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第二章 やめてー!!俺の屑を連れて行かないでぇ!!!

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「これ、部屋に戻してくるからここから動かないでよね」
「うん」


 おお。さっきの会話で俺に持たせているのは危ないと思ったのかな?正直少し重いから助かる。俺はそのままロズリーを見送る。

 それにしても今日は色々あったな~。結局悪徳魔術師と接触できなかったけど、まだ彼ここら辺にいるみたいだしまた別の機会にしよう。

 猊下を待っている間そんなことを考えていると、不意に扉が開いた。俺はぱっと上を見上げて入ってきた人物を見るとすぐに駆け寄る。

 誰がそこにいたかだって?そんなの言わなくったって分かるだろう。


「お兄ちゃん! おかえりなさい!」
「!?」


 俺が玄関で待機していたとはつゆほどにも思っていなかったのだろう。手を広げて駆け寄ってくる俺に猊下は驚きの表情を浮かべた。しかし次にはしっかりと俺を抱き上げて、それからふわりと笑顔を見せる。

 優しい笑顔。前世の猊下では想像できない、そんな柔らかい笑みだった。

 前の誰も寄せ付けない無表情も好きだが、この慈愛に満ちた表情も好きだ。その表情を向けられただけで嬉しくなる。


「……ただいま、ルド」
「うん!」


 にこにこと上機嫌で俺はぎゅーっと強く猊下を抱きしめる。猊下のつけている香水なのか分からないがシトラスのような爽やかな良い匂いがして、流石猊下隙がないと俺はそんなことを考える。

 猊下普通に美人だし、地位もあるし、絶対学院でモテモテだろうなぁ。ちょっとどんな姿で勉学に励んでいるのか見てみたい。機会があったらこっそり侵入しようかな?もしかしたらファンクラブまで出来てたりして。前の時もそれっぽい集団はあったから多分、今回も出来てるだろうな。なんか、想像しただけで本当、猊下って雲の上の存在……。

 金色だからって拾われた俺はかなり運が良いなと思ったらなんだか胸がチクチクと痛い。幸運に感謝するべきなのに何でだろう。少し苦しい……。


「ルド、プレゼントは気に入ったか?」
「! あ、うん!」


 あ、そうだそうだ。猊下のプレゼントのお礼言わなきゃ。
 猊下がそう聞いてきたので反射的にそう答える。こっちの方が大事だ。ちゃんと猊下にお礼を言わないと!!


「お兄ちゃん。プレゼントありがと!」
「そうか、それは良かった。また、別のものをあの子に買わせるから楽しみにしてくれ」
「うん!」


 最高に良い賄賂だったよ猊下。猊下の良心を利用するのは心苦しいが、許して欲しい。俺がお金稼げるようになったら返すので……。

 俺はそのまま猊下に抱っこされて、いつもの猊下の部屋に一緒に向かった。そういえば、気にならなかったから聞かなかったけど、俺の部屋ってどうなってるんだ?


「ねーねーお兄ちゃん、俺の部屋ってあるの?」
「え……」
「え?」


 猊下の部屋に戻り、ソファに俺たちは座る。といっても俺は猊下の膝の上であるが、まあそれはいい。問題は、猊下が俺の質問に戸惑いを見せたと言うことだ。変なことを聞いただろうか。


「まだ部屋ないの? それとも貰えないの?」
「部屋は作る。ただ、その、整備がまだ……」


 猊下はそう言いながらすーっと横に目がそれる。そこで使用人達の反応を思い出してやはりほとんどの人間が良く思っていないことを思い出す。そうか。もしかしたら何かしら使用人達が理由をつけて俺の部屋を整備していないのかも。きっとそうだ。こんなに猊下が申し訳なさそうにしてるんだもの!


「そっか! 分かった! じゃあそれまでお兄ちゃんといる!!」
「ああ……。その、お前には、居心地が悪いと思うが……」
「そんなこと一度も思ったことないよ! お兄ちゃんと一緒で嬉しい!」
「そう、か。そうか、それは良かった」


 猊下は心底ほっとしたような表情を浮かべた。気にしないで。前の時に市民からも司祭からも嫌われていた俺からすればこんなもの痛くもかゆくもない。俺よりも、猊下が色々言われる方が辛いし心苦しい。まあ、ないとは思うけど……。あ、そうだ!


「俺よりも、お兄ちゃんは大丈夫? 寝てる時に俺お兄ちゃん蹴っちゃったりしてない?」


 この際だからさらりと今まで気になっていたことを聞いてみた。前も言ったが、俺は寝相が悪く、いつも朝目覚めると猊下の頭を抱えていたはずが猊下に後ろから抱きしめられている状態なのである。どうやったらそうなるんかね本当。俺も謎。寝相悪すぎて蹴ってたら申し訳ないと思いつつ今まで知らん顔していたのだが、今聞いても大丈夫な気がして言ってみた。今ならなんとなーく、さらっと流してくれそうだし……。

 そういう期待も込める。すると猊下は優しいのでこう返してくれた。


「大丈夫だ。だからずっとくっついて寝てたい」
「うんわかった!」


 いえーい、本人の口からそう言ってくれれば問題ないよね?猊下って割と好き嫌いはっきりしてるし、嘘じゃないでしょう!現に、大丈夫とだけ言ってあるが、蹴っていないとは言っていない。つまり、猊下は俺に蹴られても大丈夫だということである。

 これからは気にしないで寝ることにするね!!あのふかふかの布団を知ってしまったら、ソファで寝れないもの。贅沢になってしまったな俺。

 まあ一番は別々に寝ることだけど、恐らく俺の部屋ができあがるのは相当な時間がかかるだろうから期待しないで待ってるよ!
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