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第二章 やめてー!!俺の屑を連れて行かないでぇ!!!

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 備品整理を手伝いつつ、ロズリーの話を聞く。彼は困った顔をしていたが、君の率直な感想でといったら外面がいい男ですと包み隠さず言ってくれた。好都合なことに、彼の本性を知っているのはコイヨンだけらしい。まあ屋敷にいる使用人達や家族達の動向を見るに暫くばれることはないだろう。

 ちなみに、今ロズリーは何してるんだ……?

 そう思ってロズリーを観察。あれ、宝石店に行って、おわ、色々買い込んでんな~。心配になって少し会話を盗み聞きしたが、ロズリーがあのラフィール公爵家の使用人だと分かると貴重な宝石の数々を出しているようだ。パチモンもないし、価格も妥当だから問題ないな。あの様子だと時間かかりそうだ。よし!

 それじゃあ俺も行動をするか。


「じゃあ、俺はこれで」
「え……っ!!」


 腰を上げてコイヨンに別れを告げると彼が絶望の表情を浮かべる。ど、どうした。そこまで変なこと言ったか俺!?


「わ、私も、私もお手伝いします……っ!!」
「え、いや、邪魔だから要らない」


 備品の整理も終わりかけで、話をしている間にコイヨンが手早く終わらせた。そんな彼がお手伝いに来た俺に恐らくお礼として手伝いを申し出るのは自然だろう。うーん、良い子だ。俺はそう感心しながらも、しかし、普通に邪魔なのではっきり断る。大体にして、これからの行動は不審以外の何物でも無いのでついてこられても困る。


「あ、あ……。で、でも、でも……っ!!」
「あ、危ないことはしないし、戻ってくるから!!」


 はっきりと断ってしまったからか、コイヨンは死にそうな顔をしている。だから思わず俺がそう言うと、彼はえぐえぐと泣きながらがしっともう一度俺の手を握った。そして自分の額にそれを寄せて膝をつく。床痛いから膝立ちはやめなよ。あざ出来るよ!?


「本当ですか……? 必ず、戻ってきますか……?」
「勿論。だから手を……」
「……分かりました。必ず戻ってきてください!」
「うんうん」


 戦争にでも行きそうな雰囲気だけど、ただ町に行くだけだから。というか、この子、こんなちょっと手伝いしてあげただけで、こんなに感謝するなんて変わってる。それとも優しさに飢えてるのかな?なんかそんな気がしてきた。

 大変申し訳ないが、俺のためにも今後ロズリーの餌食になって貰いたいので激励を送るぐらいしか俺には出来ない。心を強く持ってくれ……。こんな利己的な奴でごめんね。

 せめて涙を拭ってあげ、それからコイヨンと別れる。



 町につく頃には子供の姿に戻り、髪の色だけ茶色に変えてみた。ここはセレスファン王国の王都。こんな場所にあの悪徳魔術師がいる。彼の居場所を探ると悪役らしく路地裏にいるようだ。まあ指名手配されてる魔術師だし妥当か。じゃあ俺もそっちに向かお~。

 暗くて狭い路地を歩いて行く。ゴミのにおい、腐敗臭が漂い酷い環境だ。幸いなことに孤児院が発達しているからか子供はいない。


 子供で思い出したが、前世では酷いものだった。孤児院に所属していた俺だったが、普通に飯抜き、服も汚れているし、部屋も汚い。劣悪な環境で貴族達がくる時だけ綺麗にさせ、その浮いているお金は運営している者の懐に入る悪循環。しかも、孤児院は将来どこぞの貴族に引き取られる可能性のありそうな見目麗しい子供や賢い子供など選別して引き取っていた。異常だ。前の俺も顔が良くなかったらそこらの路地で野垂れ死んでいただろう。


 そういう時代だったからこそ、本買いに行った時の道中の子供の多さにはビビった。だから、孤児院もどきを作りそこに放り込んで世話をした。あぁ、勿論姿を変えて。火災で火傷を負って見目が悪い子であろうとも、身体が不自由であろうとも平等に当てのない子供を兎に角そこに集めた。犯罪抑制という名目もある。お陰で子供のスリとかは劇的に減った。

 嬉しい誤算は、意欲的ないい子ばかりで一軍が成長すると二軍を世話してくれて、二軍が成長すると三軍を世話してくれてといったように良循環が行われ手がかからなかった。中には必死に勉強をして司祭になる子や聖騎士になる子もいた。

 リィンの信者を増やすため、神を信じれば体の不自由も治ると嘯き騙した結果でもある。勿論、俺が健康な普通の体や傷跡も全て治したが、ちょっと良心が痛んだ。神様を信じた結果だとキラキラした目を向けられたら誰だってそうなる。どうにかこうにか、猊下のお付きにして(猊下自身、身分は気にしないようでお願いすればあっさり引き受けてくれた)事なきを得た者が多いが、中には頑なに俺から離れようとしない子もいた。最後の時は理由をつけて無理矢理追い出したけど。

  そういえば、コイヨンはその中にいた、頑なに俺から離れなかった司祭の1人に似ているような……。いや、他人の空似だな。そんなぽんぽん俺の知り合いがいてたまるか。調べるまでもない。あと、数が多くて似たような子も多かったから覚えてないや。うん、気にすることないな!!

 自分の中で答えを見つけそういうことにしようと納得させる。それよりも俺が今やるべき事は悪徳魔術師と接触することだ。

 服装も俺が前に着ていたような服に変えて奥に奥に歩みを進める。ここら辺にいるはずなんだけど、一体どこに隠れて……。


 不意に、路地の角から手が伸びた。反射的に身を引いてそれから逃れようとするがそれよりも相手が俺の腕を掴む方が早かった。


「お前、こんなところで何してるんだ」
「……お兄さんこそ」


 そこには悪徳魔術師でも何でもない、年若い男がいる。多分、猊下と同じくらい。10代後半あたりの男の子。外套を被って顔はあまり見えないけど俺の腕を掴む手がとても綺麗なのでそれなりに身分が高い者だろう。その後ろには二人の男の人もいてこっちも外套を被っているので外見の判断がつかないが、恐らく護衛。一人はすらりとした体型でもう一人は大柄だ。

 腰に差している剣まではその外套で隠れることはなく、佇まいから相当な実力者である事は分かる。猊下にしごかれたのでそれ位だったら魔術を使わなくても分かるのだ。あと、何となくあの構え方、猊下に似てるような……。


「質問しているのは俺だチビ。答えられないなら連行する」


 げ。見回りの兵士か何かなの!?二人は護衛じゃなくて三人一組のチームか!面倒なことになったと思いながらどうにかその腕から逃れようと身をよじる。


「別に俺盗みとかしてないけど!! ここら辺に住んでるだけ!」
「嘘だな。ここら辺に子供は住み着いてない。良いから来い」


 地元民でした!!そりゃそうだよね!見回りの兵士だったらここら辺の事情なんて知ってるはずだもん!新兵だったら良かったのに!!
 俺は心の中でそう思いながら、このまま連行される訳にはいかないので強硬手段を取る。


「ごめんなさい!!」
「!」


 俺は瞬時に目眩ましをその子に向ける。人体に害がない程度の光だ。効果は長くないが、一瞬の隙を突くことは出来る。そのお陰で俺の腕を握る手が緩み、すかさず「魔術」を使って瞬間移動した。

 危ない危ない。ここで兵士なんかに連れて行かれたら保護者(猊下)が来る。変に誤解して俺が逃げだそうとしているなんて思われたら困る。俺はただ、原作通りに行動を起こしたいだけなんだ!!逃げる気はない!!大体にしてあんな猊下を置いていなくなるわけないじゃないか!!

 ちらりと上から彼らの様子を伺う。俺の腕を掴んだ男の人はすぐに俺を探すように指示を出した。俺は彼らと鉢合わせしないようにこそこそと別の場所で地面に降り立つ。

 子供だとやっぱり目立つか……。小説補正でなんとかならないかなって思ったけど無理か……。そもそも、悪徳魔術師が活動をしているのが俺の孤児院があったところだ。あそこらへんはここの場所から離れた郊外なので治安は悪い。だから普通に路地で暮らしているような子供がいなくなっても誰も咎めないし気づかない。恐らく悪徳魔術師もそれを承知の上で犯行に及んだと思うが、今はどうだ。

 子供誘拐事件は聞かないし、この路地にも子供は一人もいない。良いことなんだけど、ほら、小説の展開上これはちょっと困るというかなんというか……。

 うーんっと頭を悩ませ、ひとまず保留ということにした。正確な時期も小説に書かれていないし、別に今年中だったら間に合うのではなかろうか。そう結論づけて今日のところは引き上げることにした。

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