きたいから……?」
コイヨンが至極不思議そうな表情と声でそう返されて俺はそこまで変なことを行っただろうかと驚いた。理由も単純なのでそのまま返したらコイヨンは気のない返事をした後に考え込む。それから深刻そうな表情を浮かべて静かに頭を下げた。
「……申し訳ありませんアルカルド様。実はここら辺の教会は異教徒の建てたものばかりで……」
「ちょ、ちょちょちょいちょい!?」
あれ?今異教徒って言わなかった?俺の気のせいとかじゃないよね?え?
思わずコイヨンの口を塞ぎ、誰も聞いてないか周りを確認した後に端によった。それからこっそりとコイヨンに耳打ちをする。
「コイヨン、何言ってんのさ! 異教徒も何も……」
「異教徒です。異教徒なんですよあいつらは。誰のお陰で今この地で平和に暮らせているのか、その恩恵に感謝もせずにのうのうと生きている家畜です」
「か、か、家畜ぅ!?」
な、なんだこの子どうしたこの子!?いきなり過激な子というじゃん!?え、なんで?何が彼をそうさせたの!?俺なんか変なこと言った!?
「ここら辺の教会は、聞いたことの無い神を崇めているのです。そんな頭のおかしい異教徒どもの巣に貴方様を連れて行くのは少し気が引けて……」
聞いたこの無い神って、ここ数百年は変わってないよね!?リィンは金の神子が死んだときにその信仰は廃れて新しい神様を立てたはず。それが今ではメジャーになっているはずだから誰もが知っている神様のはずなんだけど。
俺はそう考えながら頭を抱える。ちらりとコイヨンを見ると彼は揺るぎない強い意志で絶対に俺を教会に連れて行きたくないようだった。俺はそれを見て静かに頷く。
成る程。これが狂信者というものか。
俺の時代にいなくて良かったぜ。
こんなおかしな信者が一人でもいたらあの時代の俺は早々に死んでいただろう。我らが信じる神はただ一人!とかなんとか言っちゃって。あ、神様だから一人じゃなくて一柱か?まあ、そんなことどうでも良いか。
俺はそんなことを考えながら深くため息をつく。これは俺が折れるしかないと思ったからだ。何となく、この子はこれに関しては引かないだろうと悟ったからだ。
「分かった」
「私の我が儘を聞いてくださりありがとうございます、アルカルド様」
「いいよいいよ、早く帰らないといけないしね」
というか、コイヨンがいないときに行けばいい話だ。
俺はそう思ってコイヨンと共に屋敷に帰った。猊下も来てないし、ロズリーもいない。俺を部屋まで案内するとコイヨンが言っていたのでひとまず猊下の部屋に案内して貰った。物置に案内させたらロズリーの立場が危ういからな。
俺はそうしてコイヨンと分かれ、彼が周囲にいないことを確認して魔法で最初の物置に戻る。
今日はいろんな事あったけど、ひとまずロズリーが無事ならオッケーです。俺の屑は、そう簡単に手放さないぜ!!
30
お気に入りに追加
1,466
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる